多面体のプリズム(一)
ビーッ-- ビーッ-- ビーッ--
赤い光が全ての機器の画面を覆い尽くす
各画面が絶え間なく点滅している
数字が止まることなく変化し続ける
いくつかのモニターはすでにブラックアウトしている
そしてあの大きなグラフは今…
…二つの曲線が、今まさに交わろうとしていた
…
タタタタタタ…カチャカチャカチャ…
画面の光が、一人ひとりの顔を照らしている
指が止まることなく動き続ける
誰一人として目の前から視線を逸らせない
誰も瞬きすら忘れていた
……
ガシッ!
「何が起こっているんだ!?」男が手すりを強く掴み、目を凝らして周りを見る
「早く報告しろ!」
…
カチャカチャカチャ…
「その…」オペレーターたちは振り返ることもできない
「こんなことは今まで一度も起こったことがありません…」
「システムがまるで…」
「まるで私たちの操作を受け付けていないようです」
…
「なんだと?」男は目を見開き、その表情を強張らせる
「どうしてそんなことが起こるんだ?」
…
タタタタタタ…
「セラフィムシステム全体が一切の反応を示していません」部屋の右側から声が響く
「用意されていた安全措置が…」
「突然…」
「全てが機能を失っていました」
…
ドンッ!
「これだけの最新鋭設備が揃っているのに…」男は手すりを強く叩く
「なのに…」
「まともに動くものは一つもないのか!?」
…
「誰でもいい、説明しろ…」男は身を乗り出し、画面を睨みつける
「一体何が起きているんだ!?」
…
…
バサバサバサ…バサバサバサ…
白い紙が辺り一面に舞い散る
手帳の中身は、もう空になっていた
…
ハァ... ハァ...
若い男の手には、たった一枚の紙だけが残されていた
男の目の前に差し出される
…
「これは何だ?」男は若い男の方へ目をやる
…
「これを…見てください…」若い男は男を真っ直ぐ見つめる
…
…
チラッ…チラッ…
男の視線が忙しなく行き来する
紙を一瞥しては画面に視線を戻す
唇からかすかな声が漏れる
「いや…ありえない…」
「どうしてこんなことが…」
…
「この数値…」若い男は画面へ手を伸ばす
「間違いないです…」
「あの時とあまりにも似ています…」
「私たちが…あれを無理やり同期室へ入れた時…」
「ヒドロファラックス9号の時とそっくりです…」
…
クシャッ…
「どうしてこんなことが起こるんだ?」男は紙を強く握りしめる
「10号は独立設計だったはずだろう?」
「こんな偶然が起こるわけがない!」
…
「私たち…どうすれば…」若い男がゆっくり背筋を伸ばす
「このままじゃ…」
「もしかすると…」
「あの子は…」
「あの時と同じ結末を…」
…
…
グシャッ
男は紙をぐしゃりと握り潰す
背筋を伸ばし、ガラスの向こうへ腕を突き出す
「最終手段を実行しろ!」
「何を犠牲にしても構わない!」
「今すぐあれを切り離せ!」
…
「了解しました!」部屋中に声が響き渡る
…
…
ブツッ
一台のモニターが突然暗転する
周囲の明かりもふっと消える
…
ブツッ…ブツッ…ブツッ…
次々と画面が黒に染まっていく
少しずつ、周囲の照明が消えていく
誰もが硬直した表情で画面を見つめる
指先も凍りついたように止まる
…
「今度は何が起きた!?」男は目を見開き、振り返るように周囲を見回す
…
…
コツ... コツ...
部屋の扉が勢いよく開かれる
遠い廊下の奥から、人影がゆっくりと近づいてくる
遠くから声が響く
「何年経とうと…」
「貴様らは…」
「何も変わっていない…」
…
「誰だ!?」男は廊下の扉の方へ視線を向ける
…
コツ... コツ...
照明の中に、女の姿が浮かび上がる
艶やかな黒髪、口元をわずかに吊り上げ
部屋を見渡す冷ややかな視線
「ただの臨時要員よ」
…
ガンッ!!
「貴様は何様のつもりだ!」男は手すりを叩きつけ、女を睨みつける
「今の状況がどれだけ深刻か分かっているのか?」
…
「少なくとも貴方たちよりはね」コウカはガラスの向こうへ視線を向ける
…
ギリッ…
「貴様ごときに何が分かる!」男は奥歯を噛み締める
「こんな状況を良しとしているのか?」
…
スッ
「…」コウカは静かに手をガラスに置き、奥の区画へ真っ直ぐ視線を向ける
…
「放っておけ!」男は背筋を伸ばし、周りを見回す
「何としてでも候補者を引き離せ!」
「絶対に候補者を同化させるな!」
…
「…その果てに、貴方たちは…」コウカはかすかに唇を動かし、ゆっくり振り返る
「…全てを失うわ…」
…
「何だと?」男は動きを止め、コウカを見据える
「どういう意味だ?」
…
「本当の試練は…」コウカは男を真っ直ぐ見据える
「…今から…」
「ようやく始まるのよ」




