第18魔:アナタだったんだにゃ
「「「グロロロロロオオオオ」」」
「「「――!!!」」
ギルドから出て少し北上したところで、地平線の彼方から、エンペラーオークの大群がこちらに向かって来るのが見えた。
うわぁ、マジで50体近くはいるわね、あれ……。
一応私の【雷神の戦鎚】なら倒せることは実証済みだけど、もし1体でも討ち漏らしたら、この場にいる全員がそいつに虐殺されかねない。
何とか全員を一ヶ所に集めて、【雷神の戦鎚】で一網打尽にできないものかしら……。
例えば、負け犬リーダーの全身に甘い蜜を塗って転がしておいたら、飴に群がる蟻みたいにならないかな?
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「「「――!?!?」」
その時だった。
遥か上空から、大地を揺らすほどの、禍々しい咆哮が鳴り響いた――。
私の本能が、けたたましく警鐘を鳴らす。
な、何よこの、神々しさすら感じる咆哮は……!?
「こ、この鳴き声は――!」
ギルが上空を凝視しながら、目を見開く。
「ギル、知ってる鳴き声なの……!? ――ま、まさか!」
私が知らなくて、ギルが知ってるってことは――!!
「……ああ、間違いない。俺が、聞き間違うはずがない――!!」
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「「「――!!!」」
私たちの目の前に、地響きを上げながら、鳴き声の主が降り立った。
――それは、小高い丘ほどもある、全身が赤黒い鱗に覆われた、巨大なドラゴンだった。
「――こいつが、アブソリュートヘルフレイムドラゴンだ」
ギルが右目の上の傷をガリッと掻いた。
コ、コイツが、【最上級魔獣】のうちの一体であり、ギルのお兄さんの仇でもある、アブソリュートヘルフレイムドラゴン――!!
クッ、何ていう運命の悪戯なの……!!
ただでさえエンペラーオークの大群が眼前に迫っているという絶体絶命の状況なのに、よりによってこんな時に、正真正銘の【最上級魔獣】まで現れるなんて――!
……桁外れの威圧感だわ。
【最上級魔獣】の名は、伊達じゃないわね……。
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「「「――!?!?」」」
その時だった。
アブゴン(アブソリュートヘルフレイムドラゴンの略)は私たちをガン無視して背を向けると、そのままエンペラーオークの大群に突撃して行った。
…………え?
「ゴガアアアアアアアアアアアアアアア」
「「「グロロロロロオオオオ」」」
「「「――!???」」」
そして何故か、アブゴンはエンペラーオークの大群を捕食し出したのである――。
――なっ!?!?
エンペラーオークの強靭な身体も、【最上級魔獣】であるアブゴンには芋ケンピも同然に、バキバキ音を立てながら咀嚼していく。
――あっという間に50体近くいたエンペラーオークは、1体も残らずアブゴンの腹に収まってしまったのだ。
……な、何が起こったのよ、いったい。
「……ゴガアァァ」
「「「???」」」
すると今度は、まるで酒にでも酔ったみたいに、アブゴンがフラフラし出した。
んんんんんんんん????
「うんうん、どうやら成功したみたいですね」
その時だった。
ぽやちゃんが満面の笑みを浮かべながら、おもむろにアブゴンに近付いて行った。
「ちょっとアナタ!? 危ないわよッ!」
「えへへー、大丈夫ですよセレナさん。――この子はもう、私の一部みたいなものですから」
…………は?
何を言ってるのよ、この子……?
「――! ……そういうことだったのかにゃ」
「キャミィさん……!?」
そういうことって……!?
――まさか!
「――この一連の事件の黒幕は、アナタだったんだにゃ」
キャミィさんがぽやちゃんに、ビシッと指を差した――。
――なっ!!?
「えへへー、その通りです。――私は闇ギルド【狂乱の収穫】の幹部が一人、【獣操】のエイダです」
ぽやちゃんの三日月の髪飾りが、キラリと光った――。




