第十幕 矛盾する伝承と歪んだ真実
『日ノ巫女さま?どうされましたか?』
『―――――――――――――――――!―――――――――――!!』
『え……………。それは』
『――――――――――――――!?』
『か、畏まりました。私が…………………………』
…………………………これは誰の記憶であろうか?
不意に目を開けるとそこには一人の少女らしき影と巫女服を着た影が何やら話をしている。
と言うよりも巫女服を着た影が一方的に話をしているように見える。
話の内容を聞いているとどうやら日ノ巫女のようだが、あの書物で書かれているような人物のようだ。
もう一人の影を観察しているとボロボロの着物を纏っていて、少しオドオドとしているように見える。
声もか細く震えている。
『…………………………』
『わ、私にこれを?』
『……………………………………………………』
『ありがとうございます……………、ああ、綺麗』
場面が変わった。
花々が咲いている場所で先程の少女ともう一人の別の影が立っている。
彼女の手には何やら装飾品が乗せられている。
見える位置に動こうとしても動けずにいると翳す様に手に持ったそれに見覚えがあった。
ちりんと涼やかな鈴の音が響き、赤と白の飾り紐で結ばれていた。
最初、部屋に落ちていた物とそっくり同じであった。
……………そういえば、あれはどうなったのだろうか。
ゼミ生たちの失踪と遊戯のことで頭がいっぱいでそれどころではなかったのだ。
狼の遊戯で走り回ったことでもしかしたら落としてしまったのかもしれない。
『…………………………お慕いしております。○○様』
その言葉とともに暗転してしまった。
「!」
はっと目を覚ました時には部屋の中にいた。
のろのろと上半身を起こす。
遊戯が始まる前に持っていたはずの書物が無くなっている。
折角の手掛かりが失い、命も狙われたことに不安が広がってしまう。
何とも言えない気持ちで頭の中がグルグルと絡み合う。
すると、コンコンとノックする音がする。
「小野寺さん?僕だけど」
神田の声がする。
恐る恐る立ち上がって扉を開く。
彼の顔はこちらを心配そうに見えた。
「どうしたんだい?顔色が悪いよ?」
体調が悪い?気持ち悪いとか?もしかして、傷が痛むの?と声をかけてくれる。
その言葉一つ一つが優しくて、思わず涙が零れる。
「大丈夫?ちょっと、座ろうか」
そっと肩を掴まれ、中に戻るように誘導してもらった。
座った私を見てから机に用意されていた水を持ってきてくれて、飲めるか聞いてくる。
その言葉にこくりと頷いて、コップを受け取る。
「ゆっくりと飲んで。大丈夫、僕がここにいるから」
隣に座って言葉をかけ続けてくれる。
それのおかげでこんがらっていた頭を落ち着いてきた。
涙を拭いて、話しかける。
「……………神田君。ごめんね、急に泣き出しちゃって」
「うんん、僕は大丈夫だよ。小野寺さんの方が大変な目にあっているのに何もできなくてこっちの方こそごめん」
そんなことないと言いたいのにぐっと喉に引っ掛かってしまった。
浅ましいことになら、代わってほしいとひどい言葉が心の中で響き渡ってしまった。
自分は卑怯者だ。烏が言ったような無垢な魂の持ち主などではない。
「……………遊戯や伝説のことを探していたんだけど、やっぱりおかしい部分があってね。君にも意見を聞こうと言うことになって来たんだ」
申し訳なさそうにそう言ってくる。
無理して訊くことは無いと言ってくれたがこちらも話をしないといけないことがあるので聞かせてほしいと答える。
「………分かった。だけど、無理しないでほしい」
「うん」
「じゃあ、まずは住職の話とは別にこの村でも一番と年長者であるババ様っていうお婆さんに話を聞いてきたんだ」
彼女は語ったのは住職の話とは異なることだった。巫女が双子であり、災いを防ぐために月ノ巫女の顔を仮面で隠していたという。名前も無かったのは村人たちが巫女を蔑ろにしていたためだと言う。妖や魔を払うことの出来る使い勝手の良い道具として。
日ノ巫女は傲慢で欲しいものは何が何でも手に入れると言う困った人間だったと言う。それが原因で惨劇が起きてしまった。このことで巫女は心を壊れて廃人となってしまい、地下に閉じ込められてそのまま命を落としたと言う。




