二つの道(一)
ザァァ…ザァァ…
眩しい陽光が辺り一面を照らす中
青い波が白い砂浜を洗う
遠くにぼんやりと山並みが浮かぶ
…
ザッ…ザッ…
「畜生…」一歩ずつ、俺は海岸沿いを歩く
「どれだけ歩いても何もねえ」
「結局…ここ…」
「どこまで続いてんだよ?」
…
…
「ん?」俺の目が徐々に細くなり、手を額に当てる
「あっち…もしかして…」
…
ザッ…ザッ…ザッ…
遠くから、一列の人影がぼんやりと現れる
見覚えのある緑色の軍服、海水で濡れたその姿
行進の掛け声が辺りに響く
「一…二…一…二…」
「小さすぎるぞ!」
「お前ら腹減ってんのか?」
「いいえ、指揮官!」
「なら気合いを見せろ!」
…
ブンブン…ブンブン…
「おい!」俺は手を激しく振り、目を見開く
「こっちだ!」
「助けてくれ!」
…
ザッザッザッ…ザッザッザッ…
砂埃が一帯を覆う
緑色の軍服の列が俺の視界を駆け抜ける
「了解、指揮官!」
「もう一度!」
…
…
ガクッ
「ふざけんなよ?」俺は砂浜に顔を伏せ、手をだらりと下ろす
「なんで見つからないんだ?」
「やっと誰か見つけたと思ったのに…」
…
ズブッ!
一対の小さな足が俺の目の前に現れる
青い金属の棒が砂浜に深く突き刺さる
「兄さんはここで何してるんですか?」
「この区域は一般人の立ち入り禁止ですよ」
…
フッ…
俺の顔がゆっくりと上を向く
目が徐々に大きく見開かれる
「君…俺が見えるのか?」
…
「もちろん!」目の前の少年が目をきつく細め、一方の手を腰に当てる
「こんなにデカいのが見えない方がおかしいでしょ」
…
ガシッ…ガシッ…
「よかった!」俺は少年の両肩を強く掴み、激しく揺らす
「ここにずっと閉じ込められたかと思ったぞ!」
…
スッ
「わかった…わかったから…」少年が俺の腕を掴もうとする
「だから落ち着いてください!」
…
「あ。」俺の手が止まり、ゆっくり離す
「すまん!」
…
「大丈夫です」少年の目が徐々に細くなる
「でも兄さんは早くここから離れた方がいいですよ!」
「この区域に迷い込んだ一般人は、たいていろくな目に遭いませんから!」
…
スッ
「待て」俺は手を少年の目の前に出す
「さっきから全然意味がわからねえ!」
「結局、ここは何なんだ?」
…
「は?」少年が軽く首を傾げ、腕を組む
「兄さん、俺をからかってます?」
「全ての住民に通達が出てるはずなのに?」
…
「通達?」俺は目を丸くして少年を見る
…
はぁ…
「今週で何回目かわからない」少年は顔を手で覆い、頭を深く下げ、歯を強く噛みしめる
「放送班の連中を本気で罰しなきゃ」
…
「あの…」俺の手がゆっくりと上がる
…
「あ、そうですよね?」少年がゆっくりと手を下ろし、目を見開いて俺を見る
「どうして兄さんはまだここから離れてないんですか?」
…
ギリッ…
「さっきから何言ってんだお前!?」俺は拳を強く握り、少年に向かって身を乗り出す
「そんなこと言われても誰がわかるかよ!」
…
はぁ…
「だから俺は巡回が嫌なんだ」少年が軽く顔を伏せる
…
「よく聞け、二度と言わないぞ!」少年は両手を腰に当て、俺を真正面から睨む
「今、この周辺の海域全体が…」
「捜索作戦のために封鎖されている」
「申し訳ないが立ち去ってください!」
チッ
…
「おい!」俺は目を細めて少年を睨む
「今、チッてしただろ?」
…
「気のせいですよ」少年が顔を別の方向へ逸らす
…
「とぼけるな!」俺の目が徐々に険しくなる
「はっきり聞こえたぞ」
…
ザッ…ザッ…
「どうでもいいです!」少年が俺に背を向け、ゆっくり後退する
「兄さんは早くここから離れてください!」
「見つかったら面倒なことになりますよ!」
…
ズボッ!
「第9隊の指揮官たちに見つかったら…」少年は手を伸ばし、青い金属の棒を砂から引き抜く
「だから俺の忠告を聞いてください!」
…
サッ
「自分の命を大事にしたいなら!」少年は金属の棒を俺の胸に突きつける
……………………………..
今、俺の目の前にあるのは、奇妙なくらい見覚えのある形
波のような装飾と、たくさんの貝殻が埋め込まれた槍の穂先
…
「待て」俺の視線が槍の穂先から離れられない
「これ…お前、どこで手に入れた?」
…
「は?」少年の顔が徐々に歪む
「兄さん、何言ってるんですか?」
「俺のものなんだから当然俺が持ってるでしょ!」
「誰から取ったって言うんですか?」
…
「違う…この形…」ぼんやりした映像が俺の頭に浮かぶ
「あの日…確かにあいつが…」
…
スッ
「兄さんが何を言ってるのかわかりません!」少年はゆっくり槍を収め、俺に背を向ける
「とにかく、早くここから離れた方がいいですよ!」
…
「そうだ!」少年が軽く俺を横目で見る
「絶対に見つからないと思いますけど」
「念のため言っておきます!」
…
「ん?」俺の体が止まり、少年の方を見る
「軍は、チラシに描かれている球体を見つけた者に報酬を出してる」
「もし運悪く兄さんが拾ったら…」
「そのまま部屋に閉じ込められて…」
「彼らにこう言ってください…」
…
「トガミ・イカリが許可してくれたと言え!」少年は体を傾け、指を俺の胸に突きつける
...
「イカリ?」俺の目が徐々に険しくなる
「まさか…」
…
スタ…スタ…
「じゃあな!」少年は俺に背を向け、前へ歩き出す
…
「待て!」俺の腕が少年に向かって伸びる
「まだ聞きたいことがある!」
…
…
「せめて…」俺の腕がゆっくり下がる
「何を探してるのかくらい教えてくれよ!」
…
スッ
「首の上のものより10倍大きいやつ!」少年は槍の穂先を俺に向ける
「じゃあな!」
…
「首の…上?」俺はゆっくりと顔を下げる
…
ビクッ!
「何だこれ!?」俺は体を後ろに引いて、手で小さな球体を掴む
「いつからこんなものがここにあったんだよ!?」
…
…
グイッ... グイッ...
「抜け…ろ…よ!」俺は顔を歪め、球体を自分の方向へ強く引き抜こうとする
「出てこい!」
…
ポテッ
波が絶え間なく浜を打つ
奇妙な音が俺の足元で響く
そして一つの小さな体が、濡れた砂浜にうつ伏せに倒れている
…
パチッ…パチッ…
俺の体が凍りつき、目が何度も瞬く
「へ?」




