11-3
祭りの広場。矢倉を組んで、周りには花や焚き火用の薪が置いてある。
準備をしていたはずの村人たちは手を止めて、とある人物に注目している。
そこには全身泥まみれ、所々黒いシミがこびり付いている。
目は血走っており、興奮状態なのか息が荒い。
「お、おい。あんた」
「うるせぇ。早く村長を呼べよ」
恐る恐る話しかけるも村長を呼べとしか言わない始末。
近づきづらいため、困っていたタイミングで本戸たちが走って近づいてきた。
「ああ。本戸様」
「彼が?」
「は、はい。突然、現れて村長を呼べと」
現れたということは遊戯に勝って出てこれたということか。
しかし、今更なぜここに現れたのか?
そんなことを考えていると彼と目が合った。そして、血走っていた目がかっぴらいてこちらに怒号を浴びせてきた。
「なんでお前、死んでないんだよ!!」
「…………………………え?」
「崖から落ちたのになんで生きてんだよ!?」
その言葉に頭が一瞬止まってしまった。
それは、彼が私を殺そうとした犯人だと言うこと示している。
さあと青褪め体が勝手に震えてきてしまい、そんな私の様子を見た神田が前に出て彼から視界を遮ってくれた。
「それは君が小野寺さんを殺そうとしたってことだね。なんで、そんなことを?」
神田が落ち着いた口調で問い詰めると彼は眉を吊り上げて怒鳴り続ける。
「うっせ!!そもそも、こんなことになったのもそこの女のせいだろーがよ!!!」
日ノ巫女の生まれ変わりのくせに!!
…………………………?どういうことだ?なんで、私が日ノ巫女に?
意味が分からないまま、彼は続ける。
「そいつをぶっ殺して妖たちに献上すれば助かるって聞いたんだよ!」
「…………………………え」
「頭がおかしくなったのかい!?」
「うっせ!!全員してお前を殺せば、全て終わるんだ!!!おい、そこの女は日ノ巫女だ!また、災いが起きるぞ!その前に殺せ!!!」
指を指してくる。
そんな彼の言葉を村人たちはここ数日の不安が募っているせいで正常な判断が出来なくなっていた。………………いや、おかしくなっていたと言った方がよいか。
村人たちは余所者が伝説に関して研究していることがあまり良く思っていなかった。
そんな中で祠を暴かれる。その中の人形は壊れる。そして、大切な法具まで無くなってしまった。
平凡で平穏だった日常が変わってしまい、不満と不安がまるでコップに水が注がれるかのように溜まっていた。
「日ノ巫女?」
「あの女が?」
「また、伝説みたいになっちまう」
「ああ、ああ、いけない」
「こ、ろせ」
「殺せ」
「日ノ巫女を殺せ」
「そうしないと俺達が殺される」
「殺せ!」
「「「「「「「「「「日ノ巫女を殺せ!!!!」」」」」」」」」」
まるで洗脳されたように村人たちが襲い掛かってくる。
あまりの突然のことに足が竦んでしまう。そんな中で深山と本戸の二人が前に出て両手広げてなんとか村人たちを止めようとした。
「落ち着きなさい!!彼女は日ノ巫女じゃない!!!」
「神田君!小野寺さんを連れて逃げるんだ!!」
「は、はい!!小野寺さん、こっちだ!!!!」
手を握られ走り出す。
森の中へ逃げ込んでどんどんと奥へ進む。
「はぁはぁ、こ、ここまでくれ、ば、ひ、ひ、とまず、だ、だい、じょう、ぶ、かな?」
はあはあと二人して荒い息を吐いて、息を整える。
「ど、どうして、こ、こんな、ことにっ」
急転換すぎるっ。
なんで彼は私を日ノ巫女なんて言ったんだ?おかしいだろ。
「…………………はあ。た、多分だけど、彼は誰かに、唆されたと、思うんだ」
「だ、誰かに?」
そんな中で村の方から放送が響き渡る。
『日ノ巫女が現れた!殺せ!日ノ巫女は災いを招いた!早く見つけて殺せ!!!』
怒号とともに村人の声が後ろから聞こえてくる。
もうどうしてこうなってしまったんだ。
村に残った本戸と深山は無事だろうか……。
不安の募る状況下であの声が響き渡る。
『第四幕!第四幕の始まり始まり!』




