第十二幕 明かされる人間たち
地図を見ながら森の中を歩いていく。
迷うかと思いきや道が開けていたり、描かれた目印が点々とあったりしてあっさりとその場所に辿り着いた。
「……………ここが」
そこには木材で出来た真新しい家があった。
あまり風景には馴染んでいない西洋風の家。名札には蛇の目が書かれている。
「……………入ってみる?」
「そうだね」
そっと戸を開く。玄関があり、廊下の奥に部屋が一つあるのが分かった。
土足でごめんなさいと思いつつ、そのまま中に入る。誰かがいる気配もなく、その部屋の戸に手をかける。
「…………………………え?」
そこは自分が宿泊していた部屋にそっくりだった。
天井に飾りが吊り下がっていて、床の間には屏風、桐たんす。それに鏡台、木材で作ったようなベットもあった。
「…………………………なんで?」
どうして、旅館の一部屋とそっくりなんだ?
「これは……、小野寺さん。部屋の奥、見て」
「え?」
視線を向けるとそこには住職の屋敷で見た人形が椅子に座ってこちらを向いていた。
顔は真っ黒でやはり不気味に感じる。
「どういう事だろう。これがヒント?」
そんなことを呟く神田の足元からカサリと何か音がする。
二人して視線を向けるとそこには写真となにやら新聞記事があった。
恐る恐るそれを拾い上げるとそこには。
「…………………………わ、わたし?」
写真の中には私そっくりの女性が立っていた。服は着物で町娘のようだ。
「これは……」
神田の方は新聞記事を読んでいた。
そこには住職から話を聞いた行方不明者のことが書かれていた。
男性五人の顔と名前が……。
「え……………?」
【行方不明者:小井木…、源野…、錦織…、……、本戸…】
その苗字の殆んどに見覚えがある。
小井木神威、源野伊吹、錦織翠、本戸琉太……。
姫塚村に住んでいる人たちのだ。しかし、なんで彼らは自分たちの親族に行方不明者がいると言わなかったのだろうか。
「…………………………もしかして、成り代わったのかも」
「それって妖たちのこと?」
「可能性はあるよ。でも、なんでそんなことを?」
そんなことを話していると後ろから声がする。
「ああ、お二人とも!ご無事でしたか!!」
ばっと振り返ると無傷の本戸が立っていた。
「ほ、本戸さんも遊戯に?」
「ええ。深山さんとは別々になってしまい、迷いに迷ってここに辿り着いたんです」
いや、よかったと近寄ってこようとする彼に神田が待ったをかける。
「それは嘘ですよね?」
「え、な、何が?」
「迷っていたのならなんでそんなに綺麗なんですか?」
「!」
そうだ。あまりにも綺麗すぎる。
先ほど見た村人のように切り傷や泥が撥ねたような汚れがあってもおかしくは無い。なのに、彼の服にも手にも傷どころか汚れが見当たらない。
「…………………………ああ、うっかりしてました」
その瞬間、本戸の姿が一変する。
「久々に高揚する気持ちをなんとか抑えようとして裏目に出てしまいました」
狐が残念そうに笑っていた。
「やっぱり、成り代わっていたのか?」
「ああ、記事を読んだんですか?ええ、ちょっと、苗字を拝借しました」
あっさりと成り代わったことを認めた。
しかし、ここで対峙したのが運が悪い。
後ろは部屋で行き止まりだ。出口は狐が立ちふさがっている。
どう、切り抜けようかと思案していると狐が動いて横にずれた。
「どうぞ。お通りください」
「……………どういうつもり?」
「あくまでも私たちは邪魔をする仕事なんですけど、私は化けて惑わす気でいたのですがバレたので潔く道を譲るべきだと判断しました」
にっこりと笑ってさあ、どうぞと手で促してくる。
私たちはふと目を合わせてどうするか思案するが、いつまでもここにいても意味は無いし、村人たちに見つかるリスクがある。
…………………………狐の言葉を信じるしかないか。
恐る恐るだが狐の横を通る。…………………………が。
「!?」
「ちゅっ。お嬢さんに幸あらんことを」
不意にグイッと腕を引っ張られて頬に口づけされる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!????」
唐突なことに顔に熱が集まる。
直ぐに腕は離されてきっと睨みつけるが愉快そうに笑う彼に対して何を言えばいいのか分からずそのまま家を出る。
「…………………………面白いことになってきましたね」




