↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された包丁職人のおっさん、実は作っていたのは聖剣だった~王都の外れで食堂を始めたら、なぜか王族まで通い始めました~  作者: あずーる
第8章 オークの異変

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/62

第54話 私だって

 スープを皿に注ぎながらカウンターを見た。

 セシリアはまだ俯いたままだった。

 王女様だからといって何かやましい事でもあるのだろうか。

 彼女の視線は膝の上の細長い布包みに向いたまま動かない。


 もしかして。


 湯気が立つオークキングのスープをセシリアの前にコトリと置きながら問いかけた。


「セシリアさんその布包み――」


 あの曲がり具合、俺が打ったあの片刃剣だろうか。

 刃でもダメにしてしまって修理のお願いにでも来たんだろう。

 そのくらい、頼んでくれれば喜んでやるというのに。


 セシリアは俺が言葉を続けるよりも早く、口を開いた。


「ガルドさん、私……私、あなたにこれを見せたくて」


 そんなにかしこまらなくてもいいのに。

 どれどれ、どこが壊れたんだ……。


 カウンター越しにセシリアが持ち上げた布包みを受け取る。

 シュルシュルと音を立てて布がほどけていく。

 中から現れたのは、俺が打った片刃剣ではなかった。

 緩やかに弧を描く刀身。片側だけに立てられた刃。

 それに、刀身の表面に流れる紫色の波紋。


「これは……」

「あなたが言ってた製法を試してみたの」


 ほう。


「とびきり粘りのある魔鉱石を探して、刀身に使ったわ」


 剣を爪で弾いてみる。

 カン――。コン――。


 確かに、刃と刀身で返ってくる感触が違う。

 ここまで性質の違う魔鉱石をよく合わせたもんだ。


「かなり良くできていますね、これなら俺の打った剣よりも切れるんじゃないですか?」

「届かなかったの」


 即答。


「試し斬りをしては、何度も打ち直したわ。でも、打てば打つほど私の剣じゃなくなっていく気がして」


 よく見ると、研磨の奥に重なった叩き跡が見える。

 形もよくできている。ただ、重心が少しズレている。


「セシリアさん、本当にご自分で振ってみましたか?」

「ええ、あなたの作った剣と振り比べたわ。形も遜色ない位まで近づけたはずなの……」

「どうして、俺の剣を?」


 セシリアは手のひらを握ったり開いたりしていた。


「どうしてって……あなたの剣が私にとって一番使いやすかったから、それで」

「素材が違うのに、なぜ俺の剣に形まで合わせたんですか?」


 魔鉱石と、普通の鋼鉄。比重が全く違う。同じ形で同じ性能を出せるわけがない。


 セシリアは唇を噛み締め、黙ったままだった。

 目の前に置かれたスープには、まだ一口も手を付けていない。


「セシリアさん、スープが冷めてしまいますよ」


 剣の話もしたいだろうが、お腹が空いていては頭も回らないだろう。

 せっかくの料理だ。いちばん美味しい状態で食べてほしいし、

 何よりオークキングに失礼だ。


「ええ」


 それだけ返事をしてセシリアはスープに口をつけた。


 右の方に恐る恐る手を伸ばす影が見えた。

 ゴドフリーだった。

 皿を空にして、物欲しそうにこちらを見ている。


「ガルドさんや、おかわりを……おかわりをもらってもいいかね」

「今日だけですからね」


 鍋から熱々のスープを注ぎ、ゴドフリーの前へ置く。


「むふっ、ありがたい。またいいオークキングの肉を持ってきますから」


 ガタン、と音がした。

 それまで無言だったセシリアが椅子を倒して立ち上がっているではないか。


「私だって……私だって!」


 カウンターに突き出された拳は強く握られていた。

 ご飯を食べて、やる気が湧いてきたんだろうか。

 彼女の打った剣に視線を落とし、その刀身を指で撫でる。

 ここまで仕上げられるなら、あとは課題を潰していけばいい。


「ええ、セシリアさんにもできますよ」


 次はどんな剣を打ってくるか、楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。