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「……………お姉ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
花は見舞い用なのだろうおずおずと渡されて、ありがとうと礼を言うと嬉しそうに笑う。
本戸の方は果物を持ってきたようだ。
「すみません。この子がお見舞いに行くって言うことを聞かなくて」
「いえ、わざわざありがとうございます」
本戸は心配そうにこちらを見てくる。
「他の生徒さんたちもまだ見つかっていませんし、心配だとは思いますが自警団と協力して探していますので安心してください」
「は、はい」
「お姉ちゃん。また遊んでくれる?」
私の横に座って、じっと上目遣いで見てくる小井木に少し違和感を覚えるが頷く。
なんだろう。この違和感は言葉では言い表せない何か。
「……うん。怪我が治ったらね」
「!!分かった!!」
にこにこと笑って、私にしがみついてくる。
「こら、神威。小野寺さんは怪我をしているんだよ」
「わー」
べりっと引き剝がして、あまり長居しても負担になると思ったのか本戸は小井木を抱っこして挨拶をして出ていった。
「…………………私はもう少し、伝承について詳しく調べてみるよ」
「僕も手伝います」
そう言って二人は行動し始める。
私はと言うとまあ、安静にしていなさいと言われたので布団に横になった。
誰もいなくなって静かな空間。
きょろきょろと周りを見てみると、床の間に飾ってあった掛け軸の絵が変わっていた。
あれって確か……。
ぼんやりとしていたせいか睡魔が襲ってきた。
『第二幕!始まり始まり!!』
「!?」
ハッと目を見開く。
いつの間にか椅子に座らされていて辺りを見回せば、何処かの屋敷の中であると言うのが分かった。
中央には対面で置かれている二つの椅子とその間にある円盤状のテーブル。そして、そのテーブルの上にはあの烏が止まっている。
『第二幕は噓つきを見つけろ!対戦相手は狐!狐である!始まりの鐘が鳴る!!さあさあ、遊戯の始まり始まり!!』
その言葉に恐怖を思い出す。
「おや、今回もお嬢さんは怪我をしているようだね」
「!?」
後ろから声がする。
「………ああ、狼と鬼ごっこをしたのか。可哀そうに」
そっと肩に手を載せられる。
カタカタと体が震えているのに気付いたのか、こちらを安心させようと話しかけてくる。
「ああ、安心したまえ。私は命を取ることはしないから」
「ひっ」
くるりと椅子が回転させられて、正面から相手を見ることとなった。
赤みのかかった黄色の長い髪。その頭の上には狐耳があり、瞳は赤く輝いている。
服装は白い狩衣に紫色の袴。七宝の模様が刺繍されていると見ていると、後ろには髪色と似た尻尾があった。
「おやおや、そんなに怖がらなくても」
クスクスと私の様子を面白かったのか笑っている。
「遊戯の鐘はまだ鳴っていないようだね」
折角だし、お喋りをしようと私を抱き上げて、中央の椅子に座らせる。
「何か質問は無いかな?」
対面の椅子に座り、こちらに問い掛けてくる。
「…………貴方は巫女塚伝説に出てくる巫女に仕えた狐で合っている?」
「ああ、そうだね」
やはり、そうか。教授の言っていたことが本当のようだ。
巫女が従えていた妖の一人、狐。
烏の言葉から推測してこれからまた遊戯が始まるのだろう。
「おや、もう質問は無いのかい?」
「………何故、その、こんなことをしているんですか?」
「こんなこと……、ああ、遊戯のこと?」
そうだねと面白そうに笑う。
「愉しいから」
「……………たのしい?」
そう。私たちは暇でしょうがないんだよ。あの日以来、愉しいことは人間で遊ぶことしか思い浮かばなかった。まあ、今回に関しては。
「余興の一つと考えてくれてもいいんだよ?」
「余興……」
「ふふっ。訳が分からないみたいだね。じゃあ」
賭けをしようじゃないか?お嬢さん。




