第19魔:この豚女に見せてやりましょ
ぽやちゃんが黒幕で、闇ギルドの幹部……!?
クッ、あまりにもイメージと合わなすぎて、脳が状況を理解するのを拒んでるわ……!
こんな頭がスカスカそうな子に、闇ギルドの幹部なんてホントに務まるの……!?
「じゃあ、そろそろ私と一つになろうか、アブソリュートヘルフレイムドラゴンちゃん」
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「「「――!?!?」」
ぽやちゃんがアブゴンに手をかざすと、おもむろにアブゴンがぽやちゃんをバクンと丸吞みにした。
なっ!!?
「――よしよーし、これで私たちは文字通りの、一心同体だねー」
「「「???」」」
すると今度は、アブゴンの頭頂部からぽやちゃんの上半身が生えてきたのだ――。
ハアアアアアアアアア!?!?
「……なるほどにゃ。全てはアナタがその状態になるために、仕組まれたことだったのにゃ」
「えへへー、その通りです。私が造ったエンペラーオークは、アブソリュートヘルフレイムドラゴンちゃんをおびき寄せるための餌であり、また同時に、自在に操るための麻薬でもあったんです」
餌であり、麻薬――。
つまりこの女は、こうしてアブゴンを操って一体化するために、コツコツオークを魔改造していた……ってコト!?
【獣操】の二つ名は、伊達じゃないようね……。
とはいえ、随分回りくどいことをするわよね。
この手の凶悪犯って、目的達成のために、時に狂気的とも言える根気を出すからタチが悪いわ。
「う、嘘だろエイダ……。君が闇ギルドの人間だなんて……、噓だよな!?」
負け犬リーダーが絶望で真っ青になりながら、ぽやちゃん……いや、エイダに訴えかける。
「残念ながら本当なんです、リーダー。あなたはちょっとおだてればすーぐ調子に乗ってくれるんで、私の実験サンプルの収集に、とっても役立ってくれました。本当に、ありがとうございましたぁ」
「そ、そんな……!! うわあああああああああああああああ」
負け犬リーダーは頭を搔きむしりながら、その場に頽れた。
何だかもう、ここまでくると流石の私も、負け犬リーダーのことがちょっとだけ可哀想になってくるわね。
「それにしても、以前アブソリュートヘルフレイムドラゴンちゃんを人里に呼び寄せた時は、上手く操ることができなくて、そのまま逃げられちゃったんで、今度はじっくり時間を掛けて準備してきたんですけど、頑張った甲斐がありましたぁ」
「な……何……だと……!?」
ギルが右目の上の傷をガリッと掻きながら、一歩前に出た。
なっ!?
「つまり……俺の兄貴が死んだのは……お前のせいだったのか――!!」
「いいえー、それは違いますよ、ギルさん」
「っ!?」
「ギルさんのお兄さんが死んだのは、お兄さんが弱かったからです」
「――!!」
コ、コイツ――!!
「この世は弱肉強食です。弱い奴は死に、強い者だけが生き残る。それがこの世のシステムなんです。だから私は、こうして誰にも負けない力を求めたんです。魔獣を多少操る力しか持ってなかった、弱い私をバカにしてきた連中を見返すためにねぇ!!」
エイダが、初めて人間らしい感情を見せた。
……アホクサ。
つまりコイツは、自分を見下してきた連中に、私は強くなったのよってドヤ顔するためだけに、裏の世界に足を踏み入れたわけね。
大事件の黒幕の割には、随分信念がショボいわね。
それともこれが小説だったら、こういう身近にいそうな小物が黒幕のほうが、読者が感情移入しやすいのかしら……?
「その点、セレナさんに憧れてたってのは、本当ですよぉ」
「――!」
エイダがニタリと、気持ち悪い笑みを私に向ける。
創造主だけあって、笑い方がエンペラーオークそっくりだ。
「セレナさんみたいな真の強者に、私はずっとなりたかったんです。まあ、今ではこの通り、私のほうが遥かに強くなっちゃいましたけどねぇ。アハハハハハハハハハ」
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「――フン、くだらないわね」
「…………は?」
エイダがキョトンとする。
「アンタのそれは、アンタ自身の力じゃなく、あくまでアブゴンのものじゃない。まさしくドラゴンの威を借るオークって感じだわ」
「なっ、何ですって――!?」
ププププー!
途端に真っ赤になってやんの。
そうやって逆上するってことは、図星ってことでしょ?
「まあ、アンタみたいな心までオークみたいに醜い豚女には、理解できないかもしれないけどねー。そもそも豚に人間の言葉は理解しようがないかー。しょうがないからアンタに合わせて、豚語で話してあげるわね。ブーブーブー」
私は鼻を指で上げて豚の真似をしながら、挑発する。
「クッ、このぉ、セレナァァァ!!!」
「さんをつけなさいよ豚女!」
「ブッ殺してやるうううううううううう」
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「それはこっちの台詞よ豚女」
彼氏のお兄さんの仇だって判明した以上、容赦はしないわ。
私がこの手で必ず、地獄に突き落としてやる――。
「いくわよ、ギル。この豚女に見せてやりましょ、私たちとの、格の違いってやつを」
「――ああ、セレナ!」
静かな闘志を宿した翠の瞳を、豚女に向けるギル。
――さあて、一丁やりますか!




