毎度と言えば毎度の事で5
ちなみに華黒とルシールは仲良くお茶を飲んでいた。桜の花の下の二人。絵になるなぁ。
「お姉さんも絵になりますよ?」
「恐縮だね」
ポスンとボールをキャッチ。投げ返す。
「黛的には良いの?」
「黛さんとしてみればお姉さんにはハーレムを作って貰いたいんですけど」
学校中を敵に回すねソレは。こと黛に於いてさえ美少女の高位だ。ちなみに華黒とルシールは王位レベル。アレらは一種の究極だし。
「お姉さんが言いますか……」
ジト目の黛。何か責めるような眼差しだった。いや理屈は分かってるんだけど。
「僕はまぁ、それなりに」
「拒絶はしないんですね」
「キープしてるって言ったら怒る?」
「いえ、光栄かと」
「ま、なんだかんだで結局華黒に惚れているわけだし、どこかで諦めないと行き遅れになるよ? さすがに一夫多妻制は日本では認められていないし」
「明日は明日の風が吹く」
そこでその言葉が出るか。痛烈な皮肉だった。キャッチボール。
「お姉さんの寛容さに付け入る隙を見つけます由」
「その場合は華黒に刺されると思うんだけどな」
「愛されてますね」
「否定能わず」
ポスンとボールをキャッチ。投げ返す。
「黛は結局ルシールが幸せならソレで良いの?」
「昨年はそうでしたけど」
「気に入ったって話だったね」
「これでも感謝してるんですよ?」
「僕は何もしていないよ」
情報を調べたのは白坂だし、決着を付けたのは黛自身だ。
「お姉さんの謙虚なこと。お姉様もよくよくですね」
「たしかに」
こうまで打って響かない男子も居ないだろう。僕じゃ無ければ即交合するレベル。実際にかしまし娘に劣情を覚える男子生徒も多いだろう。その三者と僕で花見をして、学校ではグダグダしてるんだから、世の中って不条理だよね。
「お姉さん。残酷でしてよ?」
「知ってるけどネタに奔らなくとも」
「グレートですよコイツァ」
それも確かに。華黒にしろルシールにしろ。あるいは黛にしろ。幻想持ちすぎだ。
「然程の存在かね?」
「お姉さんの自己認識は詐欺のレベルですね」
スパァンとミットが鳴った。ボールの速度が上がったのだ。ルシールでは捕えるのも無理だろう。信頼の一つの証。
「もうちょっと周りの意識が那辺にあるのか自覚して貰いたいところですけど」
「僕なんて凡庸だよ?」
「ソレを素で言えるんですから詐欺だと申します由」
「たしかに女顔だけど」
「ですね」
「でもためらい創で引いたりしない?」
「学校中ドン引きですよ」
デスヨネー。今更何も言わないさ。
「だからお姉様がお姉さんを独占できるわけで」
「一種の絶対領域?」
「そうなるのですかねぇ?」
スパァン。ボールの受ける音。
「結局お姉さんって何者でしょう?」
「単なる男の子」
「そこで単なるの枕詞が付けば詐欺だと申し奉りますけど……」
うりゃ、とボールが投げられた。普通に捕まえる。
「殊更に自意識過剰もつまらないし」
「故に現状が見えていないわけで。お姉様とルシールのおこぼれで愛を授けて貰えればと」
「だからなんでそうなるよ」
「既に申しました」
「たしかに聞いたけどさ」
スパァン。ボールが収まる。
「で、どう感じたの?」
「諦めましたよ」
「どう諦めた?」
「諦めきれぬと諦めた!」
スパァン。ボールが収まる。
「なんか思うんだけど……僕の周りの女の子って不器用が過ぎるんじゃない?」
「お姉さん自身不器用ですし」
「そう見える?」
「剣山刀樹の舞台で蜘蛛の糸で綱渡りしているように見えます」
「あー……」
なんて的確な表現。自殺とパフォーマンスの背中合わせ……と云う意味だ。
「わかって諦めない黛も大概だけどね」
「黛さんとしても、お姉さんには大恩あり申し」
「だから気にしなくって良いって」
「ルシールの心友としても、放置は出来かねますよ」
「どれだけルシールが好きなの……」
「腹から信じられる親友ですよ。なにせルシールは嘘を吐きませんし」
「苦手なだけだと思うけど」
「だから可愛いんじゃないですか」
「ま、否定も出来ないけどね」
キャッチボール。スパァン!
「こうなると、他の場合が心配だなぁ」
「例えば?」
「口の端に上せることも憚るね」
「あー、あの人」
――伝わるのもどうだろう?
「ま、そんなわけで、僕にも難敵はいるわけで」
「愛の力で克服しましょう」
「結局ソコに落ち着くよね」
「ちなみに一つ言っておくと……」
ボールを受け止める。ヒュンと腕を振って、振りかぶる。
「黛さん。処女ですから」
「誰が得する情報なの?」
全力でボールを投げる。ツッコミの代替物。
「性病の心配はいりませんので」
「何に対するアピール」
「セックスアピールの一環でしょうか。アジェンダのプレゼン?」
「華黒一人で間に合ってる」
「お姉さんならそう言いますよね。ええ。分かってはいるんですよ。お姉さんがどれだけお姉様を好んでいるか。けどまぁソレが通じないのも若さなわけでして」
結局、黛も僕を気に入ってると。それがどれだけの深度かはわからないけど、ルシールを想い、華黒を想うのと同等以上に僕を想ってくれてるわけで。
スパァン。
南無三宝。




