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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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暴風雨が来たりて2


「さて、では都会にでもくり出そう」


 高級車の中での話。いの一番に昴先輩が述べ奉った。駅から電車で行くところを、普通に車を回す辺りが酒奉寺。いや皮肉では無く。


「まずはアイスでも食べようか。食事はレストランで、その後は服を見よう」


 既に決定事項らしい。ここら辺の差配は恋愛上級者。「誰が」と「何を」を勘案しなければ……ではあれども。


「結局華黒も来るんだね」


「兄さんと酒奉寺昴を一緒の檻には入れられませんよ」


「松島ト〇子的な?」


「それです」


 名誉なのだろうか? あるいは不名誉なのだろうか? どちらでもありどちらでもなし。


「しかしおっぱいが在るとはいえ、君は本当に女子かい?」


 ジロジロと昴先輩は九十九を見やる。


「豊胸手術をした男の可能性も……」


「無いね。匂いで分かる」


 アンタのその嗅覚は動物レベルですか?


「うーん。僕の子を孕ませたいんだけど性別的に無理ではあるし」


「そんなことを考え申して?」


 普通に九十九は引いていた。慣れれば普通にスルーできるんだけど、それも初対面の彼女には無理な話か。たしかに活発系美女の昴先輩は、男にも女にも惚れられる中性的な美貌の持ち主だ。その点を鑑みて、女性であることを疑っているのだろう。


「何なら女性器でも見せようか?」


「魔眼持ちは此処にはいません由」


「それもそうか」


 何故納得した? ちょっと九十九の差配が不気味に思える僕だったり何だったり。


「ルシールくんと黛くんは?」


「二人でデートの御様子で」


 メッセを見せる。


「手は出してないよね?」


「出してたら二人はこの世に居ませんよ」


 華黒の攻撃性は、そこに於いては容赦がない。


「結局、統夜から聞いたので?」


「そう言ったつもりだけどね」


 車は走るよ何処までも。


「アレは何と?」


「在る意味で真っ当な恋心を試せる存在と」


 美少女顔で男な僕。


 イケメンで女な九十九。


 僕らは対照的で、その上で僕と九十九のどちらを選べるか……との禅問答なのだろう。そこら辺の空気が読める奴でもあるけど、昴先輩の雑食性はその上を行っているっぽい。


 オンマユラキランデイソワカ。


「だいたい真白くんはまた怪我をしたのだろう?」


「糸は取れましたよ」


「縫合するだけでも一大事だよ」


「貴方がソレを言いますか!」


 華黒が吠えた。たしかに以前にも似たようなことはあって、昴先輩がトリガーではあったけども。あの時ほど純情な昴先輩を、僕は他に見たことがない。


「ま、過去は過去さ」


「現在に繋がりますけどね」


「だから反省して次に活かすべきだろう」


「本当に反省しているので?」


「少なくとも華黒くんが否定できない程度の自責感は持っているつもりだよ」


「つまり首を掻ききって死ぬと?」


「そんなことを求めるのかい?」


「兄さんを傷つけたんです。素直に死ねるだけマシだと思いなさい」


 華黒もマイオトロンを使わなかったっけ? たしかに傷は付けてないけど。ていうかこうなると黛の凶行は墓まで持って行くしか……。


「うーん」


「兄さんは何を悩んでいるので?」


「別段普遍的なことで」


「私との愛ですか?」


「さてね」


「私との愛かい?」


「華黒を挑発しないでください」


「いや、存外に真白くんと居る華黒くんは乙女になるのでね」


 乙女ね。処女《おとめ》ではないんだけど……まぁそこはいいか。高速道路に入る。


「まだ大学では女性を漁っているので?」


「とりわけ愛嗜好は不滅だよ」


 その情動を滅して欲しいのですけども。


「七夕祭も準備が進められているしね」


「あーっと」


「言わずとも承知だ」


 なら良いけど。


「今年は真白くんの分も用意しよう」


「何も分かっちゃいなかった」


 おうふ! 喀血するぞコノヤロー。


「九十九くんも居るし。楽しい七夕祭になりそうだね」


「まさか唾を付けるために?」


「いいや。愛のまんまに」


「我が儘に」


「僕は先輩を愛せないんですけど……」


「せめて私を抱いてからそう言って貰えると嬉しいね」


「フシューッ……」


「と、華黒が威嚇するので、この話はその辺で」


「勿体ないことだ」


 誰のせいだ。誰の。


「私のせいだとしても譲る気は無いよ?」


 昴先輩の手が僕の頬に添えられる。


「無敵艦隊ですね」


「そうとも。僕に敵う恋人は他に居ないさ」


「華黒はどう思う?」


「兄さんの純血さえ守れれば他に何も要りませんけど……」


 処女じゃないけどね。そこら辺は語るべきでもないし、昴先輩だって空気くらいは読む。読んだ上で無視するのは流石の一言だけど。


「じゃ、まずはアイスだね。専門店が出来たらしい」


「それハーレムの情報網でしょ?」


「そう相成るかな」


 ハブ型の構築式女性関係。昴先輩のソレを普遍的にハーレムと呼ぶ。


「結構美味しかったんでね」


「南無阿弥陀仏」


「何に祈ってるんだい?」


 仏であって仏でなし。あえて言うなら常識の神様。ここでは領域的に弱いけど。


「ふむ」


 感慨深げに頷いて、昴先輩は僕の胸に手をやった。くすぐったいが正直な感想。でもそこにおっぱいは存在しない。あくまで名残のビーチクだけ。スッと手をやった後、撫でる様に上下させる。これはセクハラと捉えても? 否と返されるも必然だけど。


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