煙の中へ
さらさら…さらさら…
陽の光が金色に芝生を照らしつける
木の枝が風に揺れる
黄金の葉が空中に浮かんでいる
…
ぎゅっ
四方から集まる視線の中で
額に汗が長く伝う
一人ひとりの目が、人形から離れない
そして握りしめた手が、武器を強く締め付ける
………
「ねえ、春…」蓮が訓練中のグループを指差す
「見てよ、綾野さんが誰の隣にいるか。」
…
「ツメ子さん!?」俺が目をカッと見開き、肩を引く
「あの二人…ペアなんだ?」
…
「山崎さんの性格じゃ…」蓮がにやりと笑う
「綾野さん、ついていけるのかな?」
………………………..
「開始!」遠くのテーブルから声が響く
…………..
たっ…たっ…
人形たちが受験生に向かって進み始める
赤く染まった目、ナイフのような指
そして銃口がまっすぐ向けられる
…
ダダダダダ…
金色の光が訓練場全体に広がる
人形ごとに火花が飛び
土埃が空高くに舞い上がる
…………
ガキン!
「見てなさい!」ツメ子が足を高く振り上げ、人形に向かって蹴り込む
「女だからってナメないで!」
…
ガン!ガン!ガン!
拳が連続で繰り出され
足が次々と蹴りを放つ
水滴が空中に浮かび
ツメ子の顔に満面の笑みが広がる
…….
「あの娘…」軍服の女性がペンを指す
「かなり有望ね?」
「誰かの助けを待たずに、自分から突っ込んでいく…」
「後方への負担を劇的に減らせる動きだわ。」
…
「そうとも限らない。」鋼原さんが軽く首を振る
「戦場でただ突っ込むだけが賢いわけじゃない。」
…
「どういう意味ですか、中佐?」女性が首を傾げ、目を丸くする
「私には彼女が人形たちをかなり押さえ込んでるように見えるけど。」
…
すっ…
「よく見ててください。」鋼原さんがツメ子たちのグループを指差す
「人間には誰にでも限界がある。」
「たとえ彼女が後方に時間を稼いでも…」
「後方がそれを活かせなければ…」
……
ゴン…ゴン…
ツメ子の体が急に前進を止める
肩が徐々に下がり、手が遠くまで届かなくなる
足がゆっくり後退し始める
…
たっ…たっ…
人形たちが徐々に前へ進む
手が爪を伸ばしてグループに向かう
……
ヒュッ…
「山崎さん!」綾野さんが石を人形に向かって投げる
「早く下がって!」
…
ガキン!
石が一人の人形の頭に当たる
ツメ子の目が周囲をぐるっと見回す
上空で青く光るドローン
…
バン!
青い光の柱が石に向かって真っ直ぐ落ちる
黒い煙が一気に広がり
金色の火が空気中にちらつく
…
ズザァァァッ…
地面に二本の長い線が引かれる
土と石と草が四方に飛び散る
ツメ子の目が固く閉じられ、腕が胸の前で交差する
……
「ふむ…」鋼原さんが顎に手を当て、唇を軽く尖らせる
「悪くない…でも今失った時間をどう取り戻すつもりだ?」
……
ぽん…
「山崎さん。」綾野さんがツメ子の肩に手を置く
「このままじゃダメだよ。」
…
「何言ってるの?」ツメ子が目を細めて見る
「これっぽっちで耐えられないなら、何ができるっていうの?」
…
「周り見てよ…みんな…」ツメ子の唇が少し震える
「ねねちゃんも…しのみちゃんも…小林さんも…」
「春くんまで…また…どんどん遠くに行っちゃう…」
…
「そんなこと思ってるわけないよ!」綾野さんが目を大きく見開く
「誰も見捨てたりしないって!」
…
「見てよ!」綾野さんが俺たちの方を指差す
「みんなここにいて、見守ってるじゃない!」
「僕みたいなのだって…一緒にいてくれて…外したりしない…」
…
「だからこそ…」綾野さんが人形たちを指差す
「最高の演技を見せてあげなきゃ!」
「がっかりさせちゃダメだよ!」
……
たっ…たっ…
黒い煙が徐々に薄れ…
足音が再び響き出す
反射する光が周囲を照らす
…
ぐしゃっ…
「ちくしょう!」綾野さんが頭をかく
「これで十分だと思ってたのに!」
……………
「ねえ…」ツメ子が人形たちを振り返る
「さっきのあれ…もう一回できる?」
…
カラカラ…
「あと三個しかない…」綾野さんがポケットから石を取り出す
「時間なくて、これしか作れなかったの。」
…
ガチャ…
「これで十分だよ。」ツメ子が武器を人形に向ける
「わかった。」綾野さんが頷く
…
「でもこれも必要でしょ!」綾野さんがマスクを差し出し、にっこり笑う
「この煙、結構きついんだから。」
…
「君…じゃなくて、綾野さん…」ツメ子が振り返り、目を細めて笑う
「ありがとね!」
………
タタタッ…
両腕を後ろに伸ばし
ツメ子の全身が前へ飛び出す
ドローンが周りをぐるぐる回る
…
ヒュッ…
黒い石が人形に向かって飛ぶ
ドローンが徐々に青く変わる
…
ドォン!ドォン!ドォン!
青い光の柱が空から落ちる
黒煙がすべてを覆い
人形たちがぴたりと止まる
そしてツメ子が煙の中に突っ込む
…
……
ゴール地点、金色の光が広がる場所
誰も踏み入れていない空間
黒煙がゆっくり広がっていく
…
シュッ…
煙を切り裂き、手で顔を覆い
鮮やかな赤い髪と、細められた目
止まらない足
…
ギュィン…
煙の中から手が伸びる
白い爪が少女に向かって飛ぶ
陽光があちこちで反射する
…
「ふざけないでよ!」ツメ子が振り返る
「そこで大人しくしてなさいよ?」
…
ガンッ!
ドローンが腕に突っ込む
人形に直撃し
煙の中に押し返す
…
「早く!」綾野さんが両手を口に当てて叫ぶ
「できるよ、絶対!」
…
ガシャーン!
金色の光が一瞬で消える
周りの人々が一斉に立ち上がる
ガラスの破片が四方に飛び散る
………
コツ…コツ…
「あっちの二人…」鋼原さんがツメ子たちのグループを指す
「さっさとこっち来い!」
…
「…」ツメ子と綾野さんが顔を見合わせる
…
「まだ何待ってるんだ?」鋼原さんが目を細める
「一日中時間があるわけじゃないぞ!」
「早く来て名前言え!」
「次のグループが待ってる!」
…
パンッ!
「できたね?」ツメ子が手を差し出し、にっこり笑う
「うん!」綾野さんが笑って手を合わせる
………………………………………………………………………………………………………………..
ざわざわ…ざわざわ…
周りの群衆が互いに顔を見合わせる
囁き声が空気に混じる
視線が徐々に、弾薬だらけのテーブルへ向かう
…
「まさかあんなやり方で通るなんて?」
「ちょっと卑怯じゃない…?」
「なんで俺らもっと早くやらなかったんだ?」
「あっちまだ爆薬残ってるぞ、急げ。」
………
「まさかあんな手を使うとはね?」蓮が笑って綾野さんたちのグループを見る
「俺は全部倒さないとダメかと思ってたのに。」
…
「課題にそんなこと書いてなかっただろ。」俺が周りを見回し、にやりと笑う
「一番いい方法を選んだだけさ。」
…
「誰かに悪影響与えられたわけじゃないよな?」蓮が別の方向を向く
「いつも近道選ぶくせに…普通にやらないんだから…」
…
「悪影響って何だよ?」俺が目を細める
「知らねーよ!」蓮が背を向ける
……
ぽん!
「小林さん!」白川さんが蓮の肩を叩く
「ちょっとナイフ貸して!」
…
「いいけど…」蓮が目を丸くしてナイフを渡す
「でも…何に使うんだよ…」
…
「すぐ分かるよ。」白川さんが微笑む
…………
シャッ…シャッ…
汗が顔を伝う
白川さんの目が猟弾を凝視する
耳が周りの音を拾い続ける
…
カチャ…カチャ…
銃が部品ごとに分解される
並べて置かれ、列をなす
爆弾はもう何も残っていない
部品が二つの山に分けられる
…
コト…コト…
弾が二つに割られる
並べて置かれ、列をなす
中身は空っぽ
小さなビー玉が袋に収まる
黒い粉が布の上に山盛り
......................................................................
タッタッ…タッタッ…
次のグループが前へ進む
武器を握りしめ、腰に爆弾を満載
唇に笑みを浮かべ、目を細めて人形を見る
……
「開始!」テーブルの方向から声が響く
……
バシュッ!
爆弾が空中に浮かぶ
白い光が四方に広がる
…
シューーー
白煙が次々と立ち上る
人形たちを覆い尽くす
…
ザッ…ザッ…
マスクが顔を覆う
列が前へ突進する
武器を煙に向ける
…
…
ドガッ!ブワッ!
白煙が徐々に晴れていく
光が穏やかになる
人々があちこちに倒れている
人形たちは背筋を伸ばして立つ
最後の標的がまだ輝いている
………
「甘すぎる!」鋼原さんが腕を組み、目を細めて列を見る
「ただ真似するだけじゃ、何もできないぞ。」
…
「どういう意味ですか、中佐?」女性が顔を上げる
「同じものを使っているのに…」
「あの子たちはなぜ失敗したんですか?」
…
ククッ…
「戦場に出たことがないから分からないんだろう…」鋼原さんが笑う
「敵は常に変化し、学ぶ。」
「人形たちはそれを忠実に再現してるだけだ。」
…
ゴトッ…
「それに…」鋼原さんがマスクを女性に投げる
「あの二人は…かなり準備してた…」
「石まで追加で作っちゃうんだからな!」
…
「これって…」女性が目を大きく見開き、マスクのレンズを見る
「信号発信装置?」
……………………………………………………………………………………………………………
タッタッタッ…
青髪の影が俺たちの方へ近づく
唇に笑みを浮かべ、手を振る
…
「ただいまー!」綾野さんが俺たちを見て目を丸くする
「見た…? 今の…」
…
「もちろん見たよ!」蓮がにっこり笑う
「二人ともすごい小細工だったな!」
…
「でも、綾野さん…」俺がテーブルを振り返る
「さっき使った石…一体どこから…」
…
「自分で作ったんだよ!」綾野さんが首を傾げ、テーブルを指差す
「火薬ちょっとと、あそこの部品で作れるんだ!」
「お父さんが教えてくれたの!」
…
「家って…一体何の家なんだよ…」蓮が目を細め、後ずさる
…
はは…
「普通だよ…」綾野さんが唇を曲げる
…
「それより、十神さん…」綾野さんが俺を見る
「聞きたいことがあるんだけど…」
…
「君…」綾野さんが目を細め、肩を落とす
「今まで…何人の女の子口説いたの…?」
…
「口説いてないって!」俺が首を振る
「俺は一人だけだよ!」
…
「そうなの?」綾野さんが女子たちの方を見る
「学校の時、結構モテてたって噂聞いたけど…」
「今も続いてるみたいだし…」
…
くいっ…
「それじゃ足りないよ!」蓮が綾野さんを引き寄せ、俺に背を向ける
「こいつ…また新しく一人増やしたばっかだぞ…」
…
「本当…? 十神さん…」二人が目を細め、顔を青ざめさせて俺を見る
「自分じゃ持て余さない?」
…
「だから違うって!」俺が両手を大きく振る
…
「今気づいた…」綾野さんが周りを見回す
「白川さんどこ行った?」
…
すっ…
「クラス委員?」蓮が訓練グループを指す
「もうあいつの番だよ!」
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コツ…コツ…
ペア同士で話し込む中
茶髪の少年が静かに横を通り過ぎ、全身に装備を満載
…
目の前に、見覚えのある顔
黒髪の美しい少女、手にラップトップ
…
「いつもこうしてペアになるよね?」黒髪の少女が微笑む
「どこに行っても。」
…
はぁ…
「君が言うな、黒美。」白川さんが頭に手を当て、微笑む
「でも知らない人と組むよりマシだろ?」
…
「うん、そうだね。」朝霧さんが手を口に当てる
「他の人と組んでたら、今頃どうしようもなかったかも。」
……
「でも、黒美…」白川さんがラップトップを指す
「本当にあれを使うつもり?」
…
えへへ…
「大丈夫だよ!」朝霧さんが首を傾げて笑い、周りを見る
「私、ああいうの向いてないし…」
「それに…」
…
ぎゅっ…
「なつめがいるんだもん! 心配ないよ!」朝霧さんがラップトップを抱きしめる




