いつも通りの一日…?
ぐっ…うっ…
目の前に広がるのは、闇に覆われた空間
両手が痺れて、動かすことすらできない
汗の一滴一滴が、体中を伝い落ちる
耳がぼんやりして、喉が詰まったように苦しい
…
こつん
突然、遠くから小さな音が響く
小さな波紋が、俺の視界に浮かぶ
…
おい…
「ハル。」背後から声がする
…
「ハル。」
…
「ハル!」
………
んん…
目がゆっくり開き、体を起こしていく
ぼさぼさの髪が視界を覆う
…
「ねえ、ハル。」後ろから聞き慣れた声がする
「ハル!」
「起きたなら返事しなよ!」
…
うぅ…
両手でゆっくり髪をかき上げる
目が半開きのまま、体を後ろへ向ける
唇が小さく動く
「レン…なのか?」
「結局…何が…起きたんだ?」
…
「は?」レンの影がぼんやり浮かぶ
「まだ夢見てんのかよ?」
「たった数分前だぞ!」
…
「数…分…」俺は軽く首を回して周りを見回す
「何が…起きたんだ…」
「みんなは…どこに行った…」
…
「どうしたんだよ?」レンの影がだんだんはっきりしてくる
「みんな今めちゃくちゃ大変なんだぞ!」
「みんなの救世主が急に寝てんじゃねえよ!」
…
「そうだ…思い出した…」俺は片手を額に当て、目を細める
「俺たち…訓練中だったよな…」
「そしたら突然…あの野郎が…」
…
「まあ、そう言っても間違いじゃねえな。」レンの影が視線を逸らす
「たぶんクロハさんの影響だろ。」
「まあいいや。」
「さっさと目を覚ましてくれ。」
…
こつん
俺は手探りで周りを探る
小さな物が当たる感触と共に、軽い音がする
妙に馴染みのある感覚
…
「どこだ…」手があちこちを這う
…
ぱさっ
「さっきからどうしたんだよ?」レンの影が白い紙の後ろから現れる
「まさか答え全部忘れたとか言うんじゃねえよな!」
…
「え?」俺の目が大きく見開かれ、体が凍りつく
…
「どうした?」レンが首を傾げて俺を見る
「そんなにおかしいか?」
…...
ガタッ!
教室の真ん中、みんなが顔を伏せている
黒い文字がびっしり書かれた答案用紙が机に並ぶ
俺は椅子から跳ね起きた
視線をキョロキョロさせ、手が制服に触れる
見たこともない制服。
でも、妙に馴染みがある
…
「トガミさん。」教室中に声が響く
「わざわざ全クラスに報告しなくてもいいですよ。」
…
「…」俺はゆっくり振り返り、目を見開く
…
黒い机が置かれた教壇の隅
白いチョークで「テスト」と書かれている
見覚えのある影が、片手で顎を支え
もう片方の手でページをめくっている
「終わったなら他の生徒にもやらせてください。」ハヤマ先生が俺をチラリと見る
……………………………………………………………………………..
「リーン♪」
陽光が隅々まで差し込む中
チャイムの音が空間に響き渡る
本が綺麗にしまわれ
長い列が教室から続いて出ていく
……
ぐーっ~
「助かったー!」レンが両手を組んで思いっきり伸びをする
「今日はもう終わりかと思ったわ!」
「また飯おごってもらうな!」
…
コツ…コツ…
俺は廊下を歩いていく
人ごみをすり抜けながら、視線を絶えず動かす
「ねえ、レン。」
「結局…何が起きたんだ?」
「みんなどこに行った?」
「あの野郎…結局…あいつ…」
…
「は?」レンが目を丸くして俺を見る
「まだ寝ぼけてんのか?」
「それともまだ中二病全開か?」
…
うっ…
「…」俺は顔を背け、手を額に当てて顔を歪める
…
ぽんっ
「ほら、早く覚醒しろよ」レンが俺の背中を叩く
「このままじゃ…」
「学食の行列に勝てねえだろ!」
…
「まあ…そうだな…」俺は前を見て、手をゆっくり下ろす
………………………………………………………………………………….
がやがや…がやがや…
周囲は人で溢れかえっている
各カウンターに行列ができ
机は座る人で埋まっている
…
「今日は急に人が多いな。」レンが後頭部に手を当てて周りを見回す
「どこも満席じゃん。」
…
「別にいいよ」俺は微笑んでレンの方を見る
「なんか買えたし。」
「どこで食べても同じだろ。」
…
フフフ…
「どこでも…いいのか…?」レンが唇を歪めて俺を横目で見る
…
「えと…それは…」俺の顔が青ざめ、体が縮こまる
………………………………………….
ドン!ドン!
真っ白な服を着た人影だらけの部屋
サンドバッグがあちこちで揺れている
汗の滴が床中に飛び散っている
……………
「これ…」俺の唇がピクッと動く、指がその部屋を指す
「マジかよ?」
…
「だって、お前がどこでもいいって言ったじゃん。」レンが首を傾げて目を丸くする
…
「でも…せめて…」俺の顔が強張り、部屋をチラ見する
「せめて…選ぶべきじゃ…」
…
「いいじゃん!」レンが手をブンブン振って、目を細めて笑う
「どうせ通り道だろ?」
……
たたたっ...
遠くから足音が聞こえてくる
…….
「通り道?」俺はレンを見て、顔が強張る
…
ぽん…
「ほら、もう隠すなよ!」レンが明るく笑って俺の肩に手を置く
「みんな知ってるって。」
……
ぱたぱた…
足音がどんどん近づいてくる
……
「知っ…知ってるって何を?」俺の肩が固まる
…
はぁ…
「まだとぼけてんのかよ!」レンが肩を落として顔を伏せる
「いいか。」
…
「武道大会の後から気づいてたぞ。」レンが背中を丸めて俺を見上げる
「その後も何回かあの野郎が来てただろ。」
「体育祭の時も。」
「文化祭の時も。」
…
「結局…お前は何を…言ってるんだ…」俺の体が縮こまり、目を逸らせない
…
「つまり…」レンが目を細めて眉を下げながら
「お前と…」
「…ヤマザキさんのことだよ。」
……………………………………….
ぎゅむっ!
一つの体が俺をがっしり抱きしめる
白い服が視界を埋め尽くす
赤い髪の束が目の前を過ぎる
…
「ハルくん!」頰が相手の体に密着する
「どれだけ待たせたと思ってんの?」
「めっちゃ怒ってるんだからね?」
…
俺は必死に目を見開き
体をよじって相手を見ようとする
「ツメコ…さん…?」
…
ぎゅーっ…
「もう…」ツメコさんがさらに強く抱きつく
「またそうやって呼ぶの?」
「そんな呼び方やめてよ!」
「約束した通り呼んでよね。」
…
「なあ…お前ら…」レンがゆっくり手を上げて目を細める
「悪いけど邪魔してるけど…」
「周りをちょっと気にしてくれないか?」
………
ツメコさんの体がゆっくり俺を離す
顔を耳元に近づけて
「後で続きね♪」
…
「…」俺の顔が真っ赤になり、頭が熱くなる
…
…
プシュー
口が勝手に開いたまま
白い煙が体中に薄く広がる
…
周囲の空間が、急に暗くなっていく
緑色のラインがあちこちに浮かび上がる
そして一つの声が、俺の意識を横切る
「気絶した者たちを全員、早くここから連れ出せ!」




