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飢えた王国 ~麦を奪って生き延びた俺は、誰も麦を奪わなくていい国を作る~  作者: レモンティー


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第四十九話 王国全土に、百か所の配給所を作った

王都アルディア。

国王の命令によって、新しい制度が始まった。

『王国食料配給所』

王都から地方へ続く主要街道。

その沿線に、食料配給所が設置された。

最初は十か所。

次に三十か所。

そして、百か所。

各配給所には、麦と水が備蓄された。

難民は登録すれば、最低限の食料を受け取ることができた。

だが、問題は山積みだった。

食料の横流し。

役人の不正。

配給所への襲撃。

そして、備蓄不足。

エリクは各地を巡回した。

ある配給所では、役人が麦を隠していた。

「……なぜ、配らないんですか?」

エリクが尋ねた。

役人は答えた。

「来月の分を残しているんです」

「ですが、今日食べられない人がいます」

「全部配れば、来月はどうするんですか!」

エリクは黙った。

役人の言葉も、間違ってはいなかった。

別の配給所では、食料が足りず、暴動が起きていた。

配給所の札は字の読めない者には役に立たなかった。

クリスは色と形で順番を知らせる方法を考えた。

百か所の配給所を地図に書き込むと、印のない山間部が目立った。

エリクは完成した数字に満足せず、配給所まで歩けない者のための巡回路を赤く引いた。

最初の配給所では、字を読めない老人が登録札を裏返して持っていた。

係員は列の最後へ並び直すよう告げる。

エリクが理由を尋ねると、係員は「同じ人が二度受け取らないためです」と答えた。

正しい規則が、読めない者を飢えさせる。

エリクは札に印をつけ、名前を声に出して確認する方法を試した。

列は遅くなったが、老人は初めて粥を受け取れた。

「俺たちにも配れ!」

「昨日はもらえたのに!」

兵士たちが群衆を押し返していた。

エリクはその光景を見て、呟いた。

「……配給所を作るだけでは駄目だ」

カールが尋ねた。

「何が必要だ?」

エリクは答えた。

「食料の量を、正確に把握することです」

その日から、配給所には帳簿が導入された。

入荷量。

配給量。

残量。

登録人数。

そして、次の輸送予定。

毎日記録することになった。

さらに、各配給所の情報を王都へ送る仕組みが作られた。

不足している場所へ、優先的に輸送する。

余裕のある場所から、食料を回す。

簡単なことのように思えた。

だが、戦争で荒れた王国では、それすら難しかった。

それでも、少しずつ変化が現れた。

配給所の前で死ぬ人が減った。

街道で倒れる難民が減った。

そして、人々は少しずつ、食料を奪わなくなった。

エリクは配給所の前で、麦粥を食べる子供たちを見つめていた。

「……まだ、足りない」

カールが頷いた。

「だが、前よりは良くなった」

エリクは小さく笑った。

「……そうですね」

配給所の前で、文字の読めない老婆が札を握りしめていた。

「昨日と同じ場所に並べばいいのかい」係員は忙しさに追われ、声を荒らげかけた。

エリクは列の先頭に立ち、配給日と順番を木板に絵で示すよう命じた。

制度ができても、そこにたどり着けない人がいる。

百か所という数より、一人が迷わず食べ物を受け取れることのほうが大切だった。

配給所の看板を立てても、読めない者がいる。

列に並べない病人もいる。

エリクは制度を作るたび、その外に残る人を探した。

百か所の配給所を地図に置くと、点のない山間部が目立った。

クリスはその白い場所を指した。

「ここに住む人は?」

エリクは地図の端に、巡回する荷車の道を描き加えた。

配給所の責任者が、二枚の札を握った老人を連れてきた。

老人は盗んだのではなく、隣村で発行された札を捨てられずにいた。

どちらを有効にするか、規則には書かれていない。

エリクは二重配給を防ぐ印を考えながら、老人に粥を渡すよう指示した。

制度の穴を塞ぐために、その穴へ落ちた人を見捨ててはならない。

最初の週、北の配給所で二十袋の麦が帳簿から消えた。

役人は盗賊のせいだと言ったが、門番はその夜、荷車が一台も出ていないと証言した。

「役人を捕らえれば済む話じゃない」

エリクは帳簿を二冊作らせた。

一冊は配給所に、もう一冊は受け取る村人の代表に預ける。

麦を渡すときは双方が数え、印を押す。

「字が読めない人は?」とクリスが尋ねた。

「袋の数だけ木札を置こう。誰でも数えられる」

翌朝、老人が木札を一枚ずつ指で確かめた。

「昨日は五つだった。今日は四つしかない」

役人は顔を赤くした。

「次の便が遅れているんです」

エリクは老人の目を見た。

「では、いつ届くのかを掲示します。遅れるなら理由も」

約束した日、輸送隊は来なかった。

エリク自身が広場に立ち、謝った。

制度を作るより、それを守れなかった日に逃げないことのほうが難しかった。

南の配給所では、木札をなくした少女が列から追い出されかけた。

「札がなければ渡せない。二度受け取る者が出る」と係員は言う。

少女は泣きながら袖をまくった。

腕には、前日の配給で負った火傷があった。

熱い鍋を運ぶのを手伝っていたのだ。

エリクは係員を責めなかった。

決まりがなければ不正が起きる。

決まりだけでは、人が死ぬ。

「札をなくした者のための確認役を置こう。村の代表二人が本人を確かめる。記録は残す」

少女に粥が渡されたとき、列の後ろから不満の声が上がった。

エリクはその声も帳簿に書かせた。

制度は、例外を隠したときに壊れるのだと知った。

百か所の配給所の一覧を前に、クリスが赤い印をつけた。

「ここは川を渡れない。地図の距離だけで決めたら、病気の人は来られないよ」

役人は面倒そうに眉を寄せたが、エリクは印のある村へ巡回配給を出すよう頼んだ。

数字の上の公平さは、歩けない者には届かない。

ドランが届けた報告には、麦袋の数だけでなく、運び手の名と到着予定日が書かれていた。

「倉庫に一万袋あっても、車が十台なら一日に運べる量は限られます」

「なら、最も近い村から順に?」

「いいえ。最も早く食料が尽きる村からです」

エリクは地図の色を塗り替えた。

道の長さではなく、残された食事の回数を基準にした。

遠い村のために近い村の荷車を使う決定には反発が出た。

ドランは荷車を貸した村の名と、返す予定日を議事録に書かせた。

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