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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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また一人6


「つれづれと空ぞ見らるる思ふ人」


「天降り来むものならなくに!」


 こんな返しが出来る幼女は多分白花ちゃんだけだ。最近は髪を伸ばしており、ますます幼女パワーに磨きを掛けている。なにか思うところでもあるのだろうか? 似合っているからいいんだけども。


「白花ちゃんも御相伴に?」


「流れで」


 さいですか。


「従姉妹にあらせられるのですよね?」


「僕らにしてみればね」


 サクッと述べる。僕と九十九は撫子さんの子どもで、白花ちゃんは撫子さんの妹……百合さんの子どもだ。血縁的には半分従姉妹。


「なんか幸せな感じを受けます」


 心の持ち様一つだと思うけど……。


「上流階級だって苦労はあるよ。自発的な」


「お兄様の皮肉は辛すぎます」


 帝王学を修めるほど恵まれておりません由。


「で、なんで白花ちゃんは此処に?」


「いえ、その、お話し合いと申しますか」


「?」


 首を傾げる僕。


「とりあえずは茶でも飲んで待っていてください」


 同じアパートなので2DKだ。ダイニングに五人が座る。僕、華黒、ルシール、黛、白花ちゃんで五人。ついでに食事になればここに九十九も追加されるので、中々にスペースを取る。別に文句でも愚痴でもないけどね。


「それにしても何だかなぁ」


 茶は素直に美味しかった。緑茶だ。湯飲みに注がれて。急須がテーブルに置いてあるので、「お代わりが欲しければどうぞ」とのことだろう。


「で何ゆえ?」


「一応お姉様に仕送りをしているんですけども」


「そっか。白坂が保護者になるんだっけ?」


「お兄様もですよ」


「そこはまぁ両親との兼ね合いで」


「はぁ」


 白花ちゃんの溜め息。それほど不満ですか。僕が白坂に帰順しないことが。


「で、仕送りの加減が減じて下りません由、もうちょっと頼ってくださいまし……と言いに来たんですよ」


「仕送りに手をつけてないの?」


 僕はキッチンの九十九に声を掛ける。茶を飲んで。ホッ。


「つけてますよ。ちゃんと必要な分だけ」


「その必要分が少なすぎるんだよぅ」


 とは白花ちゃんの愚痴。なるほどね。


「別に後ろめたい事があるわけじゃないなら、仕送りくらい受ければ?」


「兄君が受けるなら湯水のように使ってあげましょうぞ」


「ぐ」


 つまり「お前が言うな」に相当するわけだ。たしかに僕の場合は両親への義理で、白坂と距離を取っているけどさ。


「ところで仕送りの額って?」


「月に二百万」


「使えるかっ!」


 ええい。ツッコミだってカロリーを消費するんだよ?


「いや。上限が二百万で、消費した分を随時補填する形なんですけども」


 口座に二百万を水平維持するシステムなわけだ。


「貧乏性なモノで」


 それはよく分かる。


「父と暮らしていたときはカツカツの生活だったので、どうしても無駄金を使うという発想に飛躍しません由」


 中々苦労を忍ばせる。不幸をひけらかすには十分か。天涯孤独の身になったところで、白坂に保護された。世界が変わったとでもいうべきや?


「ですから撫子様のご息女なんですから遠慮は要らないと」


「兄君は?」


「頑として受け取らないので何だかなぁです」


 華黒が株長者やっているのは多分バレているのだろう。インサイダーとレバレッジって二つ揃うと凶悪になるよねー。


「そんなわけでお世話にはなっており申して心苦しいのですけど、最低限の金さえいただければこちらも文句はありません」


 炊飯器で米が炊けてから十分後。十分蒸らして、それから混ぜる。フワフワフカフカの白米が、良い感じに香り立つ。そしてそれ以上にダシの香りが響いた。


「では夕餉と参りましょう。これは白坂のお金から出ていますので、感謝するなら白花お嬢様に」


 と言われて差し出されたのは、ヅケ丼とお吸い物。


「お吸い物……」


「兄君が飲んでみたいと仰るので、作って候ひまして」


「君も色々と器用だね」


「父の食事を作るのも日常でしたし」


 家事全般何でも出来ると。そして夕餉が始まる。ヅケ丼はマグロだ。当たり前だけど。ただし魚臭さはない。山葵の香りはするも辛いわけでも無かった。


「コレはどうしたの?」


「ちょうど市で山葵の葉っぱが売られていたので、山葵代わりに漬けたんですよ」


 こうすることで、山葵同様に魚臭さを消し、けれども辛さ無しで請け合えるとのこと。


「よく考えてるねぇ。いや実際に美味しいんだけど」


「むぅ。此処に来てライバル出現……」


 華黒も遠回しに褒めていた。それだけヅケ丼が美味しいのだろう。


「お吸い物も侮れませんよ」


 とは黛の言。口直しに飲んでみると、ダシの香りが鼻腔を抜ける。味は優しくごま油がアクセントにもなっている。総じて美味と言うべきだろう。


「食事はお姉様と黛さんが担当でしたけど、これは順次任せても良いレベル?」


「然程の存在でありませぬのですけど」


「謙遜なのか皮肉なのか」


「謙譲だと受け取って貰えれば」


「………………うぁ……」


 ルシールがルシーるのは毎度のことで。とにかくぐうの音も出ないほど美味しいとの御様子。実際に美味しいしね。


「お兄様はどう思われるので?」


「料理の出来る妹キャラは貴重だね」


「此処にいますよ」


 半眼の華黒。まぁそうなんだけどさ。


「じゃあこうやって白坂のお金を使って食事を提供してくれたら嬉しいですね」


 結局ソコだよね。


「相承りました」


 お吸い物を飲んで、ヘラッと述べる九十九。実際にバックアップはあるわけで。その点を鑑みれば、言い訳程度にはなるのだろう。別段、美味しい料理は華黒にも黛にも作れるけど、新しい味と技術の集大成には興味も覚えるというモノで。


「にしても美味しゅうございました」


「お粗末様でした」


 そんな感じで。けどやはし九十九は華黒に怯えてもおり申し。噛まないけどね。


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