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追放された包丁職人のおっさん、実は作っていたのは聖剣だった~王都の外れで食堂を始めたら、なぜか王族まで通い始めました~  作者: あずーる
第7章 王女様?

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第46話 変な感じです

「さっそく打ち始めるわ」


 古式鍛冶研究室に隣接する鍛冶場。


 セシリアは炉の横に置かれたいくつかの魔鉱石と睨み合っていた。

 炉にくべて叩いてみては、その質感の変化を確認する。


「ガルドさんの言っていた違いが、分からないわ……」


 バラムは傍らで割れた魔鉱石を見比べ、顎を撫でた。


「ガルド殿は、断面を見て判断しておりましたね」

「バラム、何度も言っているでしょう。ここでも無理に敬語は使わなくていいわ」

「いや、すみ……すまねえ」

「断面ね」


 セシリアは熱した魔鉱石を折り曲げ、水桶に浸した。ジュッと水蒸気が上がり、冷却された石を割る。


 単なる黒ずんだ結晶の集まりにしか見えない。

 内部がどうなっているのか、どこに粘りがあってどこが硬いのか、確信が持てなかった。


「分かる?」

「どうだか……もう一度、ガルドに聞きに行かないとだな」

「駄目よ。全部頼ってちゃ」


 セシリアは腕を組んで一喝した。


「そうはいってもだな……」

「たまには私達自身の力で頑張らないと。ほら、バラムも魔鉱石を折って」


 魔鉱石を掴み取ってバラムの目前に突き出す。


「わ、分かった」


 バラムは渋々火鋏を取り、魔鉱石を炉へくべた。


 二人は何十もの魔鉱石をパキパキと折り、水につけては作業台へ並べていく。


 セシリアが一つの魔鉱石を折り曲げたところで、手が止まった。


 割れない。

 普通なら破断するはずの角度まで曲げても割れることがなく、粘り強くしなるだけで折れない。


 遠巻きに見ていた研究者の一人が口に手を当て、魔鉱石を覗き込んだ。


「殿下、これは不良品では?」


 魔鉱石として、確かにこのしなやかさは不良品だ。

 バラムも手を止めて大きく頷く。


「魔力の含有量が低いやつに当たったんだな。そいつは使い物にならねぇ」

「違うわ。これでいいの。これが、私たちが探していたものよ」


 セシリアはそのまま、その魔鉱石を折りたたんでは叩き伸ばす鍛錬を始める。

 ガン、ガンと打撃音が鍛冶場に響き渡る。


「おいおい、魔鉱石でそんなことしたら……」


 魔鉱石にそんな無茶な加工を施せば、結晶構造が砕けてしまう。バラムも一度試したことがある。


 セシリアは手を止めない。叩き伸ばしを繰り返し、息を整える。


「こんなものね」


 セシリアは額の汗を拭うと、作業台の脇に置かれた割れた魔鉱石を指差した。


「次はこっち。バラムも手伝ってちょうだい」

「分かった」


 今度は硬い魔鉱石だ。二人がかりで熱し、折り曲げ、叩いていく。


「いい感じね」

「ああ」


 バラムが相槌を打ち、大槌を振り下ろした。


 ガン! ガン!――バギッ!


 乾いた音と共に、硬い魔鉱石が粉々に砕けてしまった。跳ね飛んだ破片が床を転がる。


「あ、すまん……」

「無理もないわ。普通、魔鉱石ではこんなことしないもの」


 セシリアは砕けた破片を片付けると、また別の魔鉱石を掴んだ。


「さあ、次よ」

「まだ続けるのか?」

「ええ。次は温度にもう少し気を付けるわ」

「はぁ……」


 数時間後。

 鍛冶場の中には、失敗して破砕した魔鉱石の山ができていた。二人とも着ている服は煤で汚れ、全身汗だくだ。


 作業台の上には一対の帯状の魔鉱石。

 バラムが破片の山を見回す。


「まさか、本当にここまで形にできるとはな」

「次は……粘りのある魔鉱石を芯に、硬い魔鉱石を刃に……だったわね」

「割れないのか?」

「ガルドさんの言葉を信じましょう」


 二種類の魔鉱石を重ね合わせ、叩き伸ばしていく。

 何度も炉に戻し、温度を見て、亀裂が入っていないか確認する。

 時間をかけて、ゆっくりと、ゆっくりと。


「いけるわ……」


 魔鉱石が馴染んだのを確かめて、セシリアは刀身の形成に入る。

 叩いて伸ばし、形を作る。


「これ……」

「ええ、片刃よ」


 刃になる側を薄く叩きだし、背は厚みを残す。

 ガルドが作った剣と同じように、刀身へ緩やかな湾曲をつけていく。

 泥を塗り、焼き入れに入る。


「確か、背は厚く……だったわね」


 刀身を炉の中へ入れ、火の色を見る。


「今――」


 火鋏で引き抜き、水の中へ突き立てた。


 ジュッ――――!


 激しい水蒸気と共に、刃の表面に鮮やかな紫色の波紋が浮かび上がる。

 遠巻きに見ていた研究者が、手元の記録紙を落とした。


「ふふ……」


 セシリアの顔から笑みがこぼれる。


「まだ終わってないぞ」

「ええ」


 砥石に向かい、刃を丁寧に研ぎ上げていく。


 最後に、木製の質素な柄を削りだす。

 完成した剣を両手で持ち上げる

 指先を滑らせ、柄を握りしめる。


「変な感じです」

「失敗したのか?」


 セシリアは首を横に振った。


「いいえ。……また、ガルドさんに少し近づけた気がして!」

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