第5魔:キラキラレトリバーさん!
「只今戻りましたー」
「あっ! セレナ、ギル、おかえりだにゃ」
ギルドに着いた私たちは、早速キャミィさんのところに行って、成果を報告した。
「キングオークは天才である私の魔法で、灰燼に帰しました。これがキングオークの魔石です」
キャミィさんに魔石を差し出す。
「うんうん、確かに。お預かりするにゃ。ではちゃちゃっと鑑定しちゃうにゃ」
キャミィさんが、魔石に魔力を込める。
「その目が写すは塩基の螺旋
事実は一つ 真実は二つ
壱と零とが折り重なり
形作るは砂の城
――鑑定魔法【神の左目】」
キャミィさんの左目が、ボワッと青く光った。
「うん、確かにこれはキングオークの魔石に間違いないにゃ」
流石キャミィさん。
何気に鑑定魔法って、滅茶苦茶習得が難しいのよね。
私でさえ、未だに使えないし(覚える気もないけど)。
「はい、これが今回の報酬だにゃ」
報酬は、1万サクル札が16枚。
つまり16万サクルだ。
なかなか悪くない仕事だったと言えるだろう。
「ところで、二人で朝帰りして来たってことは、二人はパートナーになったってことでいいのかにゃ?」
「「――!?」」
キャミィさんッ!?
「キャミィさん、語弊のある言い方はやめてください! それにまだ夕方ですし、全然朝帰りじゃないでしょ!? ……まあ、私とギルがパーティーを組んだのは、事実ですけど」
「あ、はい、まさか天才魔法使いのセレナが、俺なんかとパーティーを組んでくれるとは夢にも思ってなかったので、まだ心がフワフワしてます」
ギル……!?
またあなたは、そういう恥ずかしい台詞を真顔で……!
この天然トライアスロンがッ!
「にゃふふ、それは何よりだにゃ。実はアタシは前から、セレナとギルは相性抜群だから、パートナーになったらいいのになと、ずっと思っていたのにゃ」
そうだったんですか……!?
何ですかその、厄介な親戚のお見合いオバサンムーブは!
や、やめてくださいよ、もう!
「二人ならきっと、伝説に残るような、偉大なパートナーになれるにゃ。アタシも陰ながら応援してるにゃ」
「あ、ありがとう、ございます」
「ありがとうございます、キャミィさん!」
「にゃふふ」
何なのこの、彼氏を母親に紹介したみたいな空気は?
まあ、私は彼氏なんていたことないから、あくまでイメージだけど……。
「さて、と、はい、これがギルの分ね」
「え?」
ギルドから出た私は、1万サクル札8枚を、ギルに渡した。
「ま、待ってくれ! こんなに受け取れないよ! 俺はただ囮になっただけで、キングオークを倒したのは、あくまでセレナなんだから」
「いいえ、それは違うわよ、ギル」
「……!?」
「あなたは囮という仕事を過小評価しすぎよ。あなたがキングオークの攻撃を引き付けていてくれたから、私は詠唱に専念できたの。――まあ、天才である私なら、一人でもあのくらいなら倒せていたとは思うけど、あそこまで安定はしなかったでしょうね。つまり、あなたは勝利への安定感に、大変貢献したと言えるわ」
「……セレナ」
「もっと自分の仕事に誇りを持ちなさい、ギル。――天才である私が太鼓判を押してあげるわ。あなたは『囮の天才』よ」
私はギルの左胸を、人差し指で突いた。
「……はは、『囮の天才』、か。悪くない響きだな。――わかったよセレナ。俺はもう二度と、囮という仕事を卑下しない。――君が俺を必要としてくれる限り、最大限の仕事を果たすと、約束するよ」
「――!」
またしても凛々しい顔で、恥ずかしげもなくそう言うギル。
コ、コイツゥゥ~~~~~。
「あっそ! 勝手にすれば!? じゃあまた明日この場所でね! ごきげんよう、キラキラレトリバーさん!」
「セレナ!? 何か君、キャラ変わってないか!?」
私は赤くなっている顔をギルに見られないよう、さっさと背を向けてギルの前から去ったのだった――。




