二つの道(二)
ザァァ…ザァァ…
濃い色の砂浜に、波が打ち寄せる中
白い泡の層がまだ至る所に残っている
いくつかの貝殻が波の方向に転がり
いくつかの貝殻が砂に埋もれている
…
俺の目の前には、小さな体と短い濡れた髪
全身が海水に覆われ
うつ伏せに砂浜に倒れている
体は微動だにしない
……
「ん~」俺は目を丸くし、首を軽く傾げて見つめる
…
ツン…ツン…
俺の指が、少年の頭を軽く突き続ける
…
むくっ…
少年の体が小さく震える
周囲の砂が徐々に動く
…
「ん?」俺は顔を近づける
…
…
ガバッ!
水滴が空中に浮かぶ
濃い色の砂が全身に付着し
明るい笑顔が顔を上げた瞬間に現れる
…
…
ぷっ…
あはははっ!
俺の視線が少年から離れられない
体をかがめ、両手でお腹を抱え
笑いが止まらない
…
ムッ…
「急に何笑ってるの!?」少年が頰を膨らませ、俺に向かって手を伸ばす
「大人のくせに!」
...
ちょい…ちょい…
「顔…顔が…」俺は唇を閉じようとし、目を細め、少年の顔を指差す
「そんな顔…誰だって…」
あはははっ!
…
パッパッ…パッパッ…
少年がくるくる回り、手を体中に振り回す
…
あはははっ!
俺は目を固く閉じ、少年に背を向ける
…
「ふざけすぎ!」少年は目を固く閉じ、手を強く地面に叩きつける
「何も面白くないのに笑うなんて!」
…
すっ…
「ごめんごめん!」俺は指で目元を拭い、少年の方に向き直る
「久しぶりにこんな光景見たからつい…」
…
ぷいっ…
「変な人!」少年は腕を組み、俺に背を向ける
「もうお兄さんと遊ばない!」
…
「わかったから、怒るなよ」俺は体をまっすぐ起こし、笑みをゆっくり消す
「もう笑わない、いいだろ?」
「だから、今回だけ許してくれ?」
「な?」
…
むくっ…
「絶対に守ってよね!」少年は頰を膨らませ、俺を横目で見る
「守らなかったら…ずっと怒ってるから!」
…
「分かったよ!」俺は後頭部に手を当て、頭を軽く下げる
「もう笑わない!」
「でも…」
「君…ここで何してるんだ?」
「お父さんとお母さんは?」
...
ビクッ!
「い…いや…」少年の体がびくりと震え、目が固まる
「違う…違う…」
「お父さんとお母さんが遊びに連れてきてくれた…だから…」
…
じーっ…
「本当か?」俺は目を細め、顔を近づける
…
「お兄さん…信じてくれないの…」少年の体が固まり、視線を別の方向へ逸らす
「お母さんが…僕たちを…ここで遊ばせて…」
「だから…」
…
…
タタタタッ…タタタタッ…
遠くから、もう一つの小さな影が俺たちに向かって走ってくる
長い青い髪が風に舞い
肌には奇妙な鱗のような模様
「待って…待ってよ…」
「待って…」
…
どてっ!
少女の体が砂浜に勢いよく倒れ込む
…
「えっ?」俺のまぶたが小さく震え、体が固まる
「この光景…どこかで見たような…?」
...
ひょこっ!
少女の顔が俺たちを真正面から見上げる
目を丸くし、黄金の砂が全身に付着している
…
わああん!
少女の手が砂浜を強く叩く
目を固く閉じ、顔を歪め
目尻に小さな水滴が浮かぶ
…
てててっ…てててっ…
少年が少女に向かって駆け寄る
両手で黄金の砂を払い落とし
少しずつ、少女を立たせようとする
視線が少女から離れない
「もう泣かないで!」
「僕がいるよ!」
「もう誰も君をいじめないよ!」
…
ひっく…ひっく…
「でも…でも…」少女が少年を見上げる
「まだ…見つかってない…」
「もし…なくしちゃったら…」
「そしたら…そしたら…」
…
わあああん!!
........
………
ザッ…ザッ…
「ほら…もう泣かないで…」俺は両耳を塞ぎ、二人の子供に近づく
「何かあったらゆっくり話せよ」
「俺に手伝えることがあれば教えてくれ」
…
ぱちぱち…ぱちぱち…
二人の子供が突然止まり、丸い目で俺を真正面から見つめる
…
ぎゅっ…
少女が突然少年の後ろに隠れ、肩をぎゅっと握る
唇を少年の耳元に寄せる
「早く行こう…」
「お母さんが…知らない人と話さないようにって…」
「知らない人…危ないって…」
…
こそこそ…
「別に大丈夫じゃない?」少年が少女の方を向く
「この人は他の人みたいに変なこと言わないし…」
「それに顔も…」
…
「…」二人の子供が俺をじっと見つめる
…
「?」俺も目を丸くして見返す
…
「もう行こうよ!」少年は顔を手で覆い、少女の方へ体を傾ける
「こんな人、お母さんがいつも言ってるような…」
…
「おい!」俺は目を細め、少し顔を歪める
「急に何言ってんだ?」
…
さっ!
少女が突然少年の背中に顔を埋める
…
「シノミをいじめないで!」少年は腕を大きく広げる
…
「シノミ?」俺は体を傾げ、手で軽く指差し
「この名前…どこかで聞いたような…」
「でもどうしてそんな…?」
…
トントン…トントン…
「もう行こう…」少女が少年の背中を何度も叩く
「早くしないと…お母さんにバレたら…」
「おばあちゃんの大切なもの…僕のせいでなくしちゃったら…」
「ハル…お仕置きされて…」
「誰も…僕と遊んでくれなくなる…」
…
「ハル?」俺の体が固まり、目が険しくなる
「ふざけてんのか?」
…
…
ぎゅっ!
「じゃあもう行こう!」少年は少女の手を強く握る
「僕も部屋に閉じ込められるのは嫌だ!」
…
「うんっ!」少女が大きく頷き、唇に明るい笑みを浮かべる
...
ぱっ!
「ちょっと待て!」俺は両手を二人の子供に向かって大きく振る
「さっきからお前ら何言ってるんだ?」
「お前ら、何かなくしたのか?」
「よかったら俺も探すの手伝うぞ!」
「一人いる方がいいだろ?」
…
ぴっ!
「…」二人の子供が目を丸くして俺を見、手をゆっくりと俺に向かって指差す
「僕たちのもの…」
「兄さんの首についてるやつより大きい」
...
「首の…上?」俺はゆっくりと頭を下げる
...
…
ぱちっ…ぱちっ…
「うわ?」俺の目が何度も瞬く
「さっきの首飾り…どこ行った…」
…
「お前ら二人も…」俺は頭を巡らせて周りを見る
…………………………………………………………………………………………
ガシガシ…ガシガシ…
「結局今まで何が起きてんだよ!?」俺は頭を激しく掻き、顔を歪める
「次から次へと…」
「全部通り過ぎるだけで、頭も尻尾もねえ!」
…
ザッ!!ザッ!!ザッ!!
「結局いつになったらこの話は終わるんだよ!?」俺は砂浜を何度も強く踏みつける
…
…
ガンッ!
「へ?」俺の足が止まり、体全体が一瞬固まる
...
パッパッ…パッパッ…
「お前…まさか…」俺は砂を払い落としながら
「さっきの球体にそっくりだ」
…
ひょい!
「意味わかんねえ!」俺は球体を高く持ち上げ、くるくる回す
「お前は何が特別なんだ…」
「みんなが必死で探す理由は?」
…
すっ…
俺はゆっくりと球体を下ろす
今、俺の目の前には…
…
ザァァ…
全てが二つに分かれる
片側では、槍を持った少年が緑の服の列の間を歩いている
もう片側では、二人の小さな子供が大小様々な球体の間で
…
「…」俺は軽く頭を下げ、球体を真正面からじっと見つめる
…
…
「よし、決めた!」俺は分かれ道の方に顔を上げる
ザッ!




