7-2
「更に伝承に関してだけどおかしな部分が見つかってね」
「おかしな部分?」
「月ノ巫女の名前や自画像が全くないんだ」
日ノ巫女は名前も自画像の数々が出てきたのだが、もう片方の巫女のモノがないのは明らかに違和感でしかない。それについて本戸に聞いても彼も分からないと返された。
ならば、村長に話を聞いてみれば彼も分からないと言う。
引き継がれる際には決して祠を壊すことがないように、祭事は必ず実行することを再三言われ続けられたそうだ。
「私もここまで情報がないのはおかしいと思って、詳しく知る人がいないのか聞いて回ったんだ」
「見つかったんですか?」
そう訊くと二人とも眉をひそめて黙ってしまった。
何か問題が発生したのか?
嫌な予感がよぎる中、神田が口を開く。
「いたのはいたんだけど、話を聞こうにも小野寺さんも連れて来いって言われたんだ」
「わ、わたし?」
「うん。そうしないと話さないって一点張りなんだ」
どうして、私を?
訳の分からないことにグルグルと頭が回る。
「君には申し訳ないが、一緒に来てもらえるかな?」
「は、はい」
そんな時だ。扉がコンコンと叩かれる。
「錦織です。小野寺さんの様子を見に来ました」
「どうぞ」
そう言うと失礼しますと言って入ってきた彼は私が起きているのを見て、ほっと安堵した様子だった。
「ああ、よかった。目が覚めたんですね」
安心しましたと言って横に座ってくる。
体の調子や痛みはあるかなどの診察をした後に異常がないと判断された。
「体が疲れていたのが原因かもしれませんね。また、何かありましたら連絡ください」
「ありがとうございます」
にっこりと笑って錦織は去っていった。
神田に支えてもらいながら話を聞きに歩いていた。
「ここの住職から話を聞けるはずだよ」
その先には古くもちゃんと手入れがされた寺がぽつんとあった。
中に入ると落ち葉を片している作業着をきた一人の男性がいた。
長身かつ筋肉質なのか半袖から出ている腕は筋肉で盛り上がっており血管が浮き出ている。赤みを帯びた黒髪のざんばら、淡い水色の瞳が特徴的だ。
「…………………………」
「すみません。住職はいらっしゃいますか?」
無表情の彼に話しかけると何も発することなく頷いて、すっと奥を指さす。
あっちにいるという事なのか?
ありがとうございますと深山が礼を言って、奥へ進む。
私たちも歩いていく。
しかし、私は気づかなかった。
彼がじっとこちらを見ているのを。
奥に行くと住職がまるで来るのを分かっていたように待っていて、屋敷の中に入るように促されて入ると、そこには異様な物があった。
確か結婚式で花嫁が着る白装束を纏った等身大の人形だろうか?椅子に座って屋敷の奥に鎮座している。しかし、異様なのは顔。
「顔がない……………」
「変だね」
そう。顔が真っ黒に塗りつぶされているのがその異質さを物語っている。
「あれは婚姻の儀で使うモノなんですよ」
住職はそう話してくれる。
「花嫁となる女性に災いが起きないようにと身代わりしてくれる人形です」
「……………それってこの村の風習か何かで?」
「まあ、そうですな。昔から代々、当家で引き継がれているものです」
村の風習であることが分かったがその異様さには引っ掛かることがある。
しかし、そんなことを他所に住職がじっと私の方を見てきた。
「ああ。やはり、そっくりだ」
「何がです?」
「貴方が月ノ巫女さまによく似ている」
「え?」
その一言に頭が真っ白になった。
似ている?私が?




