第3話 目的
魔法都市ザグラムはカブレス山の斜面に沿うように出来ている。
メルクよりは小さい敷地面積で、区画は3階層のみのシンプルな構造である。
第一階層、商工区画。
・ザグラムの商業の中心地であり、多くの職人が店を構える区画。
・下町のような軒先が連なり、魔法、魔道具作成の専門技術者が集う。
・外から商用でやって来た人間も多いため、宿泊施設も充実している。
一行が最初に着いたのがこの階層。
第二階層、住居区画。
・第一、第三階層で働く者達はここから通っている。
・下級〜中流階級の住居がほとんどを占める。
・教会や大型商業施設もここに集まっている。
第三階層、研究区画とザグラム城。
・王国の最先端の魔法技術研究所がある。
・多くの研究者が日夜、新魔法の研究開発を行っている。
また、同じく第三階層にあるザグラム城はメルク城と同じく古城である。
ザグラムの近代的な建物の中では逆に新鮮な雰囲気を醸し出している。
そして研究所直轄のザグラム魔法学園もここにあり、国中のエリート魔法使い達がここに集まる。
サリーもここの卒業生であり、元は研究所の職員だった。
「ザグラムの構造はこんなものよ。質問はあるかしら?」
ここは第一階層の外れにある古い宿屋。
その一室でレン一行は今後の動き方について話していた。
この地をよく知るサリーにザグラムの説明を一通りしてもらい、レン達はお茶を片手に聞いていた。
すると、スミスが手をあげた。
「サリー、情報が集まりそうな場所はないか? 出来れば俺は妹探しに時間を割きたい」
「そうでしょうね。それなら一層の商業組合に行ってみたら? あそこ商人の寄り合いになってるらしいわ」
「……なるほど。商人が集まってるなら情報も集まる、ってか。なら初日はそこへ情報収集してくる。妹だけじゃなく、レンの記憶や神の打破に繋がるような情報も集めてくる」
一同は頷いた。
商人気質のスミスなら安心して任せられる。
「分かった。そこはお願いしよう」
「なら、僕らは?」
レンが何気なく言った。
片手の湯呑みから湯気がゆっくり立っている。
「それは決まってるわ。私達は学院図書館を目指すのよ」
「学院図書館??」
◇
魔法都市ザグラム第3層、ザグラム魔法学園。
国中の魔法使いのエリートたちがここに集められ、日夜勉学、研究、実験に励んでいる。
第一階層を探索中のスミスを除き、レン一行はザグラム魔法学園の門前に居た。
「……サリー。本当に大丈夫かな?」
「なによ。私の魔法がそんなに不安?」
レン、サリー、アルド、ノエルはそれぞれが認識阻害で別人に成り代わっている。
レンとサリーは学生、アルドは教師風の出立ち、ノエルは前職の修道女姿だ。
「いや、認識阻害は信頼してるよ! 問題は振る舞い方だよ。僕なんて魔法は使えないし、サリーが学生っていうのも無理があ……痛ったたた!」
「何か言ったかしら???」!?
鬼のような形相でサリーはレンの足を踏みつけている。
「だ、だって……! 卒業してるんでしょ!? それに研究員を経て勇者のパーティに入ったって事は……サリーいくつだよ!?」
「レディに歳を聞くとは失礼ね。飛び級よ、飛び級」
レンの足を離し、サリーはぷんぷん、と怒って見せる。
一方、レンは踏まれた足を必死にさすった。
「レン、安心しろ。学内に行けばサリーの記録も見つかるはずだ。何歳なのかはそれで逆算すればいい」
「アルド様……そういう事ではありません……」
◎読んでいただき誠にありがとうございます!!◎
大変恐縮ではございますが〜
少しでも本作を気に入ってくださった方
面白いと思った方
評価とブックマークを頂けると大変嬉しいです
作者の日々の励みにもなりますので
お手数ではございますが
どうか、よろしくお願い申し上げます。




