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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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毎度と言えば毎度の事で7


「はうあうあ~」


 夕餉が終わり、自宅に戻る。


 とはいってもルシールの部屋の隣が僕の部屋だ。あと華黒。


「兄さん飲み物にリクエストはありますか?」


「カレーの余韻があるし濃いめの物は欲しくないかな? 緑茶で」


「相承り候」


 急須を器用に操って、薫り高い緑茶を入れてくれる。愛の為せる業。


「愛されてるね……僕」


「兄さんですもの」


「妹としてその見識はどうよ?」


「何か問題でも? 美味しくありませんでした?」


「文句なしに美味しいんだけど……色々と負んぶに抱っこな罪悪感」


「もちろん兄さんは働かなくて良いんですよ? 私が養ってあげますから」


「前もソレ聞いたけど却下で」


「にゃ~む~」


 何が不満よ?


「兄さんのドキッ! オフィスラブが怖いです」


「同僚と恋愛するつもりも無いものだけど」


「兄さんはあまりに格好良すぎるので鴨が葱をしょって現われるような事象ですよ?」


「自覚も無いものだけどなぁ」


 なにせ女顔だし。白坂《つづらざか》撫子。僕の母親。そっくりの顔は遺伝だ。


「兄さんだと薄い本にされそうで……」


「いやぁ流石にソレはどうよ?」


 なんというか肖像権とかいうレベルの前に、僕を題材にするその精神性が。


「格好良くて可愛くて。超絶萌えです。食べて良いですか」


「カニバリズムは腹を下すよ」


「だからセッ」


「下品」


 チョップを振り落とす。結構強めに。


「さて花見も済みましたし、色々と控えていますねぇ」


「……………………」


 今だけは聞きたくないよ……の御様子。


「しっかし」


 ほ、と吐息。華黒のお茶は美味しかった。


「某大に行くって事は、彼奴と因縁が出来るね」


「それはまぁ」


 一応認識はしているようだ。そうでもなければ、むしろそっちが不自然だけども。


「進学校だから、その辺は学校側のメンツもあるだろうし」


「ええ」


「となると受験勉強は必須なわけで」


「瀬野二の授業についていけていますし、程よい自信なら持って構いませんよ?」


「過剰になら無い程度には不安もあるしね」


「兄さんの困っているところは手取り足取り」


「首取り心取り」


「していいので?」


「嫌われるのを覚悟するなら幾らでもどうぞ」


「むー。兄さんは意地悪です。悪鬼羅刹です。黒縄地獄です」


 それで罵倒をしているつもりなのだろうか。あるいは面と向かって愛しい人を罵倒できないから妄言に奔ったのか。


「ついでに女たらしです」


「そげなこつ言われても……」


 言ってしまえば「馬鹿ばっか」に落ち着く。


「ちなみに鏡花も兄さんを意識してるみたいですよ?」


「そういえば水月とメッセしてたね」


 今更の様に思い出す。運命はミラクルだ。


「……さてそうなると」


 電子音が鳴る。馬鹿でも分かる方程式。きゃつからのメッセだ。


「血が流れなきゃ良いけど」


「女性に向かって酷な言い様ですね」


 いや、この場合は女性体の因業について論じるわけではなく。きさんが他の女子を刺す案件について何だけど……。真白ニズム原理派め。とまぁ不満はともあれ、電子音声が風呂の完備を知らせる。


「先に入って良いよ」


「一緒に入りましょう」


「却下」


「何故?」


「今日はそんな気分じゃ無い」


「ひまわり娘ですよぉ~」


 名曲だし華黒にぴったりだけど、だからって混浴は色々と持て余す。シャドーボクシングだって体力を使うのだ。


「兄さんと一緒!」


 どこの共有番組だ。妹宇宙……シスターズコスモスで放映されているのかな?


「で、まぁ僕が断固として拒絶するまでがワンシーンだよね」


「私の色んな出汁が取れたお風呂を堪能されるんですね?」


 …………シャワーだけにしておこうかな?


 疲弊の一つもソレはする。愛が重いというか、恋が複雑怪奇というか。何にせよ華黒の僕に対する執着は、今更述べても始まっていて、既に語るべき事も無いくらい語ってはいまして。だからって折れて混浴するほど勇者でも無い。


「水着を着ますから」


「たしかに混浴するときの必須事項だけどさ」


「じゃあ良いですね。体型に合わせて御ニューの水着を買ったんでして」


「だが断る」


「なーんーでーでーすー!」


「華黒が魅力的すぎるから畏れ多い」


「せめて感情を込めて言い訳してくださいよ~」


 いや事実そう思ってるんだけど。感情を込めなかったのは僕の中の華黒に対するツンデレだ。


 自分で言ってりゃ世話無いんだけど、華黒のことは大好きで。


 ついで華黒の愛情を闘牛士のように翻弄するには結局ツンデレ的な……「べ、別にアンタの事なんてちょこっとしか想ってないんだからね!」との対応が求められる。無論華黒の方もソレを覚ってはいるのだろうけど。


 僕は体を許さない。その那辺は華黒こそ知っている。


「ま、面白い話でも無いか」


「何がでしょう?」


「僕と華黒の運命の出会い」


「きっとロミオとジュリエットの生まれ変わりですよ」


「三十六煩悩じゃなかったの?」


「まぁ確かに勘違いで自殺した結果がコレでは何ともはやな感じですけど」


 ソコは納得するのね。


「ま、華黒は可愛いから色々と許せちゃうよね」


「混浴も?」


「揚げ足を取らない」


「たんに兄さんと一緒にお風呂に入りたい妹心じゃ無いですか」


 言葉にした瞬間胡散臭くなる実例だ。心に秘めていればこそ可愛く映るモノの。ここはジレンマというか二律背反というか。質素なら通じないし、言葉にすると堕落する。じゃあどうすればいいかなら……、


「諦めるが正しいかな」


「一緒にお風呂……」


 無理だって気付こうよ。僕だって華黒のボインは喀血ものだ。ありとあらゆる穴から噴血してしまう自信さえある。何の自慢にもならないとしても。


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