第九幕 遊戯のまくなぎ
周囲の情景が一変する。
部屋にいたのに何処かのお堂の中にいた。
「ほ、本がない」
さっきまで持っていたはずの書物が無くなっていた。
キョロキョロ見回しても何処にもない。
恐る恐る外に出ると木々が茂っており、ここが森の中であるのが分かる。
「ここは何処?」
暗くて自分が何処にいるかもわからない。
『第三幕はかくれんぼ!対戦相手は鬼!鬼である!始まりの鐘が鳴る!!さあさあ、遊戯の始まり始まり!!』
びくっと肩を鳴らす。
振り返るとそこには屋根の上に止まる烏がこちらを見ていた。
遊戯が始まる。
恐怖が蘇り、かたかたと体が震える。
「ああ、来たんだな」
「!?」
前から声がする。
恐る恐る見るとそこには大男が立っていた。
身長が二メートルあるだろうか。屈強な体に僧侶が着るような服を着ている。
炎のように赤い髪はざんばらで、暗闇なのに怪しく光る黄金の瞳。額には鋭い角が二つ生えていることからすぐにこの男が鬼だとすぐに分かった。
あまりにも圧倒的な存在に足が竦む。
「安心しろ。直ぐに取って食うことはしない」
信じられるか。
ぐっと言いかけた言葉を引っ込める。これで癇に障って殺されたらたまったものじゃない。
なんとか足を踏ん張って後退りをする。
「遊戯は烏が言ったようにかくれんぼ。半刻、隠れる時間をやる。その後に鐘が鳴って遊戯を始める。終わりはまた鐘が鳴る」
それまでに隠れることだと淡々と告げられる。
土地勘も分からないところでかくれんぼ。不利すぎる。
しかし、鬼にはそんなこと関係は無い。
「早く隠れないと鐘が鳴るぞ」
『さあさあ!逃げろ逃げろ!!愉しい遊技が始まるぞ!!!!』
「っ!」
鬼や烏の言葉に促されて森の中を走り出す。
全てが木々に覆われている。何処にいるかもやはり分からない。
はあはあとがむしゃらに走る。
遊戯はかくれんぼ。ということは何処かに隠れないといけない。ただし、これは子どもの時に遊んだかくれんぼではない。見つかれば殺される。
どうする?普通に隠れてもバレる可能尾性がある。だが、何処に隠れる?
確か、隠れる時間は半刻といった。だと30分間で隠れないといけない。
走って考えているせいで周りに気が付かなかった。
ドンッ!
「…………………………え?」
ふわりと体が浮く。
視線の先には暗くて底が見えない。
それが崖だと分かった時にはすでに遅く、重力に沿って落ちていく。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
悲鳴を上げるにもどうすることもできない。
どんどんと下に落ちていく中で上を見るとそこには人影があった。しかし、それが誰なのか分からない。
ああ、死んでしまう。どうにも抗えることが出来ない。
涙が滲む。
死にたくない。なんで、なんで………………?
そして、私は気を失ってしまった。




