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「…………ああ、あの村人が残した物を見たのですね」
すうと目を細めて笑う彼にびくっと肩を震わすと、そんなに怯えなくても大丈夫ですよと頭を撫でて宥めようとしてくる。しかし、それも私にとっては恐怖でしかない。
体の自由を奪われている中でいつどうなるか分からない。
「そうですね……。答えるならば、村人たちの目にはそう見えたのでしょうね」
答えになっていない解答に疑問が浮かぶ。
「………どういう意味?」
不意に言葉が漏れてしまった。
その言葉に対してまた答えてくれる。
「人間と言うのは歪むものです。どうでもいいことを正確に覚えていることなんて何人いるのでしょうか?」
ただでさえ、ここにいた村人たちは自分が正しいことをしていたと固定概念がある。
日ノ巫女と月ノ巫女の存在は村の安泰のために存在していた。
月ノ巫女は女性だ。
正しいことを言っていたのが日ノ巫女だ。
自分たちは悪くない。
間違っていない。間違っていない。
唆したのが悪い。間違っていない。間違っていない。
間違っていない。間違っていない。痛い。間違っていない。いたいいたい。まちがっていない。
そんな中で自分たちが本当は間違っていたと果たして反省するでしょうか?
「…………」
言葉が出てこない。
自分ではない他者がどうするか分からない。愚かなことをしたと反省する人が誰もいないなんて思いたくはないがあり得ることではある。
「月ノ巫女の顔を誰も覚えていなかった。生んだ母親でさえも。しかし、日ノ巫女はどうだったのでしょうね?」
まあ、一緒にいた時間があったからもしかしたら覚えていたかもしれませんね。
つらつらと話をする彼の言葉を理解しようとしても上手く呑み込めなかった。
「折角、手がかりを遊戯の中に入れたのに邪魔されましたね」
やれやれと肩を竦める。
「……手がかり」
「ええ。例えば……、我々を封じた法具とか」
「!」
本当か嘘か分からないが、盗まれたとされている重要なモノが遊戯の中にある。
「しかし、あの人間達も大胆なことをしますね。確かに遊戯の中に色々とヒントを散りばめましたがまさか法具を盗んでくるとは」
人間が何を考えているのやらと面白そうに話を続ける。
「……………、ヒント?」
どういう事だ?自分が遊戯に参加したときにはそんなもの無かったはずだ。いや、もしかしたら見逃しているだけなのか?
しかし、あんな中で周囲を見ろと言われても無理だっただろう。
「ふふっ、気になることが増えましたか?」
さらりと私の髪を一束摘まんでは梳くように指に絡める烏は面白そうに笑う。
「………何でそんなことまで私に話してくれるの?」
当然の疑問だ。
ゲームマスターとしてはこんな話をしない方がいいのではないか。
そんな私の考えがわかったのか彼はまた微笑みを浮かべる。
「何でですか。それは貴方は特別だからですかね」
答えになっていない。追求しようとするが彼の人差し指が唇に触れる。
「もっと貴方とは話したいですが、そろそろ時間ですね。間もなく、遊戯は終わる。生き残ったのは…、いないようですね」
鬼が容赦なかったのがいけなかったですねと呟く言葉に目を見開く。
つまり、全滅したということ。
「知ってますか?我々は恐怖や悪意に満ちた魂を持つ人間の肉も好みますが、純粋で無垢な魂を持った貴方のような人間の肉が大好物なんですよ」
では、また会えることを楽しみにしていますよ?可愛らしいお嬢さん。
『第三幕、かくれんぼは終い!終いである!!!』
烏の背後からは遊戯を知らせる烏がいて、声を轟かせる。
それとともに目の前には彼の掌が置かれて次第に眠気が襲ってきて、私の視界は真っ暗になってしまった。




