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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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85/99

招かれざる客(二)

[内浦湾 – 沼津市海域 – 午前10:07]

…

ゴォォォォ……

白い直線が青い空を切り裂く

黒い水域の上を、飛行機が次々と旋回する

…

バラバラバラバラ……

周囲を取り囲むヘリコプターが、両側の機関銃を構え、

水面から突き出す背びれにレーザーが真っ直ぐに照射される

…

ガチャッ. ガチャッ.

街側の高い防壁の上では

巨大な砲が奇妙な背びれに向けられ

緑の服の兵士たちが壁の上に集まり、一瞬たりとも目を離さない

...

…

コツ……コツ……

防壁の後ろ、人影ひとつない長い道の上を

ただ一人の男が歩き続ける

その後ろには、手帳を手にした女性が続き

目の前には、緑の服の兵士が立ちはだかっている

…

「どういうつもりだ?」男の顔が徐々に歪む

…

「申し訳ありません!」緑の服の兵士が直立不動で言う

「ですが、現時点ではこれ以上お進みいただくことはできません!」

「たとえあなたが誰であってもです。」

…

クイッ.

「それはよくわかっている。」男が軽くネクタイを直す

「しかし、この街の市長として」

「家に来た客を出迎えないわけにはいかない!」

「理解してくれ。」

…

「誠に申し訳ございません!」緑の服の兵士は微動だにしない

「ですが、この瞬間においてはそれは不可能かと。」

「もうしばらくお待ちいただけますよう。」

…

ゴォォォォォッ!!

「……」全員の視線が空へ向けられる

…

ヒュゴォォォォォッ!!

突然、街の方から

ジェット機が次々と黒い水域へ向かって突っ込んでいく

その中心に、一機の大型機がゆっくりと街を離れていく

…

フッ…

「わかった。」男が軽くうつむき、唇に小さな笑みを浮かべる

「ご迷惑をおかけしてすまなかった。」

「この場合、しばらくここで待つとしよう。」

「それで問題ないだろう?」

...

「……」兵士はまったく動かない

...

...

ブォォォォ……ブォォォォ……

その時、黒い海面に浮かぶ巨大な背びれの上で

上空の巨大な機体が徐々に貨物室の扉を開く

中から現れたのは、巨大な爆弾

レーダーから声が響く

「命令を確認した。」

「投下準備、3……」

「2……」

「1。」

…

ヒュゥゥゥゥ……

…

ズドォォォォン!!

巨大な火柱が黒い海面の真ん中に上がる

白い煙が濃く背びれを覆い尽くす

…

「撃て!」

ズドン! ズドン! ズドン! ズドン!

次々と砲門が煙を上げ続ける

火薬の匂いが白い煙と混じり、防壁の周りに充満する

…

ダダダダダダッ!!

空と地上から、黄色い弾が同時に飛び交う

薬莢があちこちに絶え間なく落ちる

…

…

「撃ち方、やめ!」大きな声が空間に響く

…

弾の流れが一斉に止まり

海面の大きな炎もすでに消えている

残されたのは……

海域全体を覆い尽くす巨大な煙だけだった

…

カチャッ…

「……」銃口は依然として煙の方へ向けられたまま

...

...

ズズン……

周囲の地面が突然揺れ始める

落ちた薬莢が地面からはね上がる

…

ズズン……ズズン……

濃い煙の中から、巨大な黒い影がぼんやりと姿を現す

後ろから海水の飛沫が飛び散る

…

ドズンッ!!

影は徐々に大きくなり

突然、高い防壁のすぐ前まで迫っていた

…

…

「……」誰もが目を逸らすことができない

少しずつ、銃口が下がっていく

兵士たちの体が、今や硬直している

…

(・ω・≡・ω・)

濃い煙がほぼ晴れ

そこに現れたのは、びしょ濡れの巨大な体躯

二つの巨大な目が絶えず見回し

二つの巨大なひれが海岸線全体を覆い

口を軽く開け、両頬を絶えず膨らませている

…

ジジジ……

「直ちに状況を報告せよ!」小さなレーダーから声が響く

「全部隊、応答せよ。」

…

ジジジ……

「繰り返す。」

「全部隊、直ちに状況を報告せよ。」

…

ジジジ……

「誰か聞こえているか?」

「直ちに報告せよ!」

…

…

ピッ。

「報告します……」緑の服の兵士がレーダーを軽く引き寄せ、影から目を離さない

「目標は……水面から離れました……」

「全体の外観は……」

「ムツゴロウの姿をしています。」

…

ジジジ……

「……」レーダー側から何の音も返ってこない

………………………………………………………………………….

(・◇・≡・◇・)

微動だにせず、魚はその姿勢を保ったまま

視線を周囲へ巡らせ、両頬を膨らませ続ける

…

防壁の向こう側、巨大な魚の影の真下で

誰もが瞬きひとつしない

…

「なぜあそこに立ち尽くしているんだ?」男が軽く周囲を見回し、唇をわずかに吊り上げる

「何か気になることでもあるのか?」

「火力か、防壁か、それとも……」

…

ハッ。

「……」男の目が徐々に見開かれる

…

ガシッ!

「急いでここを離れなければ!」男が慌てて女性の手首を掴む

…

よろよろ…よろよろ…

「市長さん?」女性がよろめきながら後を追う

「一体……何が……」

「なぜ……私たちが……」

…

タタタッ…タタタッ…

「まだ気づかないのか?」男は足を止めずに進み続ける

「よく防壁を見ろ!」

...

「防壁……?」女性が目を丸くし、ゆっくりと首を回す

「一体……防壁に何が……」

…

ハッ!

「防壁が……」女性の目が見開かれる

「なぜ……あの部分だけ……」

「他より低くなっているの?」

…

…

ズブ……ズブ……

魚の正面で、防壁が次々と低くなっていく

すべてが、魚のいる方向へ沈み込んでいく

砲門は今や真下の地面を向いている

…

グラグラ…グラグラ…

緑の服の兵士たちが、あちこちに倒れ込む

かつて高かった部分へ向かって必死に走り

他の者は周囲の何かに必死にしがみつく

…

「何だ……これは……」兵士たちの顔が徐々に青ざめ、手で砲門を掴む

「いつの間に……地面全体が……」

「泥になっているんだ!?」

…

…

ズシャァン!!

魚の正面の巨大な防壁が真っ直ぐに倒れる

少しずつ、下の泥の中に沈んでいく

何人かの兵士が残った部分で踏ん張り

他の者は泥の中から必死に身を起こそうとする

…

バクッ…バクッ…

そしてすべてが、突然目の前から消える

巨大な頭と、大きく開いた口が

躊躇なくそのまま全身を前へ突っ込んでいく

後ろには、赤い点があちこちに残されるだけだった

…

ダダダダダダッ!!

「おのれ!」黄色い弾が魚の両側から次々と飛んでくる

「誰がそんなことを許した!」

「全火力を叩き込め!」

「逃がすな!」

…

パクパク…パクパク…

微動だにせず、魚は口を動かし続ける

周囲に火花はひとつも上がらず

傷ひとつつかず、何も現れない

ただ赤い血が、口の両端を伝っているだけだった

…

ゴォォォォォッ!!

飛行機が一斉に魚へ向かって突っ込む

「こいつが気に入るか見てみろ!」パイロットたちが同時にボタンを押す

「今日の特別メニューだ!」

「この化け物め!」

…

ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!

ミサイルが一斉に魚へ向かって飛ぶ

…

…

ビヨンッ…ビヨンッ…

魚に近づいた瞬間、白い煙の軌跡が突然曲がる

ミサイルが魚の周囲で方向を変え

一斉にバラバラの方向へ飛んでいく

...

ドォン! ドォン! ズドォン!!

魚の周囲で大きな炎が次々と爆発する

防壁の両側が少しずつ崩れ始め

高い煙の柱が魚の周りに上がる

…

ゴォォォ……

飛行機が魚の周りを旋回する

「何が起きているんだ?」パイロットが魚の方へ目を向ける

「なぜこんなことになった?」

…

「避けろ!」無線から大声が響く

…

ブォォォォッ!!

地面から、巨大な泥の塊が

乱れた方向へ空へ向かって飛び上がる

…

…

…

[現実に戻る]

ザーッ……

部屋の中、至る所に大きなスクリーンが並び

誰もが身体を硬直させ、瞬きすら忘れたようにスクリーンを見つめている

...

「向こうの状況はどうなっている?」トウジョウが軽くうつむく

...

ブツッ.

スクリーンが一斉に消える

「それが沼津市から送られてきた最後の映像です。」女性が軽く頭を下げる

「その後、進入した航空機はすべて、市の上空に入った瞬間に連絡が途絶えています。」

「現在は全員が指示を待っている状態です。」

...

「で、その魚の方は?」カンザキが軽く頬に手を当てる

「追加情報は何かある?」

…

「現時点で。」女性が背筋を伸ばす

「我々が把握しているのは」

「この生物の行動が極めて異常であること。」

「銃弾などの基本的な武器はほとんど効果がないこと。」

「そして持ち帰ったサンプルから」

「このムツゴロウは、ほとんどの無機物を……」

「泥に変えることができるようです。」

...

うーん……

「面倒なことになったな。」カンザキが軽く顎に手を当てる

「それなら通常攻撃はほぼ無意味だ。」

「今軍を動かせば、敵に命を差し出すようなものだ。」

「だが、このまま放置するわけにもいかない。」

…

「とりあえず……」カンザキが周りを見回す

「現在の位置はどこだ?」

…

「それについては……」女性が軽く眉を寄せる

「理由は不明ですが」

「現在も沼津市から離れていません。」

…

ギュッ!!!

トウジョウの両手が強く握られ、血管が浮き出る

顔が歪み、唇が絶えずうなる

「許せない!」

「絶対に許せない!」

「この手で必ず……」

…

ポン.

「落ち着いてくれ!」手が軽くトウジョウの肩に触れる

「カンザキ隊長の言う通りだ。」

「今のどんな行動も非常に危険だ。」

…

「リクオ……だが……」トウジョウの目が細くリクオを見る

…

「ともかく、奴の居場所はわかっている。」リクオが小さく微笑む

「ここには隊長が三人いるだけじゃない……」

「あの物資調達専門の奴のチームもいる。」

「必ず方法は見つかる……」

…

タッタッタッ!

「緊急事態です!」兵士が慌ててリクオの方へ駆け寄る

「総司令部からの優先命令です!」

…

「優先命令?」リクオが軽く首を傾げる

…

「第3部隊、第6部隊……」

「および後方支援の全メンバー、第8部隊以外の全メンバー……」

「直ちに東京へ向けて進軍せよとのことです!」

「魚人が……」

「総攻撃を開始しました!」


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