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超妹理論  作者: 揚羽常時
三年生一学期編

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毎度と言えば毎度の事で4


「うーん。デリシャス」


 花見もそこそこに弁当食べて、春の日差しに微睡んで、僕は華黒に膝枕をされていた。ついでにブルーシートの上。


「幸せですねぇ」


「偏に春のおかげだね」


「兄さんのおかげです」


「なら華黒のおかげだ」


「えへへ」


 そうやって純情を気取ればもっと親しみやすくもなるモノの。僕と付き合っている事実は別としても、華黒の評判は学内では高い。猫かぶりは覚えた技術で、ついでにルシールと黛が揃って引くレベル。僕のせいではあろうけど、安易な自己否定は華黒の暴走を招くので、口にしないことにしている。


「しかしまぁさてそうなると……」


「へや!」


「………………はわわや……」


 弁当を食べて腹をくちくし、此処まで来て携帯ゲームもなんだから、後輩二人はキャッチボールをしていた。ルシールは頭こそ良いのに身体の機能が追いつかず、振り回されてもいるようで、そういうところは加点対象。本当に小動物だ。萌え。


「こんな時間が何時までも続けば良いのに」


「きっと続きますよ。兄さんが私を愛してくれる限り」


 だったらいいけどね。好きだよ華黒。言葉に出したりしないけども。


「にしても温かい春の日差しのことよ」


「和《のどか》ですよねぇ」


「ついでに華黒の太ももは良い感触」


「いつでも使ってくれて構いませんからね?」


「要熟考」


「Iのままに我が儘に」


「僕は君だけを見つめても良い物か?」


「誰の許可が要るんです?」


「うーんと……心に住んでいる閻魔様の裁定かな?」


「この際、殊更に言い訳を探さなくとも宜しいのでは?」


「ではどうしろと。やっぱダメ。却下」


「何も言ってませんよぅ……」


「受験前に妊娠なんてしたくないでしょ?」


「ぐ」


 そこは計算高い華黒。背景まで合算して状況を把握できる明晰さは持っていた。


「大学に入ったらいっぱいしましょうね?」


「さて。明日は明日の風が吹く」


「兄さ~ん……」


 僕の髪をクシャッと撫でる。いいんだけども。


「父さんと母さんにまで迷惑が及ぶからなぁ」


「孫の顔を見たらはしゃぐと思いますよ?」


 うん。容易に想像が付く。となれば両親は華黒を弁護するのだろうか? でもなぁ。大学生活で妊娠ってのも何だかなぁ……ではあって。


「ま、太ももで我慢しますよ」


「すまt――」


「――却下。しません。断固として」


「せめて最後まで言わせてください」


「神様は何時も見ていらっしゃいますよ?」


「だったら万事何処でも露出プレイですね。首輪でもつけましょうか? 兄さんがリードを握ってくれるなら、如何なプレイも容認しますよ」


「華黒はいったい僕を何だと思っているのだろう?」


 モノローグで想起すべきだろうけど、あえて言葉にした。


「愛しい愛しい兄さんです」


 そこまでわかって尚? いやまぁ平常運転といえばその通りではあるんだけど。


「てりゃ」


「………………はぅわ……」


 後輩二人はキャッチボール。


「元気ですねぇ」


「華黒が言う?」


「私だって元気で良いじゃないですか。若いんだし」


「若いっていうか幼いよね」


「兄さんが老け込みすぎなんです」


 そんなつもりもござらんが。


「元より兄さんは大所高所から物事を俯瞰しすぎです」


 そりゃだって世界は怖いし。それだけは誓って華黒の特権ではない。僕には僕の処世術が在る。観念とかアイデンティティの問題で。


「だから愛してあげたいんですよ」


「アイライクユー」


「一応恋人同士ですよね?」


「レッテルとしてはその通り」


「良いことしたくないんですか?」


「超したい」


 ソコは間違いなく僕も男子だった。


「だいたい華黒の身体はメリハリが利きすぎている」


「愛在ればこそ……ですね」


 そんなもので華黒が出来るなら、世の中に苦労は無いわけで。


 結局なんなのか?


「もしかして僕って恋人甲斐が無かったりする?」


「どうでしょう。不満は覚えますけど……約束を忘れたりはしませんよ?」


 ――華黒の手を取って世界を見る。ソレさえ叶わなければ、華黒の隣で死ぬ。確かにそう契約した。そうしなければ僕は僕で居られなかっただろう。


「それが華黒を追い詰めてるの?」


「嬉しい悲鳴という奴です」


 和やかに笑う愛妹よ。咲く花の趣きは確かに華黒。黒く……淀んで……けれど華。ブラックローズは不可能の証左。あらゆる不条理の圧縮だ。


「兄さんはヘタレです」


「純情と言い直してくださいませ。っていうか華黒だって『そういうこと』は怖いくせに」


「ま、私たちの場合は過去が過去ですし」


「そうだね。だから華黒だけが僕を愛せる。華黒だけが僕を守れる」


「逆ですよ。兄さんだけが私を守れるんです。私は兄さんを守り切れなかった」


「そっかな? でも現にこうやって幸せだし」


「兄さんが魔法を解いてくれたおかげですよ」


「魔法……ね」


「愛していますよ兄さん。ソレはもう存分に」


「結局其処に集約されるんだよねぇ」


「だって運命の人で白馬の王子様ですよ?」


「飼育委員《いきものがかり》か」


 オンマカシリエイジリベイソワカ。


「お姉さ~ん」


 はいはい?


「お姉様の太ももの感触は?」


「最高です」


 グッとサムズアップ。


「次はキャッチボールしましょうよ~」


 構いやしませんけどね。ルシールのルシール加減も大概だろうし。


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