訓練
ドッ…ドッ…ドッ…
眩しい黄金の陽光の下、木々の葉が道を覆い尽くす奥で
一列の緑の服を着た人々が、アスファルトの道を等しく踏みしめる
全身に大きな丸い石の塊をびっしりと身につけ
首や手足にはいくつもの大きな輪がきつく巻きつけられている
…
ハァ…ハァ…
後ろの方で遅れているのは、短い赤い髪の少女
彼女の体にかかる石の重さは、他の者たちよりも遥かに重い
腕にもいくつもの輪が巻きついている
…
ドッ…ドッ…
「それだけか?」緑の服の男が少女の横をゆっくり歩きながら言う
「石が少し乗っただけでこんなに苦しがって……」
「戦場に出たら誰を守れるっていうんだ?」
「家で大人しく座って助けを待ってる方がまだマシだぞ。」
...
ヨロ…ヨロ…
「違う……違うんです……」ツメコは体を必死に前へ押し出し、目を細める
「私……まだ続けられます……」
「あの人たちを……あの人を……前回みたいにはさせられない……」
…
「だったら目を開けろ!」男が顔をしかめる
「足をもっと速く動かせ!」
「走れ! 走れ! 走れ!」
…
タッ…タッ…
「はい!」ツメコは目を見開き、前へ向かって必死に駆け出す
……………………………………………………………………….
クルクル…クルクル…
同時刻、近くの部屋の中で
各々の目の前に人体模型が置かれ
白い布が次々と巻きつけられ
ガーゼや糸の束がテーブルの上に散らばっている
壁のボードには人体のイラストが貼られている
…
ペラッ…
「ちょっとあんた!」一人の女性が模型から包帯を剥がす
「こんな巻き方じゃどうするのよ?」
…
スッ…
「でも指示通りにやったはずです!」イシカワがボードの方へ手を伸ばす
「手順通りなら、それでいいんじゃないですか?」
…
「手順の話をしてるんじゃないわ!」女性が目を細めてイシカワを見る
「この包帯の締め具合の話よ!」
…
「……」イシカワは固まって立ち尽くし、女性から目を離さない
…
「戦場では時間が命なの。」女性が軽く頭を下げる
「ほんの数秒遅れるだけで、一人の命が消えるわ。」
「でも中途半端にやるのはもっと危険よ。」
…
ビシッ!
「言ってみなさいよ!」女性が包帯の束をイシカワに向ける
「もし誰かが負傷した部位をちゃんと応急処置できなかったら……」
「出血が止まらず、感染したり、周囲の毒にやられたりして……」
「同じ部隊の人間がこの応急処置を見たら、その人を放置するわ……」
「その時あんたはどうするの?」
…
「……」イシカワの視線がゆっくりと下がり、両手が縮こまる
...
ポイッ!
「やり直し!」女性が包帯の束をイシカワに投げる
「今度は手を抜かないで!」
「痛がらせるくらいでいい、明日を迎えられないよりマシなんだから!」
…
「はい!」イシカワが小さく頷く
………………………………………………………………….
カタカタカタ…カタカタカタ…
建物の上の階、閉ざされたドアの向こう
周囲は暗闇に包まれ
残るのはパソコンのモニターの光だけ
指だけが休むことなく動き続ける
…
コツ…コツ…
「よく聞け!」眼鏡をかけた男が部屋の中を歩き回る
「戦場で力と武器だけがすべてじゃない。」
「どれだけ多くを知っているか。それが優位に立つ鍵だ。」
「情報が不足した状態で戦うなんて……」
「霧の中へ突っ込んでいくようなものだ。」
…
クイッ
「だからこそ……」男が軽く眼鏡を押し上げる
「我々の任務はあの霧を晴らすことだ!」
「できるだけ速く!」
「できるだけ多く!」
「他人より遠くを見据えろ!」
「だからこそ……」
…
コンッ
「あんた。」男が突然、黒髪の少女のモニターを指で叩く
「なんでここをこんなに回りくどく処理してるんだ?」
「遅れの代償が何かわかってるのか?」
…
「……」アサギリの指がぴたりと止まる
…
コツコツ…
「わかってるなら……」男は他の机の方へ背を向ける
「もっと時間のかからない方法を探せ!」
………………………………………………………………………………..
カチャカチャ…カチャカチャ…
下の階、外の敷地
広い中庭に機械部品が散乱し
奇妙な匂いが漂い、小さな瓶があちこちに転がっている
二人のグループが輪になって座り
手が休まず動いている
...
サク…サク…
「さあ、かわいい子たち。」肩のずれ落ちた服の女性が辺りを歩き回る
「頑張りなさい!」
「資源は決して無限じゃないわ。」
「周りにあるものを最大限に活用できる者だけが。」
「戦場で生き残れるのよ。」
…
ギュッ
「ここにあるもので何ができるかしら?」女性がアヤノの首に腕を回し、周りを見回す
…
「先生……いきなり……」アヤノが軽く肩を震わせ、目を丸くする
…
「いいから!」女性が指先をアヤノの唇に軽く当てる
「焦らなくていいわ!」
「頭を冷やしなさい!」
…
「僕たちはこの資材を活用しようと考えてるんです」シラカワが女性の方へ手を伸ばす
「まだ予定より足りないものは多いですが。」
「小型爆弾なら、いくつか作れると思います。」
...
フフッ...
「ねえ、わかる?」女性が小さく微笑み、指を唇に近づける
「どんな女も、つまらない男の近くにいたいなんて思わないわよね?」
「一つの答え……」
「戦場でのすべての質問に通用するわけじゃないのよ。」
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ドスッ!
全てから離れた別の中庭
矢が突き刺さった的が並ぶ場所
その向かい側に、たった一人だけが立っている
…
パチッ!
「よくやった!」カワサキが軽く手を叩く
「今は自分の力を制御できるようになれば、それで十分よ。」
「正式な実戦に出る資格は十分ある。」
…
はぁ…
「結局、私はあとどれだけこれを続けなきゃいけないんですか?」シノミが軽くうつむく
「毎日毎日、こんな訓練ばかり。」
「いざ実戦になれば役に立たなくて。」
「ただ他の人が前に進むのを眺めているだけ。」
...
ギュッ…
「もう……前回みたいなのは嫌……」シノミが弓を強く握りしめる
「あの人は人形の間で一人ぼっちで……」
「私は……ただそこに立っているだけで……」
「何もできなくて……手を伸ばすこともできなくて……」
…
コツ…コツ…
「ハガネハラさんから報告は聞いたわ!」カワサキがシノミに近づく
「あの日のことは完全に君たちのせいじゃない。」
「機関の防衛体制が十分に整っていなかったせいよ。」
...
「でも……それが何になるっていうんですか……」シノミが目を細めてカワサキを見る
「あの日……私たちがただ立っているだけで……」
「あの人を一人にさせて……無意味に動き回らせるだけで……」
「結局……」
…
…
「トガミさんは目覚めたわ。」カワサキが背筋を伸ばして立つ
…
コトッ
「う、嘘……」シノミの顔が強張り、手から弓が落ちる
…
ブツブツ…
「早めにハヤマが教えてくれていればよかったのに。」カワサキが軽く顔をしかめる
「君たちをここに来させないように止められたのに。」
…
…
コツ…コツ…
「でも、今は後悔してる場合じゃないわ!」カワサキがドアの方へ振り返る
「あの人たちもトガミさんの能力に気づき始めている。」
「これからもっと多くの者が集まってくる。」
「だから代わりに……」
…
ガラッ…
「最悪の事態に備える準備を……」カワサキがドアを軽く引く
「今、私たちにできることよ。」
…
ハッ
「……」シノミの目が見開き、唇が小さく開く
…
コンッ
ドアの向こうに、黄みがかった苔色の髪の少女が立っている
青い軍服を着て、海の波を模した紋様の槍を持ち
もう片方の手を胸に当て、唇に満面の笑みを浮かべている
「久しぶりですね、お嬢様。」




