頭痛の先に
がちゃん…がちゃん…
白い壁の間に、いつの間にか鋼鉄の柱が増えていた。
白い壁は今や分厚い鋼鉄の柱に覆われ
廊下中に響き渡る音
……
カンッ… カンッ…
床も変わっていた
タイルはもうなく
代わりに大きな金属板が連なって道になっている
……
ピタッ!
コウカが突然足を止め、長い廊下をじっと見回す
「ここまでで良さそうです」コウカの唇が小さく動く
……
ぽん!
「トガミ様」
コウカが俺の両肩を叩き、顔をぐっと近づけてくる
「これからは、会う人すべてに気をつけてください」
「絶対に一人でどこにも行かないで」
「そして一緒にいる相手は、必ず信用できる人だけにしてください」
……
「へっ?」
俺は体を固くし、肩を少し引く
「どうして?」
「急に…」
……
「約束してくれますか?」
コウカがさらに顔を近づけてくる
……
「コウカ、一体何が…」
俺は顔を逸らそうとする
……
ぐいっ…
「……」コウカが俺を睨みつける
……
「も、もうわかったよ!」
俺は目を閉じ、頭を後ろに仰け反らせる
「一人でうろうろしないし、見知らぬ人に付いていかないってことでしょ!」
……
ふぅ…
「……」コウカは俺の肩から手を離し、少し後ろに下がる
……
「了解しました」
コウカは目を閉じ、軽く頷く
「とりあえずはこの件は貴方に任せます」
……
「ったく…俺は子供じゃないのに!」
俺は腕を組み、顔を背ける
……
「今の状況では、そうした準備だけでは…」
コウカは手を俺に向け、目を細める
「実はまだ全然足りません」
「特に、貴方はもうあの人たちに目を付けられてしまいましたから」
……
「あの人たち?」
俺は首を傾げ、コウカを見る
「結局あいつらは誰なんだ?」
「どうして俺に目を付けるんだ?」
……
「彼らが目を付けているのは、貴方だけではありませんよ、トガミ様」
コウカは軽く首を振る
「彼らが本当に欲しいもの…」
……
「……は、貴方がさっきしたことです」
コウカは指で俺を指す
…………….
うーん…
「俺が…さっきしたこと…」
俺は顎に手を当て、天井を見上げる
……
はっ!
目が大きく見開かれ、体が凍りつく
頭の中に映像が次々と蘇る
ガラスが砕け散った廊下
闇に包まれた影
怪物の中に埋もれた瞳
そして、怪物を消し去るような光
……
ずーん…ずーん…
突然、頭の中に重い感覚が走る
唇を強く噛み、両手で頭を抱える
体がふらつき始める
すべての映像がぼやけていく
……
カチッ…ブゥン…
耳元で奇妙な音が鳴る
首の周りに異様な締め付け感
後頭部に冷たい感覚が広がっていく
……
「トガミ様」
コウカの声がすぐ近くで響く
「どうですか?
まだ辛いですか?」
……
「コウカ…」
俺は必死に目を開け、体を起こそうとする
「一体…何が起きたんだ…」
「さっきまで…俺は…」
……
そっ…そっ…
「もう大丈夫です」
コウカが優しく俺の頭を撫でる
「すべて落ち着きました」
「もう少しで、副作用は消えますから」
……
ずーん……
「副作用…」
俺は唇を動かし、両手で床を押す
「でも…あれは…一体…どこから…」
……
「貴方の能力からです」
コウカは両手を合わせ、背筋を伸ばして俺を見る
……
はぁ…はぁ…
「俺の…能力…」
俺は顔を上げ、コウカを見つめる
……
「再構築です」
コウカはまっすぐに俺を見つめる
「能力は、人によって形を変えます。」
「一番適した形へ。」
「そして恐らく…」
「貴方の場合、それは新しい変異体になっています」
……
「再…構築…?」
俺は体を起こし、壁に手をつく
「結局…何を言ってるんだ…」
……
「それが貴方の能力です」
コウカは微動だにせず言う
「……だから、狙われるんです。」
……
「今の貴方の状態では…」
コウカは周囲を見回す
「彼らもよく知っています」
「この力を完全に目覚めさせた者の代償を」
「だから…」
「これからは今まで以上に激しく動いてくるでしょう」
……
「それって…どういうことだ…?」
俺は唇を噛み、眉を寄せる
「今の俺は…」
……
コツ…コツ…
「とても弱いです」
コウカがゆっくり俺に近づく
「貴方の体はまだ能力に追いついていません」
「自転車を漕いで電車を動かそうとするようなものです」
……
かちり…
「だからこそ…」
コウカは俺の首から紐を外す
「この力を完全に制御できるようになるまで」
「絶対に一人でいないこと」
「そして…」
「この能力のことを、できるだけ多くの人に知られないように」
……
「…はい」
俺は小さく頷き、目が離せない
……………………………………………………………………………………………………………………………………………..
ジジジ…
ゴゴゴ…
長い通路の突き当たり
突然、広い空間が目の前に広がる
火花が激しく散り
巨大な鉄の塊をクレーンが吊り上げ
人が忙しく行き交い
巨大な装甲が至る所に並べられている
様々な奇妙な大きさのもの
……
そして、一番奥
俺の目は釘付けになる
他のどれよりも巨大な、赤と金の装甲
全身を分厚いロックで覆われたもの
……
ぴたり…
「興味がありますか?」
コウカが俺の方を振り返る
……
「あ、いや…」
俺はコウカを見て、苦笑いしながら後頭部を掻く
「ただ、昔を思い出してさ…」
「あいつと一緒にガンダム組み立ててた頃を…」
……
「まさか本当にこんなものが存在するなんて」
俺は巨大な機体に視線を戻す
……
ふっ…
「そうですか?」
コウカは小さく微笑む
……
コツ…コツ…
「急ぎましょう」
コウカは背を向け、奥の通路に向かう
「他にも、貴方を待っている人が何人かいますよ!」
……
「何人か?」
俺は首を傾げ、体を少し曲げる
……………
目の前の空間が徐々に狭くなっていく
分厚いガラスで仕切られた部屋
片側には人がぎっしり並び
もう片側には奇妙な二つの薬が水槽に沈められている
青い服の人々が画面をじっと見つめ続けている
……
「ここは一体…」
俺は目を見開き、周囲を見回す
……
「ただの訓練場ですよ」
コウカは眉を寄せ、群衆の方に視線を向ける
「そして…実験も兼ねて…」
……
チッ
「まだ何回試せばわかるんだろうね?」
コウカが小さく唇を動かす
「あの子は絶対にあいつらと同期なんかしないのに…」
……
「コウカ?」
俺はコウカをまっすぐ見上げる
……
「あ…すみません、トガミ様」
コウカは慌てて顔を戻す
「少し集中が切れました」
「何の話でしたっけ?」
……
ぽんっ!
「そうだ!」
コウカが軽く手を叩く
「これから貴方に会わせたい人がいるんです」
「貴方なら、あの子はきっと…」
……
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
部屋全体に赤い警告灯が点滅し始める
画面の数値が激しく乱れ
青い服の人々が一斉にガラスの部屋に向かって走り出す
「急げ!」
「接続を切断しろ!」
「手遅れになる前に!」




