↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
334/337

血の支配7


「……………………」


 ホケーッと釣り糸を垂らす。春の陽気が肌を暖めてくれる。良いお天気でした。


「そこです! ピッと行きましょう!」


「………………はやや……!」


 食い付いた魚に遠慮するのはルシールらしい。ぶっちゃけこういう生臭いことには耐性が無いのだろう。匂いからして青ざめていた。失敗かとも思ったけど「慣れるまでです」との御意見で、一応釣り堀を満喫している。黛の指導の下、なんとかかんとか。


「むー」


 僕は坊主だった。いいんだけども。


「ふむ。ほう」


 その隣でバシバシ釣っているのが華黒。万能性の高いステータスを持っているのは知っていたけど、万能過ぎやしませんかね?


「あははー」


 黛もまた普通に釣っていた。


「何かコツでもあるの?」


「心を空虚にすることでしょうか」


 煩悩まみれの華黒に言われると世話ないんだけどな。釣り糸を垂らす。餌だけ持って行かれた。うーむ。真理には遠く尊く。


「………………お兄ちゃんは……大丈夫……?」


「こっちの台詞なんだけど」


 水の異臭がする匂い。魚の匂いも大気に混じっている。


「ルシールは大丈夫なの?」


「………………えと……一応……」


 元より言葉は信用しない。ルシールの場合は遠慮するべき処も遠慮しない性格だ。いや空気が読めないんじゃなくて、空気を読みすぎて人の意見に反駁できない……が現状としては正しいのだろう。在る意味で華黒と同等に目が離せない存在でもある。


「僕は坊主だけどルシールは釣れた?」


「………………一匹だけ……」


 引く力は何度かあったらしいが、悉く逃げられたとのこと。不器用なルシールらしい話ではあった。ぶきっちょで勉強の出来るルシール。器用で勉強以外が出来る黛。


「良いコンビだね」


「………………黛ちゃんは……凄いから……」


 尊崇の念は本物だ。本当にルシールは黛を凄いと思っている。それは伝わった。


「なんだかなぁ」


 釣り糸を垂らしてホケーッと時間を数える。春の陽気も手伝って、僕はトランス状態に。


「兄さん。引いてますよ」


「お?」


 ピッと釣り竿を持ち上げる。一匹釣れた。


「おめでとうございます」


 華黒が和やかに笑った。うーん。無念。御本人六匹釣っていらっしゃる。


「しかし盲点でしたね」


 華黒が言う。


「何が?」


「釣り堀です。ここならナンパの心配もありませんし」


「確かにね」


 百貨繚乱だと頻繁に出くわす。


「まぁ華黒は魅力的だからね」


「兄さんも、ですよ?」


 認めたくないけどその通り。


「華黒は百合もイケるクチ?」


「兄さんが女性でも私は愛しますよ?」


 何故か……は問うまでもないか。左手首のためらい創を見る。僕と華黒の契約の証だ。それ故に業の深いことになっているんだけど……あくまで僕は暴走しただけなんだけどな。言って聞く華黒では無いにしても。


「兄さんが味方だからこそ太陽は暖かいんです」


「御苦労様でございます」


 また華黒の釣り糸がクイクイ。魚と決闘。勝者は華黒。七匹目だ。


「本当ですよ?」


「分かっているから悩むんだけど」


「兄さんは私の隣で死んでくれるのでしょう?」


「うん。まぁ。そのつもり」


 あくまで華黒の世界が広がらなかったら……だけど。僕より素敵な殿方を見つけるのも苦にはならないだろう。数十億の男性が地球には蔓延っている。そこから小さな恋の歌よろしく君と出会う人が幸せであればいい。そうも思うわけで。


「兄さんが何か不謹慎なことを考えてる模様」


 普通に見抜かれた。真白ニズムも此処まで来れば国宝級。


「ちなみに華黒の理想って?」


「あの地獄から救い出してくれること」


「助けられたのは僕だと思うんだけど……」


「あら。御謙遜」


「障害を排除したのは華黒でしょ?」


「兄さん在ればこそです」


 そこをイコールで結ぶのもなぁ。いや確かに僕らの絆ではあるんだけど。それにしても……といった御様子。悪い気分じゃないのは僕も同じなんだけど。言ってはやらない。こういうところで僕はツンデレと言われるのだろうか?


「愛していますよ兄さん」


「至極光栄なりき」


「黛さんも! 愛しておりますお姉さん!」


「………………えと……その……私も……」


 モテモテだなぁ。夢から覚めて一人ぼっちになったらどうしよう?


「兄さんは私のモノです」


 フシャーと猫よろしく威嚇する華黒。黛は一歩も引かない。


「お姉様には悪いですけど黛さんの恋慕も確かです!」


「この泥棒猫」


「いえ! お姉さんはお姉様を愛しております。今のところ付け入る隙はありません!」


 ――まぁ確かに好きなんだけど。


 釣り糸を垂らしてホケーッと。


「………………お兄ちゃんは……お姉ちゃんが……好き……?」


「ルシールの事も好きだよ」


「………………ふぁわやぁ……」


 赤面するルシーるルシールの愛らしさよ。喀血するレベル。金色の髪。エメラルドの瞳。西洋人形に例えられる美貌。その全てが愛おしい。華黒優先なので言葉にはしないけども。釣り堀の水面を血で赤く染めるのも何だし。


「兄さんは――」


「お姉さんは――」


 華黒と黛は喧々諤々。ま、こっちはいつもの通り。


「………………あう……」


「ルシールが気にすることはないよ。フった僕が云うのもなんだけど」


「………………それでも好きって……言ったら……?」


「華黒と交渉して。ルシールには相応の譲歩があるらしくてね」


 害意がないのが一番の理由だろう。良くも悪くも人が良い。多謝に心を許さない華黒がルシールだけには例外だ。僕はまぁ心の根幹に触れているので、ルールの範囲外。で、そのルシールの恋心は憮然としながらも受け止めている。


 三食華黒で、三時のおやつはルシール……と華黒は過去に言ったことがある。


 要するにまだ世界が怖いのだ。僕の支え無しでは立つこともままならない生まれたての子鹿。別にソレを責める気は無いし、なにより僕も華黒に依存しているところはある。だからまぁ……お互い様だよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。