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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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69/75

同期

ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

赤い光が周囲の空間全体を覆い尽くす

画面上の数字が絶え間なく乱れ跳ねる

二つの曲線が徐々にずれていく大きなグラフ

ぱたぱた…ぱたぱた…

何度もキーを叩き続ける何組もの手

誰もが目の前の画面から目を離せない

そしてその全ての中心に立つ一人の男が、周囲を何度も振り返る

「どんな手段でも構わない!」

「早く接続を切断しろ!」

ぱたぱた…

「しかし強制的にやれば…」青い服の男が振り返りながら言う

「後々の影響が…」

「そんなことはどうでもいい!」男はガラス越しに向こう側を睨みつける

「責任は後で俺が取る」

「とにかく中にいる者を先に引き出せ!」

ぱたぱた…ぱたぱた…

「了解しました!」部屋全体が声を揃える

「緊急切断プロトコルを実行します」

「1号コクピットの電源は完全に切断されました」

「2号コクピットのシステム無効化を進めています」

「全工程完了!」数字が跳ねる画面から目を離さない視線たち

「1号コクピットのロックが解除されています」

「早くそこへ行け!」男がガラスに向かって手を伸ばす

……

だだだ…だだだ…

オレンジ色の服を着た一団が、向こう側のコクピットへ一直線に駆け寄る

手に大きな担架と、赤い十字の入った箱をいくつか抱えて

がちゃっ…

コクピットの扉がゆっくりと開かれる

白い煙が辺り一面に広がる

オレンジ色の者たちが口を押さえ、後ろへ合図を送る

そしてこちらに向かって響くいくつかの声

「気をつけて!」

「急げ!」

ずるっ…ずるっ…

手を繋ぎながら、オレンジ色の者たちが一人の人影をコクピットから引き出す

その身体は今、微動だにしない

顔は真っ青で、指は固く曲がったまま

目を固く閉じ、まつげにはまだ白い跡が残っている

はぁ…

ガラスの向こう側から、視線が絶え間なく追い続ける

「これで何度目だ?」男は眉を寄せ、椅子に腰を落とす

「なぜ俺たちは何度も失敗する?」

「結局、どこで間違えたんだ?」

こつっ…

「これをすべて中止すべきではないでしょうか?」一人の若い男が近づき、小さな手帳を手に言う

「これでもう30回目ですよ!」

「毎回、候補者たちは違う状態になってしまう」

「まるで…」

「こちらをからかっているかのようです」

「駄目だ」男は若い男に向かって手を伸ばす

「今の状況では…」

「敵の所在はまだ不明で…」

「第9隊と彼らのイージスからも何の情報もない…」

「このままネメシスを倉庫で眠らせておくわけにはいかない」

「しかし…」少年が手帳を男の方へ向ける

ぎゅっ…

「それは分かっている」男は拳を強く握りしめる

「だが今は…もう躊躇している時間はない」

「次の候補者を呼べ!」

…………………

すた…すた…

1号コクピットへ続く廊下から

金髪の少年の影がゆっくりと近づいてくる

片手で前髪をかき上げながら

唇が小さく呟く

「本当に役立たずの連中だな」

「これくらいのことで何もできないなんて」

「結局、俺だけが相応しいというわけだ」

がしゃん…

コクピットの蓋が固く閉ざされる

金髪の少年はゆっくりとヘッドギアを被る

すると内部のスピーカーから小さな声が響く

「あまり無理をなさらないでください」

「何か異常を感じたら、右手下の赤いレバーをすぐに引いてください」

「私どもが可能な限り迅速に救助します」

「分かった分かった」金髪の少年は目を閉じ、軽く首を振る

「早く始めろよ?」

「了解しました」外側の視線たちが画面を見つめ、軽く顔を見合わせる

「同期を開始します…」

「三…」

「二…」

「一。」

…………………………………………………………………………………..

ゆら…ゆら…

金髪の少年の目の前で、空間は今、真っ暗になる

至る所に不思議な光の粒が散らばり

まるで夜空の星座のような幾つかの痕跡

「これが同期なのか?」金髪の少年は周りを見回す

「大したことないじゃないか!」

「こんにちは」どこからともなく声が響く

「誰だ?」金髪の少年は顔をしかめて周囲を振り返る

「さっさと姿を見せろ!」

ふふっ…

「まあいいわ」声が少し小さくなる

「でも…もっと面白いじゃない…」

「あなたが私を見つけられたら?」

「ふざけるなよ?」金髪の少年は眉をひそめる

「こんな真っ暗なところでそんなゲームする暇はない」

「俺はここに来たのは…」

「知ってるわ」声が少年の耳元に近づく

「そして…」

「私はあなたみたいな人に結構興味があるのよ!」影が少年の耳元でそっと囁く

「だったら出てこいよ!」金髪の少年はくるりと回る

「そんなに恥ずかしがるなよ!」

「恥ずかしくないわけないでしょ!」光の粒が一ヶ所に集まり始める

「いきなりあなたみたいな人とペアを組まされて…」

「私だって心の準備が必要なんだから!」

すぅ…

「安心しろ」少年が光の集まる点にゆっくり近づく

「俺に悪い気はない」

「君が持ってるもの全部、俺に預けてくれればいい」

すっ…

「それだけで…」少年が光の粒の中心の顔に触れる

「俺たちはきっと何でもできる」

周囲の空間が徐々に形を変え

光が辺り一面を覆い始める

がががっ…

「そして今日…」空間の真ん中に音が響く

「人類全体の勝利を祝おう!」

……

がががっ…がががっ…

空間がさらに色を変えていく

金髪の少年は今、全く違う装いの服を着ている

周囲には将軍たちが次々と手を振り

祝福の言葉が響き渡る

「君がいなければ俺たちはできなかった」

「やはり君にしか成し得ない奇跡だ!」

「君の明るい未来に大きな期待をしている!」

「今後の研究プロジェクトでもぜひ協力してほしい」

……

がががっ…

今、金髪の少年の周り

至る所からマイクが突き出され

人々が押し合いへし合いしながら近づいてくる

「こちらを向いてください」

「どうやってやったのか教えてください!」

「どうしてそんなに突き進めたんですか!」

「何があなたを他の全員と違うものにしたんですか?」

すると一つの声が、全ての間に小さく響く

「あなたはどうやってあの暴走するイージスを制したのですか?」

「ただの機械じゃないか」金髪の少年は唇を少し動かす

「難しいことなんてない」

「頑張れば誰にだってできるさ」

…….

がががっ…がががっ…

今、周囲の光が金色に変わり始める

空間の至る所に赤いワインの瓶

そして女性たちの影が、金髪の少年の方を見つめている

すっ…

「今夜は俺たちのものだ」少年が女性たちに近づく

「一緒に楽しもうぜ」

……

がががっ…

空間が徐々に歪み始める

そして一つの声が全ての間に響く

「じゃあ私は?」

………………………………………………………………

…あは…はは…

コクピットの扉が今、大きく開いている

金髪の少年は笑みを浮かべ続け

目を見開き、髪を乱れさせ

唇が途切れ途切れに動く

「ゆっくり… 女の子たち…」

「ゆっくりだ…」

「誰だって…順番がある…」

はぁ…

ガラスの向こう側、画面の間で

男は鼻筋に手を当て、目を閉じる

「どうしてこうなる…?」

「…」部屋全体が今、静まり返っている

誰も正面の画面を直視できない

「今日はここで止めておくべきでしょうか?」若い男が周りを見回す

「少し止めて考える時間を取った方が解決策が見つかるかも…」

「ああ」男は床に顔を伏せる

「ここで止めておけ」

「待機室の候補者たちに伝達しろ」

周囲の空間は今、一つの大きな部屋

至る所に長いベンチが並び、人影が溢れている

誰も顔を上げようとせず

目を細めて互いを見つめ合い

唇を固く結んだまま

こつ…こつ…

「長らくお待たせして申し訳ありません!」若い男が群衆の前に立ち、手帳を手に言う

「皆さんが今見た通り…」

「現在のシステムに少し不具合が生じているようです…」

「安全上の理由により」

「本日はここで一時中断とさせていただきます」

「皆さんは各自のエリアへお戻りください…」

「システムが安定し次第すぐにお知らせします」

「ありがとうございました」

ひそひそ…ひそひそ…

群衆の間で小さな囁きが広がる

「もうこの件から抜けようぜ」

「ここ数日も同じこと言ってたよな」

「さっきの見たろ」

「みんな…」

「あのコクピットの扉をくぐるたびに…」

「全く割に合わない」

こつ…

「すみません!」一人の影が群衆から進み出て、手を高く上げる

「今日こそ私にやらせてもらえませんか?」

「もう待ちすぎました!」

「今のところそれは難しいです」若い男は手帳に目を落とす

「さっき聞いた通り…」

「俺にやらせろ!」少年は眉を寄せ、若い男をまっすぐ見つめる

「こんな理由で待たされすぎだ!」

「分かりました」若い男は軽く頷き、ページをめくる

「あなたの名前を教えてください」

「小林 蓮です」少年は目を見開き、手をゆっくり下ろす


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