第六幕 賭けと嘘つき探し
賭け?どうして、賭けを持ち出す?意味が分からない。
そもそも、何を賭ける気だ?
ごくりと唾を飲み込んで、じっと狐を見ていた。
その時だ。またあの恐ろしい鐘の音が響き渡る。
「……………さて、遊戯の始まりだ。と言いたいところだが、余興をお見せしよう」
ぱちんと指を鳴らすと地鳴りが響き渡る。
驚いてキョロキョロと周りを見回すと隅の方から何やら下からせり上がってきた。
……………檻なのかな?でも、なんで?
しかも二つ。暗くてよく見えないが何かいるようだ。
すると、対面で座っていた狐がいつの間にか傍にいて、急に抱き上げてきた。
「な、なに!?」
「ふふっ。あの中にいるのが何か気になるだろ?」
そう言って、檻の方へ歩み寄っていくとそこには。
「お、小野寺!?」
「うそ!?」
そこには行方不明になっている二人のゼミ生の姿があった。
泥だらけで何か所か怪我をしているようだ。
どうして、ここに?それになんで檻の中にいるの?
訳の分からない私の様子を見て、面白そうに笑う狐が説明してくれた。
「狼の遊戯を運よく逃げられたようなんだけど、私の屋敷でオイタしていてね。捕まえたんだ」
ああ、他の人間達は次の遊戯へ進んでいったよと言う。
やはり、皆は遊戯に巻き込まれたんだ。しかし、何でこの二人だけ残された?……いや、先程オイタをしていたと言っていた。それが要因で閉じ込められているのか。
「それで君が来たから丁度いいと思ってね。賭けるのはこの二人の命だ」
「!?」
遊戯で君が私に勝てば、二人の命を助けよう。もし、負けたなら。
「この二人を食べてしまうからね」
悪寒が走る。
囁くような甘い声には冷徹さが染み付いている。
「まあ、遊戯をしないことには始まらないね。そうだなぁ、では質問をしていこうか」
くるりと方向を変えて、また中央に戻っていく。
檻の方を見ると何かを叫ぶ二人の姿があったが声が聞こえない。
すとんと席に座らされて、狐はにこにこと楽しそうに笑いながら話しかけてくる。
「ここでは私の質問に君が答えてもらう」
「……………それだけ?」
「うん。質問は五つ、全問正解したら遊戯は君の勝ちでいい」
先ほど言った通り、二人の命は助けようとも言ってくる。
どうにもきな臭いが、遊戯に勝たない限り自分もこのままなので乗るしかない。
「分かった」
「じゃあ、始めようか」
そして、始まった質問。難問が来るかと思えば違った。
「この村の名前は?」
「ひ、姫塚村」
正解
「この村の伝承の名前は?」
「……………み、巫女塚伝説」
正解
「巫女は何人?」
「二人」
正解
簡単すぎる質問ばかりだ。どういうことだ?
疑問が頭の中でぐるぐると回っている。
「じゃあ、巫女が従えた妖怪の数は?」
「ご、五人」
正解
本当にどういうつもりだ?もう、四問目まで来ている。
簡単すぎて何を考えているのか全く分からない。
そもそも、これを遊戯として定義は合っているのだろうか?
確か、あの烏はこういったはずだ。
「じゃあ、最後の質問だ」
『第二幕は噓つきを見つけろ!対戦相手は狐!狐である!始まりの鐘が鳴る!!さあさあ、遊戯の始まり始まり!!』
「あの二人のうち、どちらが嘘つきでしょうか?」
「…………………………え?」
息が止まる。思考がストップしてしまった。
嘘つきはどっち?どういうこと?
「君には今からあの二人の話を聞いてもらって、どっちが嘘をついているのかを解いてもらう」
「ま、待って。嘘をついているって言うけど何の嘘をついているの?」
狐はにこにこと変わらずに笑みを浮かべながら、最初に言ったじゃないかと答えた。
最初?二人が何で檻にいるのか……………、そうだ。狐は二人がオイタをしていたから捕まえたと言っていた。もしかして、そのことを言っているのか?
「いやー、こんな真っ暗な屋敷の中でオイタをするとはね」
困ったようにため息をつく狐に対して、冷汗が流れる。
恐らくだが、これが本当の遊戯なのだろう。四つの質問はあくまで前座に過ぎない。
狐はそんな私のことをお構いなしにまた抱き上げて、二人の元へ近寄っていく。
「それぞれから話を聞いていこう。二人いっぺんに話をするとややこしくなるから、話を聞くときは相手の声が聞こえないようにしておくよ。ああ、君から質問するのも許可しよう」
「……………分かった」
そして、二人の話を聞いていく。
「わ、私は何処かに出口がないか屋敷の中を探していたの。結局、何も見つからなくて、そ、そいつに捕まった」
まずは彼女の話を聞いた。青褪めていてオドオドとしている。
「お、お、俺は出口がないかバラバラで探していた。そしたら、捕まって……………」
次は彼の話を聞くが、どこにも嘘をつくようなものがない。
「……………なんで捕まったの?狐はオイタをしたって言っているけど?」
そう質問すると二人の様子が変わった。
「そ、そんなの分からないわよ!!ただでさえ、暗い中で手探りで探してたんだからっ」
「み、見つからなくてつい、イライラしちまって椅子とかを蹴飛ばしたりはしたけど……………」
二人して目が泳いでいる。何か隠しているのか?
読心術のような特技は無いから分からない。そんな私の様子を見て急かす様に彼が話す。
「なあ、早くここから出してくれよ!嘘をついているのはそっちだっ」
「……………どういうこと?」
「あの女が出口を探していると思ったら部屋の中で何かを物色しているのを見たんだ」
「何かを?」
「そ、そうだ」
…………………………これだけでは嘘つきが分からない。
彼女の方にも話を聞かないと。




