第十六幕 最初の一歩前
「あの部屋はね。涙子のための部屋になんだ」
彼女は西洋に憧れていてね。
ベットに天窓でレースが垂れるのや装飾の施された桐たんす。
天井から飾りが見えるのが楽しいと。
全ては彼女の為。
「村人も偽物だよ?もっとも、数十年前から既に変わっているよ」
ああ、あいつらは自分を人間だと思い込んでいたから普通に暮らしていたみたいだけど……。何年も老いることなく生きていたのに矛盾を感じなかったのかな?
「う、嘘よ!!だ、だったら」
遊戯で拾い上げたヒントは何だったのだ!?と叫ぶ彼女に愉快そうに笑う。
「ああ、あれは嘘だよ。君たちを上手く誘導するために作ったんだ。法具を持ち出して破壊してくれてありがとう。おかげで力が戻ってきた」
伝説は歪んだ。
村人に都合がいいように書き換えられた。継ぐべき真実は闇の中。
全て、人間が作り変えてしまった。
本当に愚かで浅ましい。でも、こちらは都合がよかった。
「さて、これにて遊戯も終わりだ。愉しかったかい?」
「あっ、あ……………」
女はへたり込んでいた。
ガタガタと震えて、涙を流しながら死にたくないと叫ぶ。
そんな彼女の姿を見ていたら、自分もどうなるか想像したくないことが浮かび、体を震わす。
「安心しなよ。君には遊戯の勝利者として褒美を出そう」
「!そ、それって」
「うん。願いを叶えよう」
そう言われた彼女はさっきの怯えとは打って変わって嬉しそうに言う。
「こ、ここから出して!」
「金や永遠の美ではなく?」
「そうよ!だって、何の為にあいつらを犠牲にしてここまで来たと思ってんのよ!」
犠牲。つまり、他のゼミ生を蹴落として彼女はここまで来たのか。
「うん。じゃあ、ここからは出してあげる」
……………なんで、そんな含みのある言い方をするのか。
「あ、あははは!これで出れる」
あんたはざまあ無いわね!ここから出れないんだからとこちらを嘲笑する。
そんな彼女の拘束を解き、足元には魔方陣が現れて姿を消す。
「……………本当に馬鹿な虫ですね。」
「幽楽の世で人間が一人いるのって餌しか思えないのにね」
「!?」
どういうことだ?元の場所に戻したのではないか?
そんな私の考えが分かったようにくすくすと笑いながら、神薙は口を開く。
「だって、あれは遊戯の世界から出してって言ったんだよ?元の世界に戻るなんて一言も言ってないでしょ?」
「!」
確かにそうだ。でも、そうなると彼女は。
「ああ、あんなのにも心配するなんて君はやっぱり優しいね。狐」
「はい」
私を抱き上げていた彼が神薙へ私を渡す。
「うん。怪我は治ったみたいだね、安心したよ」
湖に落ちた君を見て胸が張り裂けそうになったんだと言う彼にああ、遊戯自体が仕組まれていたのだと実感した。
自分がどうなるのか想像したくない。けど、逃げられないのは馬鹿でも分かる。
「ふふっ、安心してよ。別に取って食べない」
落ち着かせる為なのか頭を撫でてくる。しかし、それで安心など出来るはずがない。
「涙は遊戯に負けちゃったし、ここから出れない」
「…………………………っ」
どうなってしまうのだろう。
これからのことを考えるともうそれしか考えられない。
酷いことをされるのか?それとも遊戯でまた甚振られるのか?
余りにも悲惨になる実を想像して……。
「おっと、気絶しちゃったか」
目の前が真っ暗になって失神してしまった。
「丁度いいから。準備をしようか」
『はい。我が主』




