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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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84/100

招かれざる客(一)

[時間を巻き戻す]

[内浦湾 – 午前8:37]

…

ピッ.

「こちらカモメ・ワン。」

「目標は沼津市へ直進中と報告。」

「推定サイズは不明。」

「視界は完全に制限されている。」

「緊急避難誘導を要請する。」

…

ピッ.

「要請を受信した。」

「全市に緊急避難命令を発動する。」

「防壁を直ちに起動する。」

「同時に全偵察部隊に即時撤退を命じる。」

…

ザザーッ…

「……」無線からは何の返答も返ってこない

…

ピッ.

「各部隊。」

「直ちに状況を報告せよ。」

…

…

ピッ.

「こちらカモメ・フォー。」

「報告する……」

「エンジンが……全停止しました……」

「船体……現在徐々に沈み始めている……」

「他の部隊は……」

…

ピッ.

「了解した。」

「正確な座標を教えろ。」

「救助ヘリをできるだけ早く向かわせる。」

…

はぁ……はぁ……

「もう……間に合わない……」

「あいつは……もうここにいる……」

…

「皆さんに……」

「幸運を。」

ガガガッ…ガガガッ…

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

ウーウーウーウー

街中にスピーカーの音が鳴り止まない

赤い光があちこちで鮮やかに輝く

海岸線では、高さ20メートルの巨大な防壁が徐々に姿を現し

陸地と海面を隔てていく

…

ダダダダッ…ダダダダッ…

家々は今や人影を失い

多くのテーブルには、まだ半分残った食器が置かれたままだ

長い人の列が、大きな門の方へ次々と駆け込んでいく

その両側では、緑の服を着た兵士たちが立って守っている

…

「皆さん、注意してください!」緑の服の兵士が車の屋根の上で腕を高く掲げる

「押し合わないで、押しのけないで!」

「できるだけ冷静を保ってください!」

「全員分の場所は十分にあります!」

...

...

同時刻、遠くの建物の一角で

小さな部屋の中、書類の山が積まれた場所

一人の男が小さな窓から外を眺めている

大きな門へと続く人の列を見つめて

…

コツ…コツ…

「市長様!」一人の女性が突然男に近づく

「現在の避難進捗は50%を超えています。」

「このまま15分以内に避難が完了する見込みです。」

「全市の地下水道は全て封鎖済みです。」

「また、指揮所を除く市内の電力は全て遮断されています。」

…

「市長様、すべて準備は整いました。」女性が軽く頭を下げる

「もう安全な場所へ移るべきかと。」

「残りは軍が引き受けます。」

…

「それでは礼を欠くだろう。」男が両手を後ろに組む

「お客様が来ているのに、誰も出迎えないなど……」

「あまりに失礼すぎる。」

…

「我が街へ来た貴賓を、できる限り熱烈に歓迎しなければ。」男が女性の方へ顔を向け、満面の笑みを浮かべる

「それが礼儀というものだ!」

…

「承知いたしました!」女性の目が軽く細められ、背中は低くかがめられたままだ

…

…

ザバァッ!!

沖合で、海水が急に黒く濁っていく

巨大な背びれが、まるで海面を切り裂くように現れる

白い泡がその周囲を覆い尽くす

…

「撃て!」

ドォン!ドォン!ドォン!

周囲の大型艦が一斉に背びれへ向けて主砲を放つ

陸地からも、白い煙に覆われた場所から炎が海面へ向かって放たれる

火薬の臭いが辺り一面に立ち込める

水面からは、白い水柱が次々と背びれの周りに上がっていく

…

…

ザブン!!

突然、背びれが海面の下へ身を沈める

白い泡の痕跡がわずかに残るだけとなり

水面は今や静まり返る

…

ピッ!ピッ!ピッ!

艦上では、誰もが水面から目を離さない

何人もの兵士が銃口を四方へ向け続け

他の数名はレーダー画面から視線を外さない

…

ピピーッ!!…ピピーッ!!…

「報告します!」一人が席から立ち上がり、レーダーから目を離さない

「目標はまだ撃墜されていません!」

「現在も沼津市へ進行中です。」

...

「具体的な位置は特定できるか?」勲章をつけた男がレーダーの方を振り返る

…

ビシッ!

「現状ではそれは困難かと。」男が画面から立ち上がり、額に手を当てる

「この生物の現在位置はレーダー上で十分に予測可能ですが」

「相手が現在水中に潜伏しているため」

「視界は大きく制限されています。」

「この状態での射撃は極めて困難です。」

…

「艦長。」別の白服の兵士が男を振り返る

「我々は今、どうすべきでしょうか?」

「追撃を続けるべきでしょうか?」

...

ストン!

「とりあえず全船舶に撤退を命じろ!」男が椅子に体を沈める

「最寄りの港へ部隊を集結させろ。」

「同時に海水のサンプルを採取し、技術研究班へ送れ。」

…

「しかし、閣下……」一人の兵士が席から立ち上がる

「現在これだけの艦艇戦力があります。」

「地上部隊と連携すれば、十分に……」

…

ドン!!

「無謀だ!」男が拳を椅子に強く叩きつける

「追撃して、その後どうするつもりだ?」

「現状の武装と人員で、我々に何ができるというのだ?」

「イージスもない、フォロックスを扱える者もいない。」

「情報はさらに曖昧だ。」

「敵の黒い水域に踏み込むだけでもすでに不利だ。」

…

「……」部屋中の視線が男に集中する

…

スッ…

「まずは戦力の確保が最優先だ!」男が軽く椅子に体を預ける

「できるからといって、無謀な賭けをしてはならない。」

…

「了解!」声が部屋中に響き渡る

…

…

ヒューーーッ!

青空の上で、白い航跡が雲の間を切り裂くように伸びる

小さな黒い点が黒い水域の上を何度も旋回する

そして光学観測ポッドが、海面から目を離さない

…

ザッ……

「こちらカナリア。」飛行機の上の小さな人影が黒い水域から目を離さない

「敵はまだ完全には姿を現していない。」

「取得した映像は全て転送中だ。」

「以上。」

…

ザザッ……

「映像受信を確認。」レーダー側から声が返ってくる

「現在、最寄りの第八チームへ転送中。」

「各部隊は目標の追跡を継続せよ。」

「同時に安全高度を維持せよ。」

…

ザッ……

「了解。」


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