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飢えた王国 ~麦を奪って生き延びた俺は、誰も麦を奪わなくていい国を作る~  作者: レモンティー


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第四話 四十人の難民と、一袋の麦

村を焼かれて三日目の朝、エリクは難民の人数を数え直した。

出発した四十人のうち、生きて歩いているのは三十七人。

昨夜、幼い子が母親の腕の中で息を引き取り、その母親も夜明けまでに動かなくなった。

もう一人は、最初の夜に倒れた男だった。

「三十七人だ」

麦袋の口を開く前に、エリクは人数をもう一度数えた。

歩ける者と担がれてきた者を同じ一人として扱うだけでは足りない。

分け方を間違えれば、今夜の一杯が明日の死を早める。

声に出すと、三人の不在がいっそう重くなった。

昼過ぎ、老人が道端に座り込んだ。

「わしを置いていけ」

ガルムが背負おうとしたが、数十歩で膝をついた。

エリクも肩を貸した。

二人で運んでも、列の歩みは止まった。

「一人を運んで、残りをここで死なせるのか」

老人は怒らずに言った。

その声がいちばん残酷だった。

クリスが袖を引く。

「お兄ちゃん、おじいちゃんは?」

エリクは答えられなかった。

老人は木椀だけを握り、木陰に残った。

翌朝、戻ったガルムが帽子を脱いで帰ってきた。

三十六人になった。

その日の夕方、残った麦は一袋だけだった。

ガルムは袋を抱え、エリクを見た。

「全員に同じ量を配るのか」

「歩けない者に多く配りたい」

「なら、働ける者が先に倒れる」

二人の言い分はどちらも正しかった。

エリクは村人を集め、袋の中身を木椀で量った。

病人と子供に少し厚く、歩ける大人には薄い粥。

誰に何杯配ったか、地面に線を引いて記録した。

「俺の椀がいちばん薄いぞ」

男が舌打ちした。

エリクは自分の椀を見せた。

「俺も同じだ。明日まで持たせるには、これしかない」

「お前の妹には多くやっただろう」

「クリスの分も、みんなの前で量った」

疑いを消せたわけではない。

だが、隠さなかったことで、男は椀を投げずに済んだ。

丘の向こうに村が見えたのは、その夜だった。

刈り取りを終えた畑と、三棟の倉庫。

煙突からは細い煙が上がっている。

「食料があるぞ」

難民たちの目が変わった。

エリクとガルムは二人だけで村の柵に近づいた。

弓を構えた男が五人、行く手を塞いだ。

「北から逃げてきました。麦を少し分けてもらえませんか」

「帰れ」

分ければ全員が足りなくなる。

分けなければ、目の前の誰かが倒れる。

エリクは袋の口を握り、正しい答えのない選択から目をそらさなかった。

「子供もいるんです」

「こっちにもいる」

柵の向こうに痩せた子供がいた。

エリクはそれを見て、言い返せなくなった。

「春までの種麦なんだ。お前らに渡せば、来年は俺たちが死ぬ」

ガルムは拳を握ったが、エリクが腕を引いた。

「戻ろう」

丘へ帰ると、難民の一人が叫んだ。

「だったら奪え! 俺たちが死ぬのを待つのか!」

エリクは止めた。

ガルムも止めた。

それでも夜半、飢えた人々は松明を持って柵へ走った。

エリクはクリスを木陰に残し、後を追った。

火が上がった。

弓が鳴った。

逃げ惑う子供の声がした。

夜明け、難民たちは麦一袋を奪って戻った。

こちらの死者は六人。

襲われた村にも四人の死者が出た。

ガルムは血のついた斧を置いた。

「十人死んで、一袋か」

ガルムは斧を洗おうとして、井戸の水を汲む手を止めた。

死んだ息子のために始めたはずの戦いで、今度は別の親から子供を奪った。

彼はその夜、誰にも聞こえない声で「次は斧以外のものを持つ」と呟いた。

エリクは麦を量った。

生き残った三十人には、数日も持たない。

「次は、どこの村を襲う?」

誰も答えなかった。

クリスが尋ねた。

「お兄ちゃん、私たち、悪い人になったの?」

エリクは麦袋を閉じた。

クリスは袋の底に残った麦を指で数えた。

四十人で分ければ一人分はわずかだった。

それでも彼女は、自分の取り分を勝手に増やそうとはしなかった。

「……分からない。でも、同じことを続けたら、誰も生き残れない」

エリクが最も恐れたのは、敵の軍隊だけではなかった。

飢えた自分たちが、次に何をするか分からないことだった。


挿絵(By みてみん)

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