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巫女塚伝説  作者: 由紀乃
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17/19

9-2

『○○様!お疲れ様です!』


『…………………………』


『あ、この薬草とかですか?山で山菜取りしていた時に怪我した動物を手当てしたんです』


『…………………………』


『ええ!いい子でお礼に取ってきてくれたんです!』


『……………、…………………………』


『え?この柊の葉を?魔除けで?』


『…………………………』


『―――――――っ、ありがとうございます。巫子様』






「…………………………ええ、何処かの虫けらのせいで遊戯の範疇から越えてしまい、彼女の参加は不可能になってしまいました。ああ、残っているのは狐で残っていた虫のようですし、そちらはお任せしますよ」


声が聞こえる。

よろよろと瞼を開ける。

ぼやける視野の中、傍で誰かがいる気配がある。


…………………………あれ?私、崖から落ちて気を失って……………、



「おや、目を覚ましましたか?」


「!?」


ひょこりと視界の中に入ってくる。その姿に息を飲んだ。

白みの茶色のロングストレートな髪、サファイアブルーのような深い紫みのある青の瞳。色白の肌に端正な顔。着流しを着ていて一見すると海外から旅行に来た観光客に錯覚を覚えてしまうが彼の背中についているのを見たらそれが人ならざるモノだとすぐに分かってしまった。

ばさりと広がる白い翼。そして、空には多くの烏たちが旋回している。


「運がよかったですね。あのまま、落ちていれば死んでいましたよ」


にこっとこちらに話しかけてくる声は穏やかではあるが、私はそれどころではない。


「あな、た、は」


「ああ、そういえば、初めましてですね。遊戯の監視役……………、ああ、現代で言うところのゲームマスターの烏です。よろしくお願いしますね」


「か、烏……」


「ええ、そうです。本来なら姿を現すことがないように烏を通じて様子を見ていたのですがイレギュラーが発生しましたのでこうして参上した次第です」


イレギュラー。つまり、私が崖に落ちたことが異常事態だったと言うことだ。


「しかし、恩を仇で返されるとは気の毒なことですね」


「…………………………え?」


「ああ、分からなかったようですね。貴方は押されたんですよ。狐の遊戯で生き残った女にね」


その言葉で私は言葉を無くした。

狐の賭けに勝って命は助けられても助けることが出来なかった二人のうち、一人に命を狙われた。


「可哀そうに。折角、命を救ったのに殺されそうになるなんて」


憐れむように見てくる。

さらりと頬を撫でられる。今更だが、体が動かない。

目を動かすことが出来るのだが周りは暗いままであり、自分が地面に横になっていることしか分からない。


「ああ、体はすみませんが拘束させていただきました。ここは幽楽のゆうらくのよですから」

…………幽楽の世?

暗くて分からないですよねと烏はパチンと指を鳴らす。

すると、視界に広がるのはこの世とは思えない幻想が広がっている。

様々な色の灯が空中に浮いており、空には満天の星空。

草木も花も見たことのない色に染まっており、ここが普通でないことを物語っていた。


「ここは私たちが暮らす世界です。例えるならば、監獄のような場所とでも言いましょうか」


「‥‥‥‥‥‥遊戯の世界ではない?」


そう呟くとあれはまた作られた空間ですと返答があった。


「遊戯を行うにあたってこの世ではいささか面倒でしたのでその為の空間を作る必要があったのですよ」


そして、貴方は崖から落ちてしまったことで遊戯の空間から外されて幽楽の世に入ってしまった。

そんなことを説明されて納得はしたものの未だに体が動かないことへの不安が残っている。

「ここにいるのは我々の眷属。つまり、妖と言われるモノたちが徘徊していますので変に動かれては食べられる可能性もありますので貴方が変に動かれては困ります」


困る?どういうことだ?

ここにいる烏もだが、妖たちは人間を喰らう化け物だ。

助けずに死んだ方が逆に都合がいいのでは?と考えてしまう。


「鬼もさぞかし、悔やまれているでしょうね。貴方との遊戯を愉しみにしていたのに」


「…………………それは私が月ノ巫女に似ているから?」


ごくりと唾を飲み込む。

今すぐに殺されることがない。ならば、これはチャンスではないだろうか。

何故、自分が遊戯に巻き込まれたのか。


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