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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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血の支配4


「で、どういうことですか?」


 そうなるよね。わかっていたさ。


「殊更あげつらうこともないけど……実妹が出来ました」


 華黒としては一種アイデンティティに踏み込む事象だろう。自分が実妹で無いことを理解していて、それを受け止めてはいるも、こうやって血の繋がった実妹というコンセプトをぶつけられればイノベーションもやむを得ず。


「ま、こっちは嫌われているから」


「ツンデレじゃなく?」


「そっち方面に詳しくならないで欲しいなぁ」


「兄さんがエンターテイメントを提供してくださるなら他は些事ですけど……」


「二次元の世界に浸っていなさい」


「はーい」


 ん。良い子。


「で、実妹の件なんだけど」


「まだ在り申して?」


「瀬野二に通うことになったから、フォローしろと白坂家が」


「白坂が?」


「ま、何にせよアレは周囲に馴染めないよ」


「兄さんには馴染むんですか?」


「そう殺気をぶつけないでも……。一応コッチだって失禁もするし血尿も出るんだから。可能性の理論で言えば」


「自分の無い兄さんには無理ですよ」


 そこは阿吽の呼吸なのだろう。


「それで兄さんは了承を?」


「ま、無報酬のバイトと思えばあげつらうほどのことでも」


「に い さ ん?」


 ニコッと笑う華黒が怖い。


「華黒は可愛く思ってるって」


「嘘の百乗」


「真実の一乗」


「具体的には何を?」


「別段お隣さん同士になるんだからソレなりの交流を……」


「交流……」


 直流だと文明に適応しないしね。


「だからまぁ手探りの状況。華黒だって恋敵じゃ無いんだから、あまり刺々しい発音はしないように」


「私を何だと思っているので?」


「暴想機関車」


 暴走でないのがミソ。


「で? 今日の夜御飯は?」


「チャーハンです」


「好物」


「兄さんは私の料理なら何でも美味しいって言いますもの」


「評価基準が何だかなぁ。さほど細かい味の機微なんて分からないよ」


「にゃむ……」


 なんだよぅ。


「ルシールと黛は?」


「今日は二人でデートだそうで」


「仲良しだなぁ」


 在る意味僕の周りの良心だ。黛はちょっと心に闇抱えてるけど。それを此処で言えば血が流れるので黙秘。沈黙は金だ。


「おかずはどうします?」


「中華で」


「ではシューマイと春巻きを」


「冷凍食品?」


「さすがに一から作っていたら間に合いません」


「うーん。華黒の嫁力が増大していく」


「何時でもウェルカムですからね?」


「熟考しておくよ。とにかくお腹が減った」


 火の音がする。調理を開始したのだろう。華黒の手さばきも慣れたモノ。


「兄さん的には実の妹はどう思うんです?」


「実の妹だと思う」


「私の時も大暴れしましたよね」


 …………君がソレを言いますか。


 あえてツッコむことはしないけども。なんだか僕の中で仮想妹が着々と増えている予感。三年になっても碓氷さんがクラスメイトである事を祈ろう。アレが一番良心的だ。


 ルシールも良心だけど、年齢上クラスメイトには成れないし。とりあえず暗記帳を取り出して、英語の単語を覚えていく。何かコレもルーチンワークになっているけど、ぶっちゃけ華黒による洗脳汚染度の恐ろしさの逆説的証明ではなかろうか?


「華黒~。お茶~」


 ダメ兄貴の言分に腐らず答えてくれる義妹。うーん。メランコリー。


「兄さんは九十九に構っちゃダメですよ?」


 顔も会わせていないのに呼び捨てですか。華黒らしいっちゃその通りではあろうけども、剛毅さと剛胆さの兼ね備えは、ある種の横綱クラス。ドスコイ。


「ま、嫌われる範囲でどうにかね」


「兄さんのお母様でしたっけ? どうなってるんです?」


 こっちが聞きたいくらいなんだけど。それを華黒にぶつけても意味はないので、お茶と一緒に飲み干す。


「まさか第二第三の実妹が」


 有り得そうで怖いけど、可能性としては低いだろう。人間の繁殖能力は個人に限れば限界がある。全体論で見れば、「ああ、ハルマゲドンまだかな」レベルだけども。


「最初から嫌われた方が面倒は無いよね」


「兄さんに不当な暴力を強いたら黙っていませんよ?」


「ソコは黙っておいて」


 校則違反で華黒と離れ離れは嫌だ。……と申すと、


「では兄さんと一緒に居るために世論に迎合します」


 なんて妹御。いや、誰に似たのか。あるいは誰にも似なかったのか。


「はい。出来上がりましたよ」


 チャーハン。春巻き。シューマイ。サラダとインスタントスープ。


「何時でもお嫁に行けるね」


「ええ。もちろんです」


「ご祝儀は幾ら包めば」


「そんなだからツンデレって言われるんですよ」


 えー。だってさぁ。好意を向けるのだって怖いじゃん。悪意を向けるより遥かに。


「それはそうですけど……」


「ま、華黒のことは大好きだけどね」


「!」


 燗と華黒の双眸が光った。……やってもうた。


「兄さん! 今日オートクチュールの下着が届いたんです!」


「へえ」


「初夜伽……に敵う一品となっております!」


「昴先輩にお勧めしておこう」


「何でですか!」


 完璧にこっちの台詞なんだけど。どうして欲しいわけよ華黒は。いや、言わずともわかってなんぼの兄さんなんだけど。華黒にオートクチュールの下着か。たしかにソレはそそられる。なにも僕だって不感症じゃ無いんだから、思うところもあるモノで。


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