7-4
「あれを使って祈祷できれば村人たちの不安も解消すると思ったのですが」
「……………なるほど」
「しかし、あくまでも伝説は伝説です。生徒さんたちも森の中で迷っているだけかと思いますので」
そこで話は終わってしまった。
寺から出て旅館に戻るために歩きながら、話をまとめた。
「数十年前も起きたこと、今回のこと、巫女、遊戯、法具の紛失。これは偶然ではないね」
「でも、数十年前は何もなかったのにどうして今回は妖たちが起きて、遊戯なんかをしているのでしょうか?」
そう。今回は違うのだ。
妖も存在して遊戯を行っている。
「……………あまり考えたくないけど行方不明の子たちが法具を盗んだからかもしれない」
ぽつりと呟いた神田の言葉に私と深山は目を瞠った。
「で、でも、遊戯の中にいたら」
「勝利したら元の場所に戻れる」
その言葉にはっとする。
そうだ。自分が体験したことではないか。
勝利したら戻ってこられた。そうなると、他の人たちも勝利して戻ってきていたはずだ。しかし、何で見つからない?
「何処かに隠れている可能性もある。でも、何で隠れるのかって考えると何か疚しいことがあって姿を現せないのかもしれない」
そう考えた時に住職からの法具が盗まれたことを合わせるともしかしたらと思った様だ。
「も、もしかして、怪我して動けないとかじゃないかな。それに法具のあった場所なんて分からないし」
あまり考えたくないことに他の選択肢を話す。
でも、ふと狐の遊戯のことを思い出した。
そういえば、彼女は確か彼が狐と何かを話していたと言っていた。そして、嘘をついていた彼が妙に宝石の色とかがリアルであった。
「あの。孔雀石ってどんな色をしているの?」
「ああ、孔雀石だと分かりづらかったかな。『マラカイト』っていう深緑の宝石なんだ」
深山が答えてくれた。
偶然にしてはできすぎている。
もし、神田の言う通りなら何故、そのようなことをしたのか?
結局何も分からずじまいで頭が痛い。
寝ているときに見た夢も気になって仕方がない。
どうにも消化し切れないことに苛立ちを覚えてしまう。
二人とは別れて部屋に戻った。
考えることは山ほどあるが体を休むように言われたのだ。
中に入り、ふらふらと座布団の上に座り備え付けられていたテーブルに体を預ける。
考えることが多すぎて今はぼんやりとしてしまう。
いっそのこと、これが悪い夢であればよかったのに。そうすれば、何事もなく元の生活に戻れるのに。
そんなことを考えては首を振る。
これは現実なのだ。非科学的なことが起きている。目を背けてはいけない。
『それは君の美徳だ。ああ、眩しいな。本当に……………』
「!だ、誰?」
声がした。
ばっと顔を上げて周りを見回すが誰もいない。
幻聴か……………?しかし、やけにはっきりとした声だった。
やはり、疲れているかな。
はあと溜息をついて、またテーブルに体を預ける。
ここは遊戯の為に作られた世界。
地形は姫塚村そっくりではあるが建物は異色を放っている。
山の頂上には聳え立つ大きな社。
何本もの鳥居が並び、石階段が繋がる先にあるそれは妖たちの住処とされている。
中も豪勢な造りをしており、それぞれが暇を弄んでいる。
「あーあー、おねえちゃんと遊びたいよ」
床にうつ伏せになりながら足をパタパタと動かしている狼がぶつぶつと文句を垂れる。
その周りには彼の僕たちである狼たちが各々寛いでいる。
「仕方がないでしょ。お前が遊びすぎたせいで彼女は怪我をしているのです。お仕置きされないだけマシでしょう」
その近くでは椅子に座り紅茶を楽しむ狐の姿があった。
「そーだけど、お姉ちゃんが可愛かったんだよ?あの怯え切って涙目の顔を見たらいじめたくなるよ」
「それには同意しますがあまり怖がらせると彼からお叱りを受けますからね」
すでに遊戯が終わっている二人はこうして、社の中に閉じ込められている。
「にしては、あの虫たちが生きているのがびっくりだよ。今は蛇のところまで行っているのもいるでしょ?」
「ああ、鬼が手加減したようですよ?まあ、予定通りではありますが」
今は何人残っているのだろうか?確か、三人?二人?だったか?忘れた。
人間などただの食料に過ぎない。
「鬼がのんびりし過ぎなんだよ。のろのろと牛みたいに」
「彼は彼なりに色々と考えているのでしょう。細工も上々のようですし」
「それはそうだけどさー」
そんな話をしていると何処からか烏が飛んできた。
「おや」
「烏だ」
ここまで来るなんて珍しいと思いながら二人は烏を見る。
『間もなく第三幕が始まる!第三幕は鬼!鬼である!!』
「始まるんだ」
「ふふ、楽しみですね」
くすくすと笑う二人は既に傍観者として客席から見ているしかない。
さあさあ、語られるべきことは既に遊戯の中。
さあさあ、見つけるのは貴方。
さあさあ、さあさあ!!第三幕の始まり始まり!!




