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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
始まり – 試練を越える

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69/99

同期

ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!

赤い光が周囲の空間全体を覆い尽くす

画面上の数字が絶え間なく乱れ跳ねる

二つの曲線が徐々にずれていく大きなグラフ

…

ぱたぱた…ぱたぱた…

何度もキーを叩き続ける何組もの手

誰もが目の前の画面から目を離せない

そしてその全ての中心に立つ一人の男が、周囲を何度も振り返る

「どんな手段でも構わない!」

「早く接続を切断しろ!」

…

ぱたぱた…

「しかし強制的にやれば…」青い服の男が振り返りながら言う

「後々の影響が…」

…

「そんなことはどうでもいい!」男はガラス越しに向こう側を睨みつける

「責任は後で俺が取る」

「とにかく中にいる者を先に引き出せ!」

…

ぱたぱた…ぱたぱた…

「了解しました!」部屋全体が声を揃える

「緊急切断プロトコルを実行します」

「1号コクピットの電源は完全に切断されました」

「2号コクピットのシステム無効化を進めています」

…

…

「全工程完了!」数字が跳ねる画面から目を離さない視線たち

「1号コクピットのロックが解除されています」

…

「早くそこへ行け!」男がガラスに向かって手を伸ばす

……

だだだ…だだだ…

オレンジ色の服を着た一団が、向こう側のコクピットへ一直線に駆け寄る

手に大きな担架と、赤い十字の入った箱をいくつか抱えて

…

がちゃっ…

コクピットの扉がゆっくりと開かれる

白い煙が辺り一面に広がる

オレンジ色の者たちが口を押さえ、後ろへ合図を送る

そしてこちらに向かって響くいくつかの声

「気をつけて!」

「急げ!」

…

ずるっ…ずるっ…

手を繋ぎながら、オレンジ色の者たちが一人の人影をコクピットから引き出す

その身体は今、微動だにしない

顔は真っ青で、指は固く曲がったまま

目を固く閉じ、まつげにはまだ白い跡が残っている

…

…

はぁ…

ガラスの向こう側から、視線が絶え間なく追い続ける

「これで何度目だ?」男は眉を寄せ、椅子に腰を落とす

「なぜ俺たちは何度も失敗する?」

「結局、どこで間違えたんだ?」

…

こつっ…

「これをすべて中止すべきではないでしょうか?」一人の若い男が近づき、小さな手帳を手に言う

「これでもう30回目ですよ!」

「毎回、候補者たちは違う状態になってしまう」

「まるで…」

「こちらをからかっているかのようです」

…

「駄目だ」男は若い男に向かって手を伸ばす

「今の状況では…」

「敵の所在はまだ不明で…」

「第9隊と彼らのイージスからも何の情報もない…」

「このままネメシスを倉庫で眠らせておくわけにはいかない」

…

「しかし…」少年が手帳を男の方へ向ける

…

ぎゅっ…

「それは分かっている」男は拳を強く握りしめる

「だが今は…もう躊躇している時間はない」

「次の候補者を呼べ!」

…………………

すた…すた…

1号コクピットへ続く廊下から

金髪の少年の影がゆっくりと近づいてくる

片手で前髪をかき上げながら

唇が小さく呟く

「本当に役立たずの連中だな」

「これくらいのことで何もできないなんて」

「結局、俺だけが相応しいというわけだ」

…

がしゃん…

コクピットの蓋が固く閉ざされる

金髪の少年はゆっくりとヘッドギアを被る

すると内部のスピーカーから小さな声が響く

「あまり無理をなさらないでください」

「何か異常を感じたら、右手下の赤いレバーをすぐに引いてください」

「私どもが可能な限り迅速に救助します」

…

「分かった分かった」金髪の少年は目を閉じ、軽く首を振る

「早く始めろよ?」

…

「了解しました」外側の視線たちが画面を見つめ、軽く顔を見合わせる

「同期を開始します…」

「三…」

「二…」

…

「一。」

…………………………………………………………………………………..

ゆら…ゆら…

金髪の少年の目の前で、空間は今、真っ暗になる

至る所に不思議な光の粒が散らばり

まるで夜空の星座のような幾つかの痕跡

…

「これが同期なのか?」金髪の少年は周りを見回す

「大したことないじゃないか!」

…

「こんにちは」どこからともなく声が響く

…

「誰だ?」金髪の少年は顔をしかめて周囲を振り返る

「さっさと姿を見せろ!」

…

ふふっ…

「まあいいわ」声が少し小さくなる

「でも…もっと面白いじゃない…」

「あなたが私を見つけられたら?」

…

「ふざけるなよ?」金髪の少年は眉をひそめる

「こんな真っ暗なところでそんなゲームする暇はない」

「俺はここに来たのは…」

…

「知ってるわ」声が少年の耳元に近づく

「そして…」

…

「私はあなたみたいな人に結構興味があるのよ!」影が少年の耳元でそっと囁く

…

「だったら出てこいよ!」金髪の少年はくるりと回る

「そんなに恥ずかしがるなよ!」

…

「恥ずかしくないわけないでしょ!」光の粒が一ヶ所に集まり始める

「いきなりあなたみたいな人とペアを組まされて…」

「私だって心の準備が必要なんだから!」

…

すぅ…

「安心しろ」少年が光の集まる点にゆっくり近づく

「俺に悪い気はない」

「君が持ってるもの全部、俺に預けてくれればいい」

…

すっ…

「それだけで…」少年が光の粒の中心の顔に触れる

「俺たちはきっと何でもできる」

…

周囲の空間が徐々に形を変え

光が辺り一面を覆い始める

…

…

がががっ…

「そして今日…」空間の真ん中に音が響く

「人類全体の勝利を祝おう!」

……

がががっ…がががっ…

空間がさらに色を変えていく

金髪の少年は今、全く違う装いの服を着ている

周囲には将軍たちが次々と手を振り

祝福の言葉が響き渡る

「君がいなければ俺たちはできなかった」

「やはり君にしか成し得ない奇跡だ!」

「君の明るい未来に大きな期待をしている!」

「今後の研究プロジェクトでもぜひ協力してほしい」

……

がががっ…

今、金髪の少年の周り

至る所からマイクが突き出され

人々が押し合いへし合いしながら近づいてくる

「こちらを向いてください」

「どうやってやったのか教えてください!」

「どうしてそんなに突き進めたんですか!」

「何があなたを他の全員と違うものにしたんですか?」

…

すると一つの声が、全ての間に小さく響く

「あなたはどうやってあの暴走するイージスを制したのですか?」

…

「ただの機械じゃないか」金髪の少年は唇を少し動かす

「難しいことなんてない」

「頑張れば誰にだってできるさ」

…….

がががっ…がががっ…

今、周囲の光が金色に変わり始める

空間の至る所に赤いワインの瓶

そして女性たちの影が、金髪の少年の方を見つめている

…

すっ…

「今夜は俺たちのものだ」少年が女性たちに近づく

「一緒に楽しもうぜ」

……

がががっ…

空間が徐々に歪み始める

そして一つの声が全ての間に響く

「じゃあ私は?」

………………………………………………………………

…あは…はは…

コクピットの扉が今、大きく開いている

金髪の少年は笑みを浮かべ続け

目を見開き、髪を乱れさせ

唇が途切れ途切れに動く

「ゆっくり… 女の子たち…」

「ゆっくりだ…」

「誰だって…順番がある…」

…

…

はぁ…

ガラスの向こう側、画面の間で

男は鼻筋に手を当て、目を閉じる

「どうしてこうなる…?」

…

「…」部屋全体が今、静まり返っている

誰も正面の画面を直視できない

…

「今日はここで止めておくべきでしょうか?」若い男が周りを見回す

「少し止めて考える時間を取った方が解決策が見つかるかも…」

…

「ああ」男は床に顔を伏せる

「ここで止めておけ」

「待機室の候補者たちに伝達しろ」

…

…

周囲の空間は今、一つの大きな部屋

至る所に長いベンチが並び、人影が溢れている

誰も顔を上げようとせず

目を細めて互いを見つめ合い

唇を固く結んだまま

…

こつ…こつ…

「長らくお待たせして申し訳ありません!」若い男が群衆の前に立ち、手帳を手に言う

「皆さんが今見た通り…」

「現在のシステムに少し不具合が生じているようです…」

「安全上の理由により」

「本日はここで一時中断とさせていただきます」

「皆さんは各自のエリアへお戻りください…」

「システムが安定し次第すぐにお知らせします」

「ありがとうございました」

…

ひそひそ…ひそひそ…

群衆の間で小さな囁きが広がる

「もうこの件から抜けようぜ」

「ここ数日も同じこと言ってたよな」

「さっきの見たろ」

「みんな…」

「あのコクピットの扉をくぐるたびに…」

「全く割に合わない」

…

こつ…

「すみません!」一人の影が群衆から進み出て、手を高く上げる

「今日こそ私にやらせてもらえませんか?」

「もう待ちすぎました!」

…

「今のところそれは難しいです」若い男は手帳に目を落とす

「さっき聞いた通り…」

…

「俺にやらせろ!」少年は眉を寄せ、若い男をまっすぐ見つめる

「こんな理由で待たされすぎだ!」

…

…

「分かりました」若い男は軽く頷き、ページをめくる

「あなたの名前を教えてください」

…

「小林 蓮です」少年は目を見開き、手をゆっくり下ろす


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