同期
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
赤い光が周囲の空間全体を覆い尽くす
画面上の数字が絶え間なく乱れ跳ねる
二つの曲線が徐々にずれていく大きなグラフ
…
ぱたぱた…ぱたぱた…
何度もキーを叩き続ける何組もの手
誰もが目の前の画面から目を離せない
そしてその全ての中心に立つ一人の男が、周囲を何度も振り返る
「どんな手段でも構わない!」
「早く接続を切断しろ!」
…
ぱたぱた…
「しかし強制的にやれば…」青い服の男が振り返りながら言う
「後々の影響が…」
…
「そんなことはどうでもいい!」男はガラス越しに向こう側を睨みつける
「責任は後で俺が取る」
「とにかく中にいる者を先に引き出せ!」
…
ぱたぱた…ぱたぱた…
「了解しました!」部屋全体が声を揃える
「緊急切断プロトコルを実行します」
「1号コクピットの電源は完全に切断されました」
「2号コクピットのシステム無効化を進めています」
…
…
「全工程完了!」数字が跳ねる画面から目を離さない視線たち
「1号コクピットのロックが解除されています」
…
「早くそこへ行け!」男がガラスに向かって手を伸ばす
……
だだだ…だだだ…
オレンジ色の服を着た一団が、向こう側のコクピットへ一直線に駆け寄る
手に大きな担架と、赤い十字の入った箱をいくつか抱えて
…
がちゃっ…
コクピットの扉がゆっくりと開かれる
白い煙が辺り一面に広がる
オレンジ色の者たちが口を押さえ、後ろへ合図を送る
そしてこちらに向かって響くいくつかの声
「気をつけて!」
「急げ!」
…
ずるっ…ずるっ…
手を繋ぎながら、オレンジ色の者たちが一人の人影をコクピットから引き出す
その身体は今、微動だにしない
顔は真っ青で、指は固く曲がったまま
目を固く閉じ、まつげにはまだ白い跡が残っている
…
…
はぁ…
ガラスの向こう側から、視線が絶え間なく追い続ける
「これで何度目だ?」男は眉を寄せ、椅子に腰を落とす
「なぜ俺たちは何度も失敗する?」
「結局、どこで間違えたんだ?」
…
こつっ…
「これをすべて中止すべきではないでしょうか?」一人の若い男が近づき、小さな手帳を手に言う
「これでもう30回目ですよ!」
「毎回、候補者たちは違う状態になってしまう」
「まるで…」
「こちらをからかっているかのようです」
…
「駄目だ」男は若い男に向かって手を伸ばす
「今の状況では…」
「敵の所在はまだ不明で…」
「第9隊と彼らのイージスからも何の情報もない…」
「このままネメシスを倉庫で眠らせておくわけにはいかない」
…
「しかし…」少年が手帳を男の方へ向ける
…
ぎゅっ…
「それは分かっている」男は拳を強く握りしめる
「だが今は…もう躊躇している時間はない」
「次の候補者を呼べ!」
…………………
すた…すた…
1号コクピットへ続く廊下から
金髪の少年の影がゆっくりと近づいてくる
片手で前髪をかき上げながら
唇が小さく呟く
「本当に役立たずの連中だな」
「これくらいのことで何もできないなんて」
「結局、俺だけが相応しいというわけだ」
…
がしゃん…
コクピットの蓋が固く閉ざされる
金髪の少年はゆっくりとヘッドギアを被る
すると内部のスピーカーから小さな声が響く
「あまり無理をなさらないでください」
「何か異常を感じたら、右手下の赤いレバーをすぐに引いてください」
「私どもが可能な限り迅速に救助します」
…
「分かった分かった」金髪の少年は目を閉じ、軽く首を振る
「早く始めろよ?」
…
「了解しました」外側の視線たちが画面を見つめ、軽く顔を見合わせる
「同期を開始します…」
「三…」
「二…」
…
「一。」
…………………………………………………………………………………..
ゆら…ゆら…
金髪の少年の目の前で、空間は今、真っ暗になる
至る所に不思議な光の粒が散らばり
まるで夜空の星座のような幾つかの痕跡
…
「これが同期なのか?」金髪の少年は周りを見回す
「大したことないじゃないか!」
…
「こんにちは」どこからともなく声が響く
…
「誰だ?」金髪の少年は顔をしかめて周囲を振り返る
「さっさと姿を見せろ!」
…
ふふっ…
「まあいいわ」声が少し小さくなる
「でも…もっと面白いじゃない…」
「あなたが私を見つけられたら?」
…
「ふざけるなよ?」金髪の少年は眉をひそめる
「こんな真っ暗なところでそんなゲームする暇はない」
「俺はここに来たのは…」
…
「知ってるわ」声が少年の耳元に近づく
「そして…」
…
「私はあなたみたいな人に結構興味があるのよ!」影が少年の耳元でそっと囁く
…
「だったら出てこいよ!」金髪の少年はくるりと回る
「そんなに恥ずかしがるなよ!」
…
「恥ずかしくないわけないでしょ!」光の粒が一ヶ所に集まり始める
「いきなりあなたみたいな人とペアを組まされて…」
「私だって心の準備が必要なんだから!」
…
すぅ…
「安心しろ」少年が光の集まる点にゆっくり近づく
「俺に悪い気はない」
「君が持ってるもの全部、俺に預けてくれればいい」
…
すっ…
「それだけで…」少年が光の粒の中心の顔に触れる
「俺たちはきっと何でもできる」
…
周囲の空間が徐々に形を変え
光が辺り一面を覆い始める
…
…
がががっ…
「そして今日…」空間の真ん中に音が響く
「人類全体の勝利を祝おう!」
……
がががっ…がががっ…
空間がさらに色を変えていく
金髪の少年は今、全く違う装いの服を着ている
周囲には将軍たちが次々と手を振り
祝福の言葉が響き渡る
「君がいなければ俺たちはできなかった」
「やはり君にしか成し得ない奇跡だ!」
「君の明るい未来に大きな期待をしている!」
「今後の研究プロジェクトでもぜひ協力してほしい」
……
がががっ…
今、金髪の少年の周り
至る所からマイクが突き出され
人々が押し合いへし合いしながら近づいてくる
「こちらを向いてください」
「どうやってやったのか教えてください!」
「どうしてそんなに突き進めたんですか!」
「何があなたを他の全員と違うものにしたんですか?」
…
すると一つの声が、全ての間に小さく響く
「あなたはどうやってあの暴走するイージスを制したのですか?」
…
「ただの機械じゃないか」金髪の少年は唇を少し動かす
「難しいことなんてない」
「頑張れば誰にだってできるさ」
…….
がががっ…がががっ…
今、周囲の光が金色に変わり始める
空間の至る所に赤いワインの瓶
そして女性たちの影が、金髪の少年の方を見つめている
…
すっ…
「今夜は俺たちのものだ」少年が女性たちに近づく
「一緒に楽しもうぜ」
……
がががっ…
空間が徐々に歪み始める
そして一つの声が全ての間に響く
「じゃあ私は?」
………………………………………………………………
…あは…はは…
コクピットの扉が今、大きく開いている
金髪の少年は笑みを浮かべ続け
目を見開き、髪を乱れさせ
唇が途切れ途切れに動く
「ゆっくり… 女の子たち…」
「ゆっくりだ…」
「誰だって…順番がある…」
…
…
はぁ…
ガラスの向こう側、画面の間で
男は鼻筋に手を当て、目を閉じる
「どうしてこうなる…?」
…
「…」部屋全体が今、静まり返っている
誰も正面の画面を直視できない
…
「今日はここで止めておくべきでしょうか?」若い男が周りを見回す
「少し止めて考える時間を取った方が解決策が見つかるかも…」
…
「ああ」男は床に顔を伏せる
「ここで止めておけ」
「待機室の候補者たちに伝達しろ」
…
…
周囲の空間は今、一つの大きな部屋
至る所に長いベンチが並び、人影が溢れている
誰も顔を上げようとせず
目を細めて互いを見つめ合い
唇を固く結んだまま
…
こつ…こつ…
「長らくお待たせして申し訳ありません!」若い男が群衆の前に立ち、手帳を手に言う
「皆さんが今見た通り…」
「現在のシステムに少し不具合が生じているようです…」
「安全上の理由により」
「本日はここで一時中断とさせていただきます」
「皆さんは各自のエリアへお戻りください…」
「システムが安定し次第すぐにお知らせします」
「ありがとうございました」
…
ひそひそ…ひそひそ…
群衆の間で小さな囁きが広がる
「もうこの件から抜けようぜ」
「ここ数日も同じこと言ってたよな」
「さっきの見たろ」
「みんな…」
「あのコクピットの扉をくぐるたびに…」
「全く割に合わない」
…
こつ…
「すみません!」一人の影が群衆から進み出て、手を高く上げる
「今日こそ私にやらせてもらえませんか?」
「もう待ちすぎました!」
…
「今のところそれは難しいです」若い男は手帳に目を落とす
「さっき聞いた通り…」
…
「俺にやらせろ!」少年は眉を寄せ、若い男をまっすぐ見つめる
「こんな理由で待たされすぎだ!」
…
…
「分かりました」若い男は軽く頷き、ページをめくる
「あなたの名前を教えてください」
…
「小林 蓮です」少年は目を見開き、手をゆっくり下ろす




