11-2
「えー!」
眉を顰めて私に抱き着く。
しかし、このままでは子どもには聞かせられないことばかりが話されるだろう。
「えっと、小井木くん?」
「神威!神威だよ、おねえちゃんっ」
「か、神威くん。ごめんね。お姉ちゃんたち、これからお仕事の話をしないといけないから」
申し訳なさそうに言うと彼も聞き分けはいいのか眉を下げて、しょうがないなと言ってのろのろと下りる。
「これが終わったら一緒に遊んでくれる?」
「う、うん。いいよ」
「!じゃあ、約束ね!」
そう嬉しそうに言って、部屋を出ていった。
そんな彼の後ろ姿を見送り、さてと話を始める。
本戸と深山はずっと伝説のことに関して調べを進めていたようだ。
それで私がメモ書きした内容と話の内容を照らし合わせをして、やはりおかしいと言った。
「恥ずかしながら、長年この村に生きてきたもののとしてこのようなおかしいところが出てくるとは予想していませんでした」
「じゃあ、やはり伝説はおかしいと?」
「はい。深山さんや神田君からの話で食い違いがあることが分かりました。それで蔵に残っている資料を全部読んでみたところ、こんなのが見つかりました」
それはボロボロの紙の束であった。
字は歪んでいるせいで見づらく所々、破れてしまっている。かなり年季の入ったものなのだろう。
―吉凶の兆し、○○ケに……………、子らを巫〇と〇子にした。ナゼ、……………、ア〇テラ○○オ○○ミと〇〇ヨミノ〇コトを○○○○いるという。バチが○○ないと…………
―ああ、これは〇〇だ。あいつが、○○が、スベテ、ニゲ…………………………
何とか読めるところを読んでみると確かにこれは……………。
「……………………巫女の字が二つ?」
「はい。これだけが巫女の字が違うんです」
他の書物には全て巫女と書かれているのに引っ掛かったと言う。そして、ついでとばかりに深山が口を開く。
「この後に続くのは恐らく天照大御神と月読尊のことだと思う。だから、日ノ巫女と月ノ巫女と呼ばれるようになった。けど、これはもしかしたら、二人の性別を表しているんじゃないかと思うんだよ」
性別?どういうことだ?
「……………天照大御神は女性、月読尊は男性で表現されることがあったからですか?」
「え?」
「そう。だから、月ノ巫女は女性ではなく男性だった可能性がある」
「ちょ、ちょっと、待ってくださいっ」
それじゃあ、住職が見せてくれたあの絵がおかしくなる。
「そうなんだ。ただ、確証はない。でも、ここまで矛盾があると伝説自体がおかしいっていうことが大きくなるんだ」
ましてや、自画像も名前もない。女性だと勘違いしていたのがもしかしたら、男性だったとしたら伝説は偽造されたものになる。でも、何でそんなことをしたのか?
「……………恐らく、自分たちに都合がいいように作ったんだと思います」
本戸が苦虫を嚙み潰したよう眉を顰めながらそう言う。
妖たちを封印されて、元に戻った村人たちの中にはこの悍ましいことを果たして法師に言われた通りに果たしてそのまま書くだろうか?自分たちがまるで被害者のように書くこともできたとしたら?
何故、そう思うのか問えば、ボロボロのメモのようなものをテーブルに置いた。
―こんな、こんな、こと、か、か、、、、、、、、、、、な、い、。だ、、、、、だ、、、れ、、、わ、、、、、、、、ら、、、、、な、い。
これも字が歪んで見づらい。そして、字の間隔があいているのが気になるが読み取れる文字をつなげてみると。
「……………こんなこと書けない。誰も分からないでしょうか」
「ええ、そうだと思います。それにこれは蔵の奥に隠されるようにしてあったんです」
これで伝説自体が捏造された可能性があるのが濃くなったと言う。
「でも、なんで……………」
とそんな時だ。
バタバタと廊下から慌てたように足音が響く、そちらを見るとそこには村人が慌てたように入ってきた。
「た、大変だ!!」
「どうしました?」
「ゆ、行方不明だったあんたの生徒が見つかった!!!」




