誰しも生まれ5
「さてそうなると」
デート場所を探さなきゃいけないわけで。
「映画でも見る?」
「いいですね」
と華黒の二つ返事。毎度毎度の百貨繚乱。ショッピングモールに顔を出す。
「えーと。映画は」
つらつらと電子掲示板を見やる。特に見たい映画が在るわけでもない。なので選択権を華黒に委ねた。
「では」
と選んだのは、とある少女コミックが原作の実写映画。
「評判が良いらしくて」
とのことでサラリと決まる。チケットを取って、しばし閑談。映画泥棒がどうのこうの。コミックの面白さがどうのこうの。
「ふぅん?」
と僕。そして映画が始まる。元々の評判が良いらしいとの情報は本当だった。原作は知らないけど良く出来ている。
画面そのものは二次元だけど、映像というのは縦と横……それから奥行き……ついでに時間という四次元の能力を必要とする。
単なるデザインなら二次元。風景画でも奥行き有りきの三次元。そこに映像は時間という四次元目を必要とする。それを今回の映画監督は正しく認識しているようだった。内容はメロドラマ。けれど王道は面白いから王道で。十二分に満足できた。
「どうでした?」
「面白かったよ。ちょっと原作に興味が湧いた」
「では良かったです。私も原作は知らないんですけど」
そんなこともある。
「じゃあ――」
本屋にでも寄りますか。そう述べようとして、
「あれぇ? 君たち可愛いね?」
「……………………」
ナンパにあった。むしろ非接触的な痴漢。蟻走感が肌を走る。二人組の男性だ。茶に染めた髪と唇のピアスが印象的。
「……………………」
華黒のテンションが一瞬で下がる。その意味では有益だ。あ~~~~~んまり褒める気にならないのはどうしてだろう?
「こっちも二人でそっちも二人。釣り合いとれてると思わない?」
「思いません」
僕はサラリと述べた。っていうか僕まで女子扱いだ。一応コレでも健康的な男子なんだけどなぁ。自信を無くす。
「まぁそう言わないで。奢ってあげるからさぁ。可愛い服とか欲しくない? で、その後カラオケとか」
「はぁ」
溜め息。ソレも出る。
「兄さん」
「はいはい」
「――――――――」
ディープキス。クチュクチュと唾液が音を立てる。なおメロドラマの影響か。逆上せるような熱が華黒の瞳にはあった。キスが終わる。
「そんなわけで」
ナンパ二人に睨み据える。
「今デート中なので邪魔をしないでください」
「お、おう」
美少女と美少女(皮肉です。もちろん)のディープキスを見たのだ。そりゃ引く。
「では行きましょうぞ兄さん」
「へぇへ」
そんな感じでショッピングモールを回る。服を見繕ったり、アクセサリーを見やったり。僕は華黒に服をプレゼントした。春用のワンピースだ。フリル付き。華黒は僕にシルバーアクセをプレゼントしようとして、僕に断られた。あまり飾り立てるのは好きじゃ無い。
「では」
とセレクトショップに向かう。衣服を幾つか見繕う。結果としてシャツを一枚プレゼントされた。濃いめの紫に英字がプリントされている。無難と言えば無難だけど、僕としては丁度良い。実際に着て、デートの再会。三十一のアイス屋さんに向かう。メロンのシャーベット。ハムリ。
「えへへ。似合ってますか兄さん?」
フリル付きのワンピース姿。さっき買ってあげたものだ。
「何を着ても華黒なら可愛いよ」
「今日の兄さんはデレていますね?」
「誕生日プレゼント」
「では私も」
「身体は要らないから」
「何故ですか~」
「不純異性交遊に該当するし」
「バレなければ犯罪は犯罪足り得ないんですよ?」
「四知って言葉があってね」
「天や地が知っても告発しないじゃないですか」
「僕が告発するし」
「兄さんはお堅すぎます」
「…………怖いだけだよ」
「……………………あ」
フッと華黒の表情に影が差した。理解したのだろう。同じ地獄を共有したのだ。
「別に蒸し返すつもりも無いけど、色々とね」
メロンシャーベットをハムリ。
「でしたらますます耐性を付けていただかないと」
「そっち方面に流れるよね」
うん。知ってた。
「兄さん。女体は怖くないんですよ?」
「僕は華黒が怖い」
「饅頭的な意味で?」
「今度はお茶が怖いって?」
「私も兄さんが怖いです!」
「じゃ別々に暮らすように父さんと母さんに打診を……」
「ジョークですっ!」
知ってるけどさぁ。マジで流されそうで怖い。華黒にとっての僕が世界である限り、まだまだ教えることはたくさんあるのだ。そこら辺を踏まえて、今の関係があるんだけど、それはそれとして何だかなぁ。
「それで兄さんは夕餉にリクエストはありますか?」
「華黒が造るの?」
「いえ。ルシールと黛からコメントが」
なるほどね。
「鯛茶漬けって答えておいて」
「了承しました」
スマホをカシカシ。メッセを送る。
「ルシールに配慮した結果ですか?」
「然程でも無いかな。ルシールが可愛いのは確かだけど」
「アレは反則ですよねぇ。金髪碧眼で小動物。けど好きになったら一途に尽くす。乙女の完成形じゃ無いですか。ぶっちゃけ兄さんですら心揺らぎますよね?」
「夜這いする誰かさんより余程ね」
「むぐぅ」
ま、そんな感じで参りましょ。




