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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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ドン引き4


「それでは九十九を?」


「夕餉に招待。そう取り決めた。なわけで夕餉は五人分」


「思うところがありしや?」


 半眼の華黒。別段今更じゃないかなぁ。なんていうか、色々と厄介な連中に巻き込まれるのは。今回に限って云えば僕からアクションを起こしたわけだけど、実質的に血の繋がった妹をどうにもこうにも出来ないのは有り得ないわけで。


「兄さんの病気って美少女でも呼ぶんですか?」


「華黒を一本釣りした時点で証明されているはずだけど?」


「私だけの王子様です」


「そーゆーことにしておこう。で、何を作るの?」


「ぶぶ漬けとかどうでしょう?」


「即座に帰れって?」


 こっちも半眼で睨む。


「でしたら水炊きで」


「御健全」


 鶏肉やら野菜やらキノコやら。そんなことをしていると、


「百墨真白」


 スーパーでのこと。ちょっとだけ大きい声が僕を呼び止めた。


「……………………」


 声には敵意があった。そして華黒の雰囲気からも敵意を感じられた。一瞬で外敵だと判断したのだろう。僕は濡れ羽色の頭をポンポンと叩く。


「荷物持ちはちょっと外させて。先に会計済ませていいよ」


「兄さんはどうなされるので?」


「平和的談義」


「許すとでも?」


「それを決めるのは華黒じゃないよ」


 男子五人がこっちを睨むように見つめていた。


「自分を守ってくださいね?」


「努力しよう」


 そんなわけで場を移す。とは言ってもスーパーの駐車場だけど。


「で? 要件は?」


「手ぇ出し過ぎだ」


 …………えーと?


「白坂九十九まで囲い込む気か?」


 あ。そっち。


「別に手を出したりしないよ。一応妹なんでね」


「だが百墨華黒先輩には手を出してるんだろ?」


「出してないよ」


 そんな勘違いをされていたのか。一応学校では実妹と誤認されている。知っているのは統夜くらい。


「百墨ルシール先輩も!」


「黛先輩も!」


「別段アプローチを掛ける分には僕は口出ししないんだけど」


 実際にかしまし娘にアプローチして玉砕した生徒は十の指では数えられない。いや二進数を使えば別なんだけども。


「お前の存在が邪魔なんだよ!」


「だからって消えるわけにはいかないし」


 幾ら自分が無いからって、こんな不条理で我が身を捨てる真似はしない。


「で、どうして欲しいの?」


「距離を取れ」


 五人組の一人がそう述べた。この場合はかしまし娘。それから九十九か。


「君たちの意見も貴重だけど、女の子の気持ちはもっと貴重だ。彼女らが僕の傍に居たいなら、僕から言うことは何も無いよ」


「殺すぞテメェ!」


「本気で殺す気も無いのに良く吠える」


「じゃあ死ねや!」


 一人が激発した。拳を握り、振りかぶる。そのままこちらへ走り寄る。殴られる――より先に玉子が男子の顔面で爆ぜ割れた。


「――わぷっ!?」


 黄身と白身でグッチャグチャ。


「私の兄さんに何をされているので?」


 玉子を手に持った華黒が血管を破っていた。さすがにこうなるか。とはいえ暴力相手に嫌がらせで済ませるとは。華黒も成長したなぁ。


「――百墨先輩!」


「はい。百墨ですよ?」


「こんな奴のどこがいいので!」


「あなた方みたいな脅して恋を手に入れようとする馬鹿どもより余程誠実ですが?」


 それを言われれば返す言葉も無いのだろう。


「兄さんを集団で脅して暴力を振るおうとした。既に客が何人も見ております。録画もされておりますよ。学校の処置を待ち候へ」


「先輩だって手を出した!」


「一種の自衛ですよ。法的に認可も得ていますし」


 二つ目の玉子をポーンポーンと直上に投げて掴み取る……を繰り返していた。


「それで兄さんを脅して私たちを引きはがそうと? 馬鹿な試みも在ったモノですね。私たちは心底から兄さんに惚れているんですよ?」


 ルシールしかり。黛しかり。


「別段こちらの意図でもないけどなぁ」


「そんな謙虚な兄さんだから、色んな美少女が惚れるんですよ。私もまたその一人……では在り申しましょうぞ」


「多謝」


 ペコッと頭を下げる。


「だからってやられてやり返さないってわけにはいかねぇんだよ!」


 顔面を玉子で汚した男子が襲いかかってくる。


「第二球……」


「却下」


 華黒を牽制する。既に衆人環視はスマホで状況を録画している。であれば既成事実を作るのも一興。僕は素直に殴られた。痛みは感じない。音も認識しない。さて、倒れてそのままぐったり。


「――――――――」


 何やら雰囲気で騒然を感じ取る。後は警察の領分だ。あるいは学校か。


「――――――――」


 色々と事情は聞かれた。けれども他に対処のしようも無く。ついでに夕餉もまだだ。華黒の水炊きは美味しいし。アパートでは黛が既にダシを取っている案件。別段どうと言うことでも無く。僕は発症が止まるまで、ボンヤリとして過ごした。


「兄さんの馬鹿!」


「たしかに華黒に比べれば馬鹿だけど」


「学習してください!」


「いや、今回は打算の結果だし。ああしておけば、今度から脅してどうにかしようって連中は思いとどまるでしょ?」


「ソレも全て私たちのためじゃないですか!」


 そう言われれば返す言葉も持ち合わせてはいなかったりして。すかんぴんだ。色々と形而上的に。


「これだけで済めば御の字だよ。それより水炊きが食べたい」


「雑炊は要りますか?」


「要る!」


 そこは外せなかった。


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