多面体のプリズム(五)
コツ…コツ…
俺の視界が、徐々にぼやけていく。
周囲の全てが軽く上下に揺れ続ける
一本の太い黒い線が、周囲のほとんどを覆い隠していく。
......
ザーーーーー…
奇妙な音が、俺の周囲に響き渡る。
「よっ!」
「またかよ?」
「クソAIどもが死にやがって…」
「今度はこんな死にかけの奴らかよ。」
…
はぁ……
「いつまでこんなこと繰り返さなきゃいけないんだ?」
「いつも修理ばっかりだ…」
「使ったら終わりみたいな連中だな」
…
「まあいいじゃねえか!」
「どうせ大した修理じゃねえよ!」
「全部あの女に放り込めば済む」
…
はぁ……
「そこが面倒なんだよな…」
「あのガキ…」
「近づくだけでうんざりする」
「それに上の連中も…」
「うるせえことばっか言いやがる」
…
「だったら…」
「こうすりゃいいんじゃねぇか?」
…
フフフ……ははは!
………………………………………………………………………………….
ザーーーーー…
…
ドガン!!
今、俺の目の前には、一つの人影があった…
ひび割れた壁の下、瓦礫に囲まれて…
一人の女性…
髪が顔を覆い隠し…
白い衣が全身を包み…
その両手で…必死に体を起こそうとしている…
…
カツ…カツ…
俺の体が勝手に近づいていく。
太い黒い線が周囲を覆い隠していく。
声が真上から響く
「どうした?」
「さっきは随分と強気だったくせに…」
「もう一回言ってみろよ?」
…
ぐっ……ぐっ……
「貴様ら…いずれ必ず後悔する…」女性の体は震え続け、それでも手をゆっくりと持ち上げようとする
「この罪…隠し通せると思うな…」
「遅かれ早かれ…貴様らは…」
…
ドゴッ!!
「まだ強気かよ?」一発の蹴りが女性の腹に直撃する
…
がはっ!
「…」女性は床へ崩れ落ちた。
…
コツ…コツ…
「周りを見てみろ!」俺の体は、女性の周りをぐるぐると歩き回る。
「お前が誇りに思っていた全て…」
「お前が作り出した全て…」
「お前を守っていた全ての人々…」
「こんなの、一番馬鹿な奴だって分かることだろ!」
…
ぐっ……
「みんな…必ず来る…」女性の指は、それでも前へ伸び続ける。
「絶対に…」
「あの人…」
「来てくれる…」
…
ふんっ~
俺の体が突然動きを止める
「そうか?」
「へぇ、そりゃ怖いな。」
…
パカッ
俺の周囲の空間が激しく回転し始める
細い線が至る所を覆う
「まあいい」
「あいつが来るまで…」
「暇つぶしになることでもさせてやるよ。」
…
サッ…
「やめて…」女性が俺に向かって手を伸ばす
「お願い…やめて…」
…
ビシッ!
…………………………………………….
ザーーーーー…
…
バチバチッ……バチバチッ……
俺の目の前の景色が、再びぼやけていく
切れ切れの線が至る所を覆う
目の前に、二つの奇妙な球体
一つは、無数のへこみに覆われている
もう一つは無数の亀裂に覆われている
…
ぐぐっ……ぐぐっ……
一本の手が、ゆっくりと二つの球体を引き寄せていく
少しずつ、球体が床の上を滑っていく
白い衣が、俺の周囲を包み込んでいく
...
大きな黒い影が至る所を埋め尽くす
光が今、弱々しくなっていく
「よく聞け!」
「民衆の反発は強まっている…」
「彼らには信じられるものが必要だ。」
「彼らには安心が必要だ。」
「もっと多くのものが必要なんだ!」
…
「未来を生きる子供たちのことを考えろ…」
「年老いて弱った人々のことを考えろ…」
「頼る者のない無名の人々のことを考えろ…」
「お前の知らない名もなき犠牲者たちのことを考えろ…」
…
「お前は恵まれた子供だ…」
「お前は多くの人に守られ、支えられてきた…」
「お前は、多くの命が夢見るような人生を生きている…」
…
「さあ…」
「社会に恩返しをする時だ!」
「お前の才能で人々を守れ…」
「お前の発明で未来を作れ…」
………
ザーーーーー…
幾つもの声が、まるで合唱のように響き渡る。
「より良い明日のために…」
「もう一度だけ頑張ってくれ…」
「お前は家族の元へ帰れる…」
「家族はみんな、お前の帰りを待っている…」
…………
ザーーーーー…
…
バタン!!
「俺たちは、いい知らせを待ってるぞ!」
「人を待たせた代償が何か…お前なら分かってるよな。」
…
…
周囲が再び闇に沈む
黒い影は、跡形もなく消え去り…
かすかな光も消えていく。
…
俺の周囲を、ひび割れた二つの球体が囲んでいる。
奇妙な腕に抱かれている。
白い衣が全てを包み込む。
小さな囁きが響く
…
ひっ……
「……ごめんなさい。」
…
…
……………………………………………………
ザーーーーー…
…
ビーッ!ビーッ!
赤い光が、辺り一面を覆い尽くしていく。
人影たちが慌てて走り回る
…
「どうしてここがバレた!?」
「早く奴を止めに行け!」
...
「何だと!?」
「あいつが、もうすぐここまで来るのか!?」
…
「まずい!」
「全ての通路が使えない!」
...
「畜生!」
「あのクズどもは何やってんだよ!」
「相手はただの一般人だぞ!」
.............................................................
ザーーーーー…
…
ゴォォォ……ゴォォォ……
赤い炎が辺り一面を包む中、
砕けた石片が床一面に散らばっている。
…
サッ!
俺の目の前には、巨大な錨が真っ直ぐ突きつけられている。
その後ろには、白い衣の女性が静かに横たわっている。
無数の銃口が周囲を取り囲んでいる。
…
「言うことは一つだ。」
「あれはお前たちのものじゃない」
「あいつもだ!」
「返すか…」
「…それとも死ぬか!」
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ザーーーーー…
…
周囲の空間が突然暗くなる
波紋のような揺らぎが、辺り一面へと広がっていく。
何かが砕けるような、小さな音が響く。
…
「ふざけんなよ?」
「またあいつを助けなきゃならないのかよ?」
…
「まあまあ。」
「あいつのためだって。」
…
「絶対に嫌だ!」
…
「男どもは本当に役立たずだな!」
…
「駄目だ!」
「そんなことしたら、あいつを甘やかすだけだ!」
…
…
「サージ。」
「頼む。最初はお前でいいか?」
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ハッ!
俺の体が勢いよく跳ね起きる。
目を見開き
息が荒い
…
ガサゴソ…ガサゴソ…
俺は慌てて全身を探る。
視線を落とし、頭を何度も動かす。
…
はぁ……
「よかった…」目を閉じ、肩の力が抜ける。
「全て元に戻った」
…
「でも…」目を見開き、ゆっくりと顔を上げる。
…
ザァーン……
「ここ…どこだ?」




