855.ツンドラのコート
「良さそうですね……!」
「大して魔力は使わないからな。ステラにもかけよう」
俺はステラに腕を向け、【ツンドラのコート】を使った。
……もこもこのパジャマみたいな姿だな。
見た目がそれほど格好良くないのは、前世のゲームも同じである。
「ぴよ……」(じーっ……)
地下コカトリスから熱い視線を感じる。
というより、実際に目が光っているのでものすごくまぶしい。
「どうやらぴよちゃんも興味があるみたいです!」
「大丈夫だ、遠慮しないでいいぞ。ララトマもどうだ?」
正直、ララトマは見ているだけで寒そうに見えるのだが。
「では、お願いしますです!」
「よし、魔法をかけるぞ」
俺はララトマと地下コカトリス相手にも【ツンドラのコート】を使った。
コケ類が広がり、覆っていく。
あっという間にコカトリスたちも、もこもこ姿になった。
なかなか似合っているな……。
「ぴよぅ!」(やったぁ!)
「ぴよよー!」(もこもこだー!)
地下コカトリスは目を輝かせて喜んでいる。
「ふむ、やっぱり寒かったのかな?」
コカトリスはあらゆる環境に強いらしいが、感覚面はまた別なのかもな。
しかし俺の考えは的外れだった。
コカトリスがコートに羽を伸ばして――。
「ぴよよ……」(もしゃもしゃ……)
「ぴよぴよ~」(ほんのり甘味~)
容赦なく【ツンドラのコート】を食べ始めた。
「おやつ的にも好評みたいです!」
コカトリスはおいしそうにコケをつまんでいた。
まさに躊躇なし。
「……まぁ、喜んでいるみたいですので」
むしゃむしゃ、コカトリスの羽は止まらない。
あっという間に【ツンドラのコート】はなくなってしまった。
どうやらおやつ的に興味があるだけのようだった。
「そうだな……。こんなふうになる気はしていた」
少し遠い目をしつつ奥へと進むと、さらに気温が低下している。
地下大河の水は凍っていないが、地面や壁には霜がついていた。
もこもこ姿のステラが、壁に手を這わせる。
「この寒さは……ザンザスの第四層みたいですね」
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