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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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79/88

凪の海

[内浦湾のどこかで]

……

ザーン……ザーン……

四方八方、空と海がただ一色の紺碧

波が静かにうねり、どこまでも広がっていく

山並みは今やぼんやりとしか見えない

……

ヒュウゥ……

風にたなびく何枚もの布

その真ん中にぽつんと浮かぶ小さな舟

網と共に、青い水の中に浸かっている

……

……

ぐいっ……ぐいっ……

少しずつ、少しずつ、網が水面から離れていく

後ろから、何本もの手が必死に力を込める

「強く引け!」

「逃がすな!」

……

ザバァッ!

白い飛沫が周囲へ弾け飛ぶ

水面が不自然に沈み込む

大きな塊が、白い網の後ろについて上がってくる

……

……

ひょい……

一人また一人、大きな網の周りに集まる

手が一つずつ、絡まった網を解いていく

顔を近づけ、腕をゆっくりと動かす

……

はぁ……

しかしその声は空間全体に響き渡る

「またかよ?」

「今日もプラスチックばっかりだ。」

「やっと海に出て魚を獲れると思ったのに……こんな……」

...

ガサ...ガサ…

「やっとの機会だというのに。」髭の大きな男が網の中に手を伸ばし続ける

「いつになったらあの人間魚どもが戻ってくるんだ。」

「今できるうちに頑張れ!」

...

ガサッ…

「それにしても不思議だよな?」別の男が顔を上げて周りを見回す

「急にあの魚人間どもがこの辺の港からいなくなっちまった。」

「ここまで沖に出てきても一向に見当たらない。」

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

周囲で視線があちこちに向けられる

「もしかして奴ら、降伏したんじゃねえか?」

「馬鹿かお前? そんなわけあるか!」

「ただ俺たちをからかってるだけかもよ!」

「奴らのことなんかどうでもいい。」髭の大きな男が目を細める

「今はとにかく魚を探すことに集中しろ。」

するっ……

「……」髭の男が網の中から小さな魚を摘み上げる

……

……

ぽちゃん

ぐいっ……

「大将!」一人の若者が甲板の方へ飛び出す

「なんで急に逃がすんですか!?」

...

「バカか、お前?」髭の大きな男が網の方へ振り返る

「こんな小さい奴なんか美味しくもねえだろ!?」

「そのままにしとけ、次に獲ればいい。」

「でも大将……」若者が手を伸ばし、背中を丸める

「小さくても立派な魚ですよ。」

「少しでも獲れた方が、ゼロよりマシです。」

「お前はまだ学ぶことがたくさんあるな、ガキ。」髭の男が目を細め、若者の方を向く

「いいか!」

「魚を獲るなら、少なくとも……」

バシャァァン!!

大きな音が辺り一面に響き渡る

残されたのは、海に浮かぶ巨大な白い泡だけだった。

タタタタッ…タタタタッ…

甲板全体で人々が慌ただしく動き回る

「早く網の準備しろ!」

「釣り竿を出せ!」

「餌はどこだ、全部なくなってるぞ?」

「落ち着け!」髭の大きな男が背筋を伸ばし、周りを見回す

「そんなに慌てるな!」

「急いで船をあの場所に近づけろ!」

「あの魚が……」

ザバァァァァ……ザバァァァァ……

辺り一帯が巨大な影に覆われる

巨体から大量の海水が滝のように流れ落ちる

巨大な双眸が、小舟を見下ろしている

「……」周囲の全員の体が凍りついたように固まる

目を見開いたまま、軽く身動きすることすらできない

髭の男の声が、そっと囁く

「誰も……動いてはならない……」

「そのままの姿勢で……」

コトッ。

小さな音が響く

一人の若者の手から釣り竿が落ちる

グオォォォォォ!!

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………….

[同時刻]

ウィィィン……

ん……ん……

目の前に、ぼんやりとした光景が浮かび上がってくる

周囲はガラスで覆われ

光の帯が次々と視界を横切る

肩に何かの温もりが伝わってくる

そして不思議な手が、私の体をしっかりと抱きしめている

「目が覚めましたか、トガミ様?」コウカが顔を軽く傾け、私に微笑む

うぅ……

「コウカ……」私の目がゆっくりと大きく開き、首を巡らせる

「ここ……どこだ……」

「さっきまで……俺たちはまだ……」

「地上に戻っている途中です、トガミ様。」コウカが天井を見上げる

「今の君たちは、あそこに長くいるべきではありません。」

「余計なトラブルも避けるためです。」

「それに。」コウカが私に向かって微笑む

「もうすぐ配属が始まります。」

「調整……?」私は首を傾げてコウカを見る

すっ

「簡単に言えば……」コウカが私に巻きついていた腕をゆっくりと解く

「軍隊にはいくつかの異なる分隊があります。」

「各分隊が担当区域と任務を受け持っています。」

「そして新兵訓練が終わるたびに。」

「すべての分隊長が集まって、新兵を自分の分隊へ迎え入れます。」

「つまり……」私は腕を引いて、ゆっくりと体を起こす

「今日、彼らが来て人を選ぶのか?」

「そう言ってもいいですが、まだ足りません。」コウカが指を唇に当て、ガラスの方を向く

「今日はどちらかと言えば、一種のショーです。」

「各個人が自分の能力を必ず発揮しなければなりません。」

「分隊長たちはそれを見て評価し、選択します。」

「そして不必要な者は排除します。」

ごくっ

「……」私の目が見開き、体が凍りつく

ふっ…

「心配しないでください、トガミ様。」コウカが優しく微笑み、目を丸くして私を見る

「君なら、きっと多くの分隊長が自分の分隊に引き入れたいはずです。」

「だからその時が来たら……」

「君は必ず慎重に考えてください。」

ガハハハハ!

「そんな心配はもういらねえよ!」遠くから大きな声が響く

「あいつらについてはとっくに決まってる。」

コツッ!

「リコウ!」コウカが体を傾け、眉を寄せる

「私たちはみんな同意したはずでは?」

「彼ら全員に、自分で決める権利があるって。」

「今そんな要求は無理だって、君もわかっているだろう。」

クロガネさんはガラスの向こうへ視線を向けた。肩には奇妙な黒い影が乗ったまま。

「他のすべての分隊がもう動き始めている。」

「マスタバキの奴もだんだん嗅ぎつけてきている。」

「それともトガミのグループを第6分隊に入れる方がいいと思うのか?」

「それに……」クロガネさんが軽く首を傾げ、目を細める

「ハルくんを救うために……」

「第8分隊はどれだけの人材を失ったと思ってる……」

「もしハルくんが他のどの分隊に行っても……」

「何が起こると思う?」

チッ

「……」コウカが軽くうつむき、眉を寄せる

ぎゅっ…

「私はトガミ様にしか従いません。」コウカが突然私の後ろに立ち、首に腕を回す

「他の奴らがどうであろうと関係ありません。」

ガハハハハ!

「それで決まりか?」クロガネさんが片手を腰に当て、私の方を向く

「今年は妙な奴が分隊に入りすぎだな。」

「何人かは創造的で……」

「何人かは異常なほど強い……」

「フォロックスと初対面で相性抜群の奴もいる。」

すくっ

「それにまだ言ってないが……」クロガネさんが軽く肩をすくめ、黒い塊が小さく揺れる

「まさかとは思ったが……」

「このガキがパイロットに向いてるとはな?」

「小林 蓮。」


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