第四幕 遊戯に迷い込むモノ
夢を見た。
草原の中で座り込む子どもの時の私の隣に黒く靄に包まれたモノがいた。
「ねえ、○○様。わたしね、ここの景色が好きなの」
「…………………………」
ノイズしか聞こえてこない。
覚えのない記憶だ。
しかも、話しかけているモノに不気味さを感じる。
今までこんな夢を見たことがなかったのに何故?もしかして、姫塚村に何か関係しているの?
「…………………………!」
はっと目を開ける。薄暗い中でも天井が見えて、ほっと安堵する。
ああ、夢から覚めたのかよかった。
起き上がり、着替えを済ませて朝食を食べるために部屋を出ようとした時だった。
「……………こんな飾りあったけ?」
部屋の天井に桜の花飾りが吊るされている。昨日までは無かったものだ。
もしかすると、女将が飾ったのだろうか。
そんなことを思いながら、部屋を出た。
しかし、この時にはもう異変が起きていることに私は気づかなかった。
食事を終えて部屋に戻ろうとしたら呼び止められる。
「え、いない?」
「はい。小野寺さん以外の子たちが昨日から戻っていないようでして」
恐らく、道に迷ってしまったのではと深山が説明してくれる。
作業を人に押し付けて何やっているんだろうと思っていると村人の一人が駆け込んできた。
「た、大変だ!!祠が!!!」
祠が開けられていて、そこに飾ってあった木彫りの人形がなくなっているという。
「えらいこっちゃあ」
「どうする?このままじゃあ」
「と、とにかく村長に相談しねぇと」
ざわざわと騒ぐ村人たちの後ろで見ていると神田が隣に来て、声をかけてきた。
「小野寺さん。これ」
「え……………、それって」
スマートフォンを手にしていた。かなり泥で汚れている。
「草むらに落ちていたんだ。パスワードもかかってなくて、中見たら」
そこには動画が映し出されていて、木彫りの人形を破壊する場面が残っている。
「これ……」
「うん。先生にもさっき話をしてきて、村の人たちと皆を探すことになったんだ」
「私たちも探さないとだね」
これは悪ふざけとかでは済ませられない。
「うん。でも、これの他にも動画があってね」
違う映像の中には森の中を走っている場面であった。まるで、何かから逃げているようだ。
『はあはあ、な、なんだよ!あのバケモン!!』
『し、知んないわよ!!!それよりもどうすんのよ!』
『走っても走ってもここから出れねー!!』
『もういや!!!!』
そんな中で烏の鳴き声がする。
『ひい!!来たっ!!』
その言葉を最後に動画は終わった。
「……………何かに追われていた?」
「そうみたい。しかも、ほら見てよ」
動画を巻き戻して、とある場面を見せる。
「この地蔵のことを聞いたんだけど村人の誰も知らないっていうんだよ」
「え……………」
どういうこと?
それを聞こうとしたときに深山から声を掛けられる。
「みんなー、どこー!!」
「おーい!」
私と神田とペアで皆を探していた。
あまり村から離れないように注意をしながら歩いていると神田が何かを見つけた。
「これ」
それは映像に会った地蔵であった。
「ここにあるってことは皆はここを通っているってことだね」
「うん。それと……」
その地蔵の元には血まみれの男性用のサンダルがあった。
「!」
ひゅっと息を飲む。
「これは……」
すると、ざわっと風が強く吹く。
瞬間的にぎゅっと目を閉じてしまった。
風が吹き続き、止んだところで恐る恐る目を開けるとそこに広がる景色に絶句してしまった。
先程まで晴れていた空は赤く染まり、森の中は暗く霧が舞っている。
な、なんなの?神田君は!?
隣を見ると先程まで一緒にいた神田がいなくなっていた。
キョロキョロと周りを見ても誰もいない。
「だ、誰かいませんか!!神田君!深山教授!!」
大声を出しても静寂だけが広がる。
「ど、どうしよう」
とりあえず、村へ戻ろう。
歩き出そうとした時だった。
『さあさあ、遊戯の始まり始まり』




