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静時の流れ - 潮騒の誓約  作者: Minateru
残響の果てに

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4/35

混沌の灰燼より

ドン、…ドン、…ドン…

月光があらゆる場所を照らし…

赤い灯りがすべての路地に広がり…

白い鎧の軍団が、大陸の向こう側へと進軍していく…

ガルルル…ワンワン!

ドタ…ドタ…ドタッ!

一匹一匹の犬どもが、顔を歪めてこちらを睨みつける…

……

「きゃああっ!」

「やめろ!来るな!」

「一体何が起こってるんだよ!」

「さっさと俺から離れろ!」

「軍はどこだよ!」

「助けてくれ!頼む!」

人々が群れをなして、狂ったように四方八方に逃げ散る…

……

ザッ!

軍団の中央から、一本の腕が空高く掲げられる…

ウィィィン…

チリチリ…

軍団が足を止め…

真正面に武器を構える…

青い光が軍団全体を覆い尽くす…

ドゥン!ドゥン!ドゥン!

輝く光の奔流が夜の闇を切り裂く…

ドドドドッ!

ドシャ…アアッ!

周囲の家々が一瞬で瓦礫の山に変わり…

壁の破片が四方八方に飛び散る…

煙と埃が空間を埋め尽くし…

黒い煙の柱が四方から立ち昇る…

……

ズン……ズン……

“PLEASE REMAIN CALM”

“PLEASE REMAIN CALM”

壊された道を踏みしめながら…

巨大な機械どもがじりじりと近づいてくる…

グサァッ!

槍の穂先が機械どもに向けられる…

“PLEASE… REMAIN… CALM…”

“PLEASE……….”

ジジジ……

バチ…バチッ!

火花が空中で爆ぜ…

遠くで機械どもが動きを止め…

体中に無数の穴が穿たれている…

……………………………………………………………………………………………………..................

ダダダッ…ダダダッ…

「何が…起こってるんだよ…」僕は目を限界まで見開き、周囲を見回す

「一体…あいつらは何なんだ…」僕は唇を震わせる

「シノミ…」僕はよろめきながら足を進め、彼女の後を追う

「待ってくれよ…」

ギュッ…

「…」シノミが僕の手を痛いほど強く握り、前へ突っ走る

「なんで…僕たちは…逃げなきゃいけないんだよ…」僕はシノミの背中を見上げて呟く

……

ドォン!

家々の間に黒い煙の柱が一気に立ち昇る

金色の光が区域全体を覆い尽くす

レンガと石の破片が四方に飛び散る

煙の向こうから青い光の線が現れる…

……

バタ…バタ…バタバタ…

「もう時間がないんだ!」シノミが前だけを見て叫ぶ

ギュウッ!

「急げ!」シノミが僕の手をさらに強く締め上げる

「絶対に…君を巻き込むわけにはいかない…」シノミが唇を震わせる

「絶対に…君をあんな目に遭わせるわけにはいかない…」

………………

ぎゃああ…ぎゃああ…

遠くから絶叫が響き渡る…

遠くの煙の柱の間から

散らばった瓦礫の山の間から

キッ!

僕の体が突然凍りつくように止まる

視線があの煙の方へ吸い寄せられる

「ハル…」シノミが目を限界まで見開いて振り返る

「どうして…止まるのよ…」

すっ…

「あそこに音が…」僕が煙の方を指差す

「誰かが…叫んでる…」

きゅう…

「でも時間がないの!」シノミが振り向き、僕の手首を痛いほど握りしめる

「確かに誰かいるかもしれないけど…」

「今は本当に…そんな時じゃない…」

「だから…」シノミが顔を上げ、目を血走らせて僕を見る

「今だけは、ここから逃げなきゃいけないの」

「でも…」僕がシノミを見る

「もしあれがレンだったらどうする?」

「石川さんだったら?」

「ケイだったら…どうするんだよ?」

「ありえない」シノミが僕をまっすぐ睨みつける

「三人とも完全に逆方向なんだから、そんなわけないでしょ!」

「だから行くよ!」シノミが僕の体を強引に引っ張る

………

遠くの煙の中から

「お母さん…」

突然、か細い声が響く

「お母さん…お母さん…」

………

ぐっ…

「ごめん…」僕がシノミを見る

「僕には…無理だ…」

「こんな風に見てるだけなんて…絶対に無理だ!」

ぎゅ…

「やめて…」シノミが体を折り曲げるように低くする

「お願い…」

「そんなこと…やめて…」シノミが顔を伏せ、震える

「もう…耐えられない…」

「嫌だ…やめてよ…」

ぽろ…

僕の手の上に熱い涙が落ちる

「そうしたら…君も…他のみんなと同じになっちゃう…」

そっ…

「大丈夫だよ…」僕がそっとシノミの頬に触れる

「すぐ戻るから…!」

ザッ…

握られた手が離れる

僕の背中が煙の中へと全力で突っ込む

がくっ…

「どうして…」シノミが膝を崩して地面に倒れ込む

「どうして…あんなに必死で止めようとしたのに…」

「何をしても…」

「この輪は回る…このループは…また来る…」

「お母さん…」シノミが空を見上げて呟く

「今…どうすればいいの…」

「きっと…みんな…同じ気持ちだった…」シノミが唇を震わせる

「あの人の背中を見送るとき…」

「諦めないで…」シノミの耳に、かすかな声がささやく

………………………………………………………………………………………………..........................

ガラガラッ…

レンガと石があちこちに崩れ落ちる

ザザッ…ザザッ…

崩壊した屋根を越え…

濃い煙を突き抜け…

僕の足が全力で前へ突き進む…

「おーい!!!」僕は手を口に当て、周囲に絶叫する

「誰かいるのか!?」

「声出せよ!」

………

わーん!!!

遠くから泣き叫ぶ声が響く

ゆさゆさ…ゆさゆさ…

「お母さん…お母さん…」

「早く起きてよ…お母さん…」

煙が徐々に薄れていく…

小さな体がはっきり浮かび上がる…

涙でぐしゃぐしゃの目が大きく見開かれ、下を見下ろしている…

両手で石の下の女性を必死に握りしめている…

………

ザッ…

「どうしたんだ?」僕が近づく

「…」子供が振り返って僕を見る

「お母さんが…お母さんが…」子供の目が激しく震える

「わかった…」僕が巨大な石に両手を伸ばす

「下がってろ!ここは俺に任せろ!」

ぐっ…

「よし…」

両手で石を死に物狂いで握りしめる

背中を丸め、膝を深く落とす

歯を食いしばり、奥歯を軋ませる

……

すっ…

「おねがい…」小さな手が僕に触れる

「もういい…間に合わない…」女性が血まみれの顔を必死に上げて僕を見る

ちょい…

「おねがいよ…」女性の指が震えながら伸びる

「この子だけでも…ここから連れてって…」

「あいつらが来る前に…」

……

ギュッ…ギュッ…

「嫌だ!」僕が両手をさらに強く握りしめる

「そんなの絶対に無理だ!」

「このまま見捨てて行くなんてできるわけねえ!」

ぐっ…ぐっ…

歯をギリギリと食いしばり…

目を血走らせて空を見上げ…

両手で石を死に物狂いで握りしめる…

「もう…やめて…」女性が弱々しく僕に手を伸ばす

「無理…よ…」

「おねがい…」女性が必死に目を開けようとする

「全てが…手遅れになる前に…」

ぐっ…

「そんなこと言うなよ…」僕が必死に引っ張る

「やってみねえと…わからないだろ…!」

………

ずり…

石がわずかに動き出す

突然、隣に人影が現れる

「一人じゃ絶対に無理でしょ?」かすかな笑みを浮かべて僕を見る

「シノミ!」僕の目が限界まで見開く

「どうして…君が…」

「まさか君を置いてくわけないでしょ?」シノミが首を軽く傾げる

「ただ…」シノミが小さく微笑む

「いつもの我儘なだけよ…!」

………

「おい!!!!」聞き慣れた声が響き渡る

「お前らどこにいやがるんだ!」煙の中から人影が飛び出す

ザザッ…ザザッ…

「やっと見つけたぞ!」汗と埃まみれの顔が現れる

「探し回ったんだからな!」

「レン?!」僕が振り返り、目を限界まで見開く

「なんでここに…」

「心配で探しに来たに決まってんだろ!」レンが俺たちを指差す

「みんなもう避難所に行っちまったぞ!」

「お前ら二人だけどこにもいねえんだよ!」

「もう時間ねえ!」僕が石を睨む

「来たらさっさと手伝え!」

「何だこの状況は!」レンが目を剥いて石を見る

「小林さん、後で説明して!」シノミがレンを振り返る

「今はとにかく手伝って!」

……

ぐら……ゴト…

石がさらに大きく動き出す

……

「説明なんかいらねえよ、田中さん!」レンがニヤリと笑う

……

ゴトッ…

石が横に転がり落ちる

……

「要するに…」レンが僕を指差す

「またこいつの余計なお世話癖が爆発しただけだろ?」

「…」シノミが小さく僕を指差す

「ハル…」レンが目を細めて僕を睨む

「そんなことばっかしてたら、いつかマジで彼女取られんぞ!」

「まだまだだ…」僕が唇を震わせる

「そんなこと絶対にさせねえよ!」僕が顔を上げ、レンを睨み返す

「誰にも…絶対に触れさせねえ

……

「…」シノミの顔が真っ赤になる

「ハル…」シノミがこっそり僕を見る

「今じゃなくても…いいよね…?」

……

「はいはい…」レンが軽く頷く

「そんな大声でみんなに聞かせる必要ねえだろ!」

「今は手伝え!」レンが女性の腕を自分の肩にかける

「よし!」僕ももう片方の腕を肩にかける

「行こう、坊や!」シノミが子供に手を差し伸べる

「もう大丈夫だから…!」

……..................................................................................................................................................................

どす…どす…

濃い煙を突き抜け…

石だらけの道を踏みしめ…

俺たちの視線は遠くの灯りへと向かう…

「どうして…」女性が唇を震わせる

「どうして…あなたたちがこんな無茶を…」

「私たち…他人なのに…」

「私を連れてったら…みんなを遅らせるだけなのに…」

「何言ってんだおばさん!」レンが女性を振り返って怒鳴る

「もうその子と一緒にいたくねえのかよ?」

「ここで死んだら誰がこのガキを育てるんだよ!」

「それに…」レンが僕を見る

「人を助けるのに理由なんかいるかよ?」

ふふ…

「ネネちゃんが聞いたら、絶対自慢しまくるだろうな」シノミが苦笑しながら俺たちを見る

「絶対ネネに言うんじゃねえぞ!」レンが目を吊り上げる

「知られたらまた学校で前みたいに何度も何度も言われんだからな!」

「突然作文が異常に高得点取った時のやつ?」僕が額に手を当てる

はぁ……

「あれはまだマシな方だ…」レンが頭を垂れる

「たまたまテストが昼のニュースレポートと同じだっただけで…」

「それ以外にも山ほど…」

……………………………………………

ガンッ!!

すぐ横に巨大な煙が爆発的に上がる…

細かい埃と小石が四方に飛び散る…

槍の穂先がゆっくりと姿を現す…

地面に深い亀裂が刻まれる…

「どうして…いつもこんな時に…」シノミが唇を噛みしめる

うぃぃん……うぃぃん……

俺たちの視線がゆっくりと後ろへ

煙の中から青い光がはっきりと浮かび上がる…

白い鎧の腕から光が放たれ…

小さな雷が周囲を走る…

じじ……

俺たちの目が限界まで見開く…

光の奔流が襲いかかってくる…

………

ドォォン!!

煙が爆発的に巻き起こる…

一人の人影が真正面に立ち塞がる…

金色に輝く鉄のガントレットを構え…

コートがはためき、紋章が露わになる…

翼と星の…

「困った時は俺に相談しろって言っただろ」人影が俺たちを振り返る

「黒鋼さん!!」僕の目が限界まで見開く

「説明なんかいらねえ!」黒鋼さんが灯りの方向を指差す

「さっさと避難所へ行け!ここは俺一人で片付ける」

「でも黒鋼さん、あれは…」僕が身を乗り出す

「心配すんな!」黒鋼さんが軍団を真正面から睨みつける

「あの女性はもう限界だ!」

「早く行け!」

ドタ…ドタ…ドタッ…

「はい!」俺たちは灯りの方向へ全力で走り出す

………………

ガンッ!

「待たせちまったな」黒鋼が両手のガントレットを激しく打ち合わせる

「全員まとめてかかってこい、このクソ海産物どもが!」


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