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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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誰しも生まれ7


「なんだかドタバタしましたね」


 昨日今日と振り返っての華黒の感想はソレだ。たしかにドタバタしていた。と言うか僕らが周りに振り回されていた。その意味では……それもまた何時も通り。今は夜。もうすぐ僕らの誕生日も終わる。僕と華黒は同じベッドで寝ていた。添い寝だけどね。


「兄さんはもうちょっと私に靡いても良いと思いますけど……」


「他の男子にそう言えたら勲一等モノなんだけど」


「その気も無いですよね」


「まぁね」


 実際に僕だって華黒は好きだ愛おしい。絶対に口にはしてやらないけど、たしかに同じ方向を向きたいのはあるわけで。


「兄さん意地悪です」


「しょうがないでしょ。安全弁が無いと崩壊する」


「キングストン弁?」


「どう捉えても」


 サラリと流す。


「兄さんは愛を怖がりすぎです」


「そんなことはないけどなぁ」


 もしそうなら華黒は今頃壊れている。


「それはそうなんですけど……。なんていうか普通に対するコンプレックスが強すぎるんですよねぇ。自覚はありましょうぞ?」


「そりゃあるけどさ」


 普通万歳。普通最高。


「そも兄さんそのものが普通から幽離しているんですよ?」


「だから眩しいよね」


「そう来ますか……」


 どうにか説得したいらしい。無駄な行為とはこのことだ。


「僕だって人間らしく生きたいって感情くらいは持っているよ。特別だなんては思っていないけど、だから常識に普遍したい」


「そのために私を切り捨てるので?」


「華黒を見捨てるのは無理そうかな?」


 既に誓っている。一緒に世界を見ようと。


「その辺りの塩梅がありますよねぇ」


 ムニュッと華黒のおっぱいが腕に取り巻いた。大きくなったのも伊達ではない。


「今なら誰も見ていませんよ?」


「僕が見ているからダメです」


「兄さ~ん」


「甘えた声を出してもダメ」


 僕は常夜灯の中で目を瞑る。眠りはまだ遠く。けれども夜は深まって。


「兄さんは童貞で良いんですか?」


「うぐ」


 それを言われると悲しくなるけど、そんなことを超絶美少女に言われると傷の深さも一入で。なんだかなぁ。童貞ってやっぱりダメですか?


「兄さんの決心次第ですね」


「だから諦めてね」


「むぅ。こうなったら兄さんの夢の中でムフフをするしか……」


「……………………」


 出来るものならやってみろ……が本音で。たしかに華黒は夢魔以上に蠱惑的で神秘的ではあろうけども。だからって……ねえ?


「さて、兄さん」


「へぇへ」


「ちゃんと夢に見てくださいね?」


「無茶苦茶言うね」


「愛さえ在れば世界は救えるんですよ?」


「一神教のブレ方は?」


「それはそれとして」


 それはそれにするんだ。まぁ気持ちは分かるけども。


「兄さんは私を鬱陶しいと感じますか?」


 どこか震える声。臆病な華黒。これは持病だ。華黒にとって未だ世界は僕で在りし。であれば僕に見捨てられることを何より厭う。別に僕は華黒を見捨てることが未来永劫有り得ないんだけど、ソレを言葉にしても意味は無いので黙って居る感じ。


「愛情表現は嬉しいよ」


「本当に?」


「華黒は自分がどれだけ魅力的か分かってない」


「でも兄さんは明鏡止水で」


「兄だからね」


「血は繋がっていませんよ?」


「そなんだけどさ」


 言い訳だ。実際には性欲もあるし恋愛願望もある。それで溺れると華黒の無無明が果たされないだけで。華黒が僕以外を「素敵だ」と思える日まで頑張る所存。


「そんなことに意味はあるの?」


「ま、血が繋がっていても兄さんは私を好きだと言ってくれましたし」


 そんなこともあったね。ちょっと照れる。


「とにかく」


「責任をとれるようになるまではダメ……ですか?」


「さいです」


 何時もの様に何時もの如く。


「兄さんが自慰行為をするくらいなら私を使って欲しいんですけど……」


 …………喧嘩を売られているのかな? 少しそう思う。


「何時でもウェルカムですからね?」


「熟考に値するよ」


「紳士な兄さん」


「そうでもなければ今の状況は有り得ないよ」


「それはそうですけども」


「華黒はむしろ僕なんかで良いの?」


「兄さん? 左手を」


「?」


 差し出す。躊躇い創に華黒は唇を寄せた。チュッと口づけ。


「この傷有る限り、私は兄さんを想いますよ」


「単なる暴想だと思うんだけど」


「私のために命を棄てられる人間がどれだけ居ると思ってるんですか?」


 結構いそうな気はする。それほどに華黒は美少女だ。


「兄さんが兄さんであればこそ……私は恋に落ちれるんです」


「それは至極光栄」


「本当ですよ?」


「分かってるよ。これ以上無く。コレまでどれだけの時間を華黒と過ごしたと思っているのさ。華黒が僕を大好きなんて前提条件じゃないか」


 逆は……まぁそれなりに。


「だから兄さんを大好きです」


「恐悦至極に存じます」


 他に述べようも無かった。だって華黒は魅力的で。肉体的にも精神的に同じ要素を掛け合わせ。けれども自律できない不完全性。ひまわり娘も同然だ。


「ま、後は良心に期待か」


「…………兄さんのそう言うところはちょっと小賢しいと思えます」


「議論評論は何とでも」


 サラリと僕は流す。だって意味は無いもの。僕にとっての華黒は大事な人で、けれども華黒を世界に解放するには僕が邪魔で。であれば確かに僕の目指すモノは何なのかって話でもある。殊に複雑に考えることも無い。華黒の幸せは自己分析の延長線上にあるべきや。


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