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巫女塚伝説  作者: 由紀乃
13/13

7-3


「月ノ巫女さまの名前や自画像がないのは当時の妖怪たちから狙われやすく、顔も仮面で隠していたと言われてます」


「……………では、名前も顔も分からないのにどうして彼女が月ノ巫女だと?」


「それは月ノ巫女さまが亡くなった際に仮面が取れて顔を見たという村人が遺した絵がありまして」


そっと木箱を取り出してテーブルに置く。

中に入っていたのは古く少しボロボロな半紙に当時の村の風景、村人が畑を耕している様子に巫女らしい女性が何やら祈っている様子。そして。


「…………………………これは」


「はい。殺された時の様子を書いた絵になります」


そこには清廉とした巫女服が血まみれになり、地面に倒れている虚ろな目をした女性の生々しい絵があった。

あまりにも趣味が悪いと内心で罵倒しながらもその女性の顔を見て目を見開いた。

当時の絵にしてはかなり洗練されていて顔もはっきりと描かれているのだが、まさに自分にそっくりな顔があり絶句してしまう。


「驚かれるのも無理はありません。これはこの村で起きたことを忘れてはならぬと我が家で引き継がれてきたものです」


「確かに当時の技術ではこうまで鮮明には」


「恐らくですが、これを書かせたのは烏ではないかと言われてます」


「烏……………、伝承での?」


「はい。かの者は烏天狗であり、森羅万象の知識を持っていたと言われております。何故、このような絵を残すように言ったのかは謎ではありますが、他のと比べて色彩を使っているのは明らかにおかしいのです」


確かに他の絵は白黒なのに対し絵だけは色んな色が使われている。ましてや、同じ筆を使っていてもこうまで顔がはっきりと描くのは当時の技術では難しいだろう。


「今、生徒さんたちがいなくなって探していると聞いています。その際に伊吹いぶきから貴方が月ノ巫女に似ていると言うのでこれが何かのヒントになればと思い、お見せしました」


「伊吹?」


「おや、お会いになりませんでしたか?落ち葉を片付けていた青年がいたでしょう」


その青年が源野伊吹げんのいぶき。寺に住んで手伝いをしているそうだ。

彼も絵に関して知っていたので私を見かけて驚いたと言う。


「祠が壊されて村人たちには()()不安が広がっています。その中には生徒さんの一人が日ノ巫女の生まれ変わりで妖たちを呼び起こしたと吹聴する者も出てきております」


「……………?」


今の言葉にちょっと引っ掛かった。

それは私だけではなく二人も違和感を覚えたようだ。

そんな私たちの様子など気にすることなく住職は話を続ける。


「勿論、そんなことは無いと思いますが生徒さんたちが未だ見つかっていないことと今回のことで色々と噂が飛び交っています」

そう話し終わると深山が違和感を覚えたことを追求する。


「…………因みにですが、祠を壊されたのは今回が初めてなのですか?」


そう住職に聞くと彼は黙ってしまった。

やはり、壊されたのは今回だけではないようだ。

じっと見ていると観念したかのように口を開く。


「実は数十年前のことです。村の若者たちが面白半分で祠を荒らしたことがあります」


その際も祠に祀ってあった木彫りの人形を壊してしまったと言う。

発見した際に村人全員で壊した若者たちを探したが見つかることは無かった。妖たちを恐れた村人が住職に頼み、祈祷をした上で新たな人形を納めた。その後は何も起こることなく、平穏が続いた。しかし、若者たちの行方は未だに分からないまま。


「今回と似てますね」


「そうです。しかし、巫女様にそっくりな方がこの村に来たのは何かの前触れではないかと考えてしまうのです」


「……………前触れ」


「……………妖たちによる遊戯と言う名の虐殺です」



あるモノは快楽に溺れさせて。


あるモノはあらゆる遊戯で虐げて。


あるモノは嬲り嬲って。


あるモノは人と人同士で争わせて。


あるモノは引き裂いて。



ぶるりと寒気が走った。

私は既に遊戯を二つクリアしているのだがこれが伝説通りであればまだ三つ残っていることになる。


「何か起こりそうで私も怖いのです。法師様から頂いた法具も無くなってしまっていてどうしたらよいか」


「……………法具?」


「はい。妖たちを鎮めるために作られた物でございます。昨夜から見当たらず」


「ちなみにどのようなモノですか?」


「勾玉になります。使われているのは翡翠や瑪瑙ではなく、孔雀石で出来ている物です」


孔雀石?聞いたことのない石だ。

深山と神田は分かっているのかそれは珍しい石を使っていますねと言う。



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