第十五幕 過去の真実
これは遥か昔の話である。
村はずれに住む涙子という少女は両親を早くに亡くし、一人で暮らしていた。
村の連中はそんな彼女をあまり良くは思ってはいなかった。
何故かって?
月ノ御子に関わっているから。
「御子さま!今日もお疲れ様です!」
「いつもありがとう。涙子」
ふらっと立ち寄った先で嬉しそうに挨拶をする彼女は他の村人たちのように嫌悪や侮蔑の目をしていなく、とても綺麗で眩しかった。
そして、自分のような物にも優しくて、彼女の家で一休みをさせてもらっている。
「いつもすまない」
「いいえ!御子さまがいるから村は守られているんです!これぐらいお礼をさせてください」
にこにこしながらお茶を運んでくる彼女の好意に甘えさせてもらっていた。
この頃から日ノ巫女の傲慢さが酷くなってきていた。
自分をまるで神か何かと思っているのだろう。月ノ御子である自分でさえ、自分の所有物であり命令に従うのが当然だと思っている節がある。それが煩わしくて、村の外れまで来て妖たちを狩って夜遅くまで村には近づかないようにしていた。
「…………………………その花は?」
「ああ、山に山菜取りに行ったときに傷ついた犬が居まして手当したら、家まで花を持ってきたんです」
台所に花瓶が置いてありそこには菫の花が飾ってあった。それだけならそんなことあったんだとで終わらせられるが、そこから微かに妖気を感じてしまった。
ただの犬ではない。妖だ。
「涙子。周りには動物に化ける妖もいるから気を付けて」
「?はい」
突然のことで首を傾げながらも返事をしてくれる彼女が愛おしかった。
「……………そういえば、涙子。あの話、考えてくれた?」
「あ、えっと。隣村で暮らすことですよね」
そう。自分に関わっている涙子は村人たちからは嫌われていて、村八分の状態になっている。そんな彼女がいつ日ノ巫女とかから何をされるのか心配で引っ越しを進めていた。
「僕も近々、妖を式にして村のことをそいつらに任せようと考えているんだ。そしたら、その、一緒に暮らさないか?」
「そ、それって」
かあと顔を真っ赤にする彼女を微笑ましく仮面の中ではあるが笑みを浮かべた。
「返事は後でいいから。考えてくれないかい?」
「…………………………は、はい」
しかし、それは叶うことは無かった。
そして、僕は式に下した妖たちを従えて、妖退治をしていた。
「ねえ、御子さま。お姉ちゃんのところ行っていい?」
「駄目に決まっている。食べようとするだろ?」
「ちえ」
狼はかつて彼女が傷の手当てをした妖だ。心優しくて自己犠牲があるのが心配ではあるが、どうにも他の奴らも彼女に接触したことがあるらしい。
しかし、これらを会わせるつもりはない。あの純粋無垢の魂こそ、大好物であるからだ。
「しかし、村は騒がしいですね」
烏が面白そうに話す。
そう、日ノ巫女が月ノ御子こそが元凶だと言いふらしている。
あまりにもお粗末な考えであるが村人たちは逆らうことは無い。だが、もし殺される状況になったら自分の力で身代わりを作り出し、死を偽装して彼女と村を離れることができる。
「…………………………」
けど、何でだろう。
嫌な予感がする。




