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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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87/88

暫定作戦

長い廊下を抜け、ペンキの色あせた建物を横切り、

僕たち二人は広い部屋へ足を踏み入れた。

ざわざわ…ざわざわ…

周囲は暗闇が隅々まで覆い尽くし

遠くの大きなスクリーンだけが、唯一の光を放っていた。

そして、どこもかしこも人でびっしりと埋まっていた

「すごい人だな。」レンが目を丸くして周りを見回し、手を眉の上に当てる

「今日は何かの祭りでもあるのか?こんなに集まってるなんて。」

「それとも……」

「まさか俺たちの歓迎パーティーとか?」

「お前な……」目を細めてレンの方をちらりと見る

「さっき目が覚めたばかりで、それしか思いつかないのか?」

「俺たちが学生の頃の遠足にでも来たつもりか?」

「そもそも俺たちは遅刻してるんだぞ。」

「誰かさんが寝坊しすぎたせいでな。」

「悪かったよ。」レンが目を細め、背中を少し丸める

「そんなに根に持つなよ。」

「どうせ友達同士だろ。」

「……」顔をそむける

(ಡ‿ಡ)

「あ」レンが急に近づいてくる

「もしかして……」

「お前の背中……」

「田中さんにだけは寝てもらいたいとか?」

「お前……」顔をしかめてレンの方へ向き直る

パンッ!

「全員、静粛に!」聞き覚えのある声が部屋中に響く

…そして周囲の音がすべて止まった

コツ…コツ…コツ…

大きなスクリーンの右側から、長身の影が現れる

一歩一歩、中央へ向かって進み

視線を巡らせて部屋全体を見渡す

「諸君。」黒鉄さんが背筋を伸ばして立つ

「多くの者がまだ戸惑っていることだろう……」

「何人かはすでに事態を把握しているはずだ……」

「そして何人かはすでに作戦案を練っていることだろう。」

「だからこそ……」

「本題に入る。」

…………

「今朝8時37分、内浦湾において」

「一体の怪獣が確認され、近くの住宅地へ向かって進行していた。」

「派遣された偵察艦艇は、接触後ほぼすべてが連絡を絶った。」

「そして同日午前10時7分……」

「この怪獣は直接、沼津市へ上陸した。」

「そこの防衛線を完全に壊滅させ、同時に……」

「街全体を自らの潜伏場所へと変えた。」

……………

パッ.

大きなスクリーンに一枚の写真が映し出される

奇妙な魚。頭頂部に出目を持ち

黒く光沢のある皮膚が陽光を反射し

前の二枚のひれで巨大な体を泥の上に引きずり、

後ろの体もかなりの長さを有していた。

「全員、スクリーンに注目せよ。」黒鉄さんが手をスクリーンへ向ける

「これが今回の怪獣について得られた最も鮮明な画像だ。」

「そして、その通り……」

「外見は我々の知るトビハゼに極めてよく似ている。」

ワハハハハ!

大きな笑い声が部屋中に響き

次々と顔に笑みが広がっていく

「今日は特別訓練でもあるのか?」

「誰も海に遊びに行く準備だなんて教えてくれなかったぞ?」

「隊長もずいぶん冗談が好きだな!!!」

魚の画像が少しずつ縮小され、

その背後に、次々と崩れ落ちていく建物が映し出される。

看板が泥に沈み、道路は完全に砕け散り

遠くには、湾の見慣れた山並みが浮かび上がる

そして今や、誰一人として音を発さなくなっていた

「得られた情報によると、」黒鉄さんが目を細めて周りを見回し、両手を後ろに組む

「ほとんどの無機物がこの魚に接触すると、」

「正確に言えば、この魚が分泌するある物質に触れると、」

「極めて短時間で泥状に変化する可能性がある。」

「しかし研究班の実験結果では……」

「有機物と純度の高いムツゴロウは影響を受けないようだ。」

サッ!

「隊長。」群衆の中から一本の腕が高く上がる

「もしそれが事実なら……」

「相手は基本的にただの怪獣じゃないですか。」

「俺たちが出撃するだけで十分処理できるのでは?」

「同意する。」黒鉄さんが軽く頷く

「確かに本質的には、この魚はそれほど危険な怪獣ではない。」

「我々のような部隊なら十分に対処できる。」

「だが、」

「もしそれがそれほど単純なら、」

「この会議自体が必要なかったはずだ。」

パッ.

大きなスクリーンの映像が切り替わり

短い録画が流れ始める。音はほとんど聞こえない。

だが、それも重要ではなかった。

なぜなら……

誰もがその録画から目を離せなくなり、瞬きすらできず

体がわずかに後ずさり、顔が青ざめていく

「あいつ……俺たちを……食ってるのか……?」

「あれは……本当に怪獣なのか……?」

「銃弾が全部無効化されてるのか……?」

「どうやって壁が崩れるのを知ってたんだ……」

「そんなことどうでもいい!」

「それより何より……」

「なぜあんなに落ち着き払ってるんだ!?」

パンッ!パンッ!

「落ち着け!」黒鉄さんがわずかに顔をしかめる。

部屋の音が再び止まる

「今回の怪獣は、これまで対処してきた怪獣とは明らかに異なる行動を取っている。」黒鉄さんが体を回して周りを見る

「沼津市へ派遣した偵察隊はすべて撃破された。」

「録画から明らかなように……」

「あいつは視界に入るものすべてを破壊するタイプではない。」

「むしろ獲物を狩る獣に近い。」

スッ…

「あの……」聞き覚えのある声が耳元をかすめ、別の腕が軽く上がる

「それなら……」

「餌を使っておびき寄せるのはどうでしょう?」

「罠に誘い込んで……陸地に引きずり出して……」

「あるいは……餌で毒を盛るとか?」

はぁ……

「その方法を考えなかったわけではない。」黒鉄さんが腕を組み、両目を閉じる

「現在も軍はまさにその方法で湾内に足止めを図っている。」

「だが、毒を盛る案は諦めた方がいい。」

「現状の人員では不可能だ。」

ざわざわ…ざわざわ…

人々の間で小さな囁きが広がる

「今日は隊長たちが新兵選びに来るんじゃなかったのか?」

「さっきまでは結構人がいたのに。」

「数分前まで後方支援部隊が食堂の点検に下りてたはずだが。」

パッ.

大きなスクリーンが再び映像を変える

今、全員の目の前に黒い煙を上げる高層ビルが現れ

街のあちこちで、無事な建物の間に瓦礫の山が広がり

土石が砕け散り、消火する者もいないまま、炎の柱が立ち上っている。

そして海側の防壁は、すでに高く引き上げられていた

「残念ながら、」黒鉄さんが口元を歪めて笑う

「他のすべての部隊は大都市の防衛に動員された。」

「つまり、この戦いは我々だけだ。」

(`・ω・´)ゞ

「だが、それが我々があの魚の生け贄になることを意味するわけではない。」黒鉄さんが目を見開いて周りを睨む

「現在の任務は、偵察と情報収集だ。」

「必要とあれば戦闘に参加するが、あくまで直接対峙は避ける。」

「そして最優先事項は、あれを当面の間、湾から出させないことだ。」

「全員、了解したか?」

「了解!」周囲の全員が背筋を伸ばす

「出発時間は10分後だ。」黒鉄さんが力強く腕を振る

「全員、武装を整えろ。」


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