850.トーフゥー作り
休みの日、俺とステラは豆腐作りにチャレンジしていた。
リビングには海水が入った木製のコップがずらっと並んでいる。
このひとつひとつに、ちょっとずつ違う種類の海水が入っているのだ。
小さなコップに海水が半分ほど、ジェシカの努力の成果である。
「すんすん……」
ステラがぐるぐるとコップを手に取りながら歩き回っている。
「どうぴよ?」
俺の胸元にいるディアが首を傾げる。
「まぁ……良さそうなのはこっちですか……」
「ウゴ、匂いでわかるの?」
「故郷に近そうなモノを選んでみます」
「ソムリエみたいだな」
俺も試しに香りを確かめてみたが、さっぱり違いがわからない。
ここはステラに任せるしかないな。
子犬姿のマルコシアスはステラに抱えられている。
くむくむと小さな鼻を動かしていた。
「多分、こっちがいいかもなんだぞ」
「ほうほう、マルちゃんもそう思いますか?」
「豊富な栄養を感じるんだぞ……!」
「さすマルちゃんぴよ!」
やはり狼ではなく、犬なのでは……。
「まぁ、失敗しても深刻な話ではないが」
すでに海水は多くの種類が用意されている。
残された問題は豆腐作りに向いた海水を選べるか、だ。
大豆は俺の植物魔法で大量に生み出せるし。
「三十種類のうち、とりあえずこの七種類で試しましょうか」
「わふー。この十一番がオススメなんだぞ」
「わかった。明日、選んだ番号の海水をジェシカに頼もう」
そうすれば、選ばれた海水がそこそこの量で届くはずだ。
あとはその海水でにがり、豆腐を作ることになる。
「ウゴ、煮詰めるのは道具があってよかったね」
「ああ、煮詰めたり乾燥させる魔法具はナールの手元にあったからな」
「天日干しにしようかと思いましたが、そこは省けそうですね」
にがりは海水を濃縮させることで生まれる。
濃縮の方法は天日干し、加熱……やり方は色々あるらしいが。
「ぴよ! じゃあ、トーフゥーはすぐたべれるぴよ!?」
「ええ、意外と近いうちに食べられますよ」
ステラがにっこり微笑む。
「ぴよ! たのしみぴよー!」
そうして海水入りコップを片付けていると、玄関からノックの音がした。
「ん? 誰だろう?」
「ウゴ! 俺が出るね!」
ウッドが玄関に向かい、扉を開ける。
そこには着ぐるみのナナがいた。
「ウゴ、いらっしゃい!」
珍しいな、休みの日にこうしてナナがやってくるとは。
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