招かれざる客(二)
[内浦湾 – 沼津市海域 – 午前10:07]
…
ゴォォォォ……
白い直線が青い空を切り裂く
黒い水域の上を、飛行機が次々と旋回する
…
バラバラバラバラ……
周囲を取り囲むヘリコプターが、両側の機関銃を構え、
水面から突き出す背びれにレーザーが真っ直ぐに照射される
…
ガチャッ. ガチャッ.
街側の高い防壁の上では
巨大な砲が奇妙な背びれに向けられ
緑の服の兵士たちが壁の上に集まり、一瞬たりとも目を離さない
...
…
コツ……コツ……
防壁の後ろ、人影ひとつない長い道の上を
ただ一人の男が歩き続ける
その後ろには、手帳を手にした女性が続き
目の前には、緑の服の兵士が立ちはだかっている
…
「どういうつもりだ?」男の顔が徐々に歪む
…
「申し訳ありません!」緑の服の兵士が直立不動で言う
「ですが、現時点ではこれ以上お進みいただくことはできません!」
「たとえあなたが誰であってもです。」
…
クイッ.
「それはよくわかっている。」男が軽くネクタイを直す
「しかし、この街の市長として」
「家に来た客を出迎えないわけにはいかない!」
「理解してくれ。」
…
「誠に申し訳ございません!」緑の服の兵士は微動だにしない
「ですが、この瞬間においてはそれは不可能かと。」
「もうしばらくお待ちいただけますよう。」
…
ゴォォォォォッ!!
「……」全員の視線が空へ向けられる
…
ヒュゴォォォォォッ!!
突然、街の方から
ジェット機が次々と黒い水域へ向かって突っ込んでいく
その中心に、一機の大型機がゆっくりと街を離れていく
…
フッ…
「わかった。」男が軽くうつむき、唇に小さな笑みを浮かべる
「ご迷惑をおかけしてすまなかった。」
「この場合、しばらくここで待つとしよう。」
「それで問題ないだろう?」
...
「……」兵士はまったく動かない
...
...
ブォォォォ……ブォォォォ……
その時、黒い海面に浮かぶ巨大な背びれの上で
上空の巨大な機体が徐々に貨物室の扉を開く
中から現れたのは、巨大な爆弾
レーダーから声が響く
「命令を確認した。」
「投下準備、3……」
「2……」
「1。」
…
ヒュゥゥゥゥ……
…
ズドォォォォン!!
巨大な火柱が黒い海面の真ん中に上がる
白い煙が濃く背びれを覆い尽くす
…
「撃て!」
ズドン! ズドン! ズドン! ズドン!
次々と砲門が煙を上げ続ける
火薬の匂いが白い煙と混じり、防壁の周りに充満する
…
ダダダダダダッ!!
空と地上から、黄色い弾が同時に飛び交う
薬莢があちこちに絶え間なく落ちる
…
…
「撃ち方、やめ!」大きな声が空間に響く
…
弾の流れが一斉に止まり
海面の大きな炎もすでに消えている
残されたのは……
海域全体を覆い尽くす巨大な煙だけだった
…
カチャッ…
「……」銃口は依然として煙の方へ向けられたまま
...
...
ズズン……
周囲の地面が突然揺れ始める
落ちた薬莢が地面からはね上がる
…
ズズン……ズズン……
濃い煙の中から、巨大な黒い影がぼんやりと姿を現す
後ろから海水の飛沫が飛び散る
…
ドズンッ!!
影は徐々に大きくなり
突然、高い防壁のすぐ前まで迫っていた
…
…
「……」誰もが目を逸らすことができない
少しずつ、銃口が下がっていく
兵士たちの体が、今や硬直している
…
(・ω・≡・ω・)
濃い煙がほぼ晴れ
そこに現れたのは、びしょ濡れの巨大な体躯
二つの巨大な目が絶えず見回し
二つの巨大なひれが海岸線全体を覆い
口を軽く開け、両頬を絶えず膨らませている
…
ジジジ……
「直ちに状況を報告せよ!」小さなレーダーから声が響く
「全部隊、応答せよ。」
…
ジジジ……
「繰り返す。」
「全部隊、直ちに状況を報告せよ。」
…
ジジジ……
「誰か聞こえているか?」
「直ちに報告せよ!」
…
…
ピッ。
「報告します……」緑の服の兵士がレーダーを軽く引き寄せ、影から目を離さない
「目標は……水面から離れました……」
「全体の外観は……」
「ムツゴロウの姿をしています。」
…
ジジジ……
「……」レーダー側から何の音も返ってこない
………………………………………………………………………….
(・◇・≡・◇・)
微動だにせず、魚はその姿勢を保ったまま
視線を周囲へ巡らせ、両頬を膨らませ続ける
…
防壁の向こう側、巨大な魚の影の真下で
誰もが瞬きひとつしない
…
「なぜあそこに立ち尽くしているんだ?」男が軽く周囲を見回し、唇をわずかに吊り上げる
「何か気になることでもあるのか?」
「火力か、防壁か、それとも……」
…
ハッ。
「……」男の目が徐々に見開かれる
…
ガシッ!
「急いでここを離れなければ!」男が慌てて女性の手首を掴む
…
よろよろ…よろよろ…
「市長さん?」女性がよろめきながら後を追う
「一体……何が……」
「なぜ……私たちが……」
…
タタタッ…タタタッ…
「まだ気づかないのか?」男は足を止めずに進み続ける
「よく防壁を見ろ!」
...
「防壁……?」女性が目を丸くし、ゆっくりと首を回す
「一体……防壁に何が……」
…
ハッ!
「防壁が……」女性の目が見開かれる
「なぜ……あの部分だけ……」
「他より低くなっているの?」
…
…
ズブ……ズブ……
魚の正面で、防壁が次々と低くなっていく
すべてが、魚のいる方向へ沈み込んでいく
砲門は今や真下の地面を向いている
…
グラグラ…グラグラ…
緑の服の兵士たちが、あちこちに倒れ込む
かつて高かった部分へ向かって必死に走り
他の者は周囲の何かに必死にしがみつく
…
「何だ……これは……」兵士たちの顔が徐々に青ざめ、手で砲門を掴む
「いつの間に……地面全体が……」
「泥になっているんだ!?」
…
…
ズシャァン!!
魚の正面の巨大な防壁が真っ直ぐに倒れる
少しずつ、下の泥の中に沈んでいく
何人かの兵士が残った部分で踏ん張り
他の者は泥の中から必死に身を起こそうとする
…
バクッ…バクッ…
そしてすべてが、突然目の前から消える
巨大な頭と、大きく開いた口が
躊躇なくそのまま全身を前へ突っ込んでいく
後ろには、赤い点があちこちに残されるだけだった
…
ダダダダダダッ!!
「おのれ!」黄色い弾が魚の両側から次々と飛んでくる
「誰がそんなことを許した!」
「全火力を叩き込め!」
「逃がすな!」
…
パクパク…パクパク…
微動だにせず、魚は口を動かし続ける
周囲に火花はひとつも上がらず
傷ひとつつかず、何も現れない
ただ赤い血が、口の両端を伝っているだけだった
…
ゴォォォォォッ!!
飛行機が一斉に魚へ向かって突っ込む
「こいつが気に入るか見てみろ!」パイロットたちが同時にボタンを押す
「今日の特別メニューだ!」
「この化け物め!」
…
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
ミサイルが一斉に魚へ向かって飛ぶ
…
…
ビヨンッ…ビヨンッ…
魚に近づいた瞬間、白い煙の軌跡が突然曲がる
ミサイルが魚の周囲で方向を変え
一斉にバラバラの方向へ飛んでいく
...
ドォン! ドォン! ズドォン!!
魚の周囲で大きな炎が次々と爆発する
防壁の両側が少しずつ崩れ始め
高い煙の柱が魚の周りに上がる
…
ゴォォォ……
飛行機が魚の周りを旋回する
「何が起きているんだ?」パイロットが魚の方へ目を向ける
「なぜこんなことになった?」
…
「避けろ!」無線から大声が響く
…
ブォォォォッ!!
地面から、巨大な泥の塊が
乱れた方向へ空へ向かって飛び上がる
…
…
…
[現実に戻る]
ザーッ……
部屋の中、至る所に大きなスクリーンが並び
誰もが身体を硬直させ、瞬きすら忘れたようにスクリーンを見つめている
...
「向こうの状況はどうなっている?」トウジョウが軽くうつむく
...
ブツッ.
スクリーンが一斉に消える
「それが沼津市から送られてきた最後の映像です。」女性が軽く頭を下げる
「その後、進入した航空機はすべて、市の上空に入った瞬間に連絡が途絶えています。」
「現在は全員が指示を待っている状態です。」
...
「で、その魚の方は?」カンザキが軽く頬に手を当てる
「追加情報は何かある?」
…
「現時点で。」女性が背筋を伸ばす
「我々が把握しているのは」
「この生物の行動が極めて異常であること。」
「銃弾などの基本的な武器はほとんど効果がないこと。」
「そして持ち帰ったサンプルから」
「このムツゴロウは、ほとんどの無機物を……」
「泥に変えることができるようです。」
...
うーん……
「面倒なことになったな。」カンザキが軽く顎に手を当てる
「それなら通常攻撃はほぼ無意味だ。」
「今軍を動かせば、敵に命を差し出すようなものだ。」
「だが、このまま放置するわけにもいかない。」
…
「とりあえず……」カンザキが周りを見回す
「現在の位置はどこだ?」
…
「それについては……」女性が軽く眉を寄せる
「理由は不明ですが」
「現在も沼津市から離れていません。」
…
ギュッ!!!
トウジョウの両手が強く握られ、血管が浮き出る
顔が歪み、唇が絶えずうなる
「許せない!」
「絶対に許せない!」
「この手で必ず……」
…
ポン.
「落ち着いてくれ!」手が軽くトウジョウの肩に触れる
「カンザキ隊長の言う通りだ。」
「今のどんな行動も非常に危険だ。」
…
「リクオ……だが……」トウジョウの目が細くリクオを見る
…
「ともかく、奴の居場所はわかっている。」リクオが小さく微笑む
「ここには隊長が三人いるだけじゃない……」
「あの物資調達専門の奴のチームもいる。」
「必ず方法は見つかる……」
…
タッタッタッ!
「緊急事態です!」兵士が慌ててリクオの方へ駆け寄る
「総司令部からの優先命令です!」
…
「優先命令?」リクオが軽く首を傾げる
…
「第3部隊、第6部隊……」
「および後方支援の全メンバー、第8部隊以外の全メンバー……」
「直ちに東京へ向けて進軍せよとのことです!」
「魚人が……」
「総攻撃を開始しました!」




