第13魔:知ってる人なの、このオッサン?
『セレナ』
『――! ギル!!』
ああよかった!
目が覚めたのね!
……あれ?
でも何か、様子がおかしい。
ギルの身体が薄ら透けてるし、周りの景色も見渡す限り真っ白で、どう見てもここは医務室じゃない。
いったい、何が……。
『ゴメン、セレナ、俺、もう行かなくちゃ』
『っ!?』
ギルが私に背を向け、前方にある円形の闇に向かって歩き出した。
そ、そんな――!?
『行かないでギル! 絶対死なないって、約束したじゃない!』
『――さようなら、セレナ』
『――ギルッ!』
――私を一人にしないで。
――私、あなたのことが。
「ギル、私、あなたが、す――」
「セ、セレナ……!?」
「――!?!?」
あれ????
気が付くと、私はギルにギュッと抱きついていた。
周りの景色も医務室に戻っている。
も、もしかして、今のは、夢????
いつの間にか、寝ちゃってたのか、私……。
うおおおおおおお、何か今私、ドチャクソ恥ずかしいことしたかもおおおおおおおお!!!!
――あっ、それよりも。
「ギル!? 目が覚めたのねッ!?」
慌ててギルから離れ、ギルの顔を見る。
「あ、うん、今さっきね。――ありがとうセレナ。ずっと俺の手、握っててくれたんだろ? 夢の中でもセレナの声、聞こえてたよ」
「っ!?」
ギルがほんのり頬を染めながら、私の手を握ってきた。
ふおおおおおおおお!?!?
「べ、別に!? 心配なんかしてなかったけどね!? 勘違いしないでよ、この透け透けパンデミックが!!」
「はは、セレナのそれ聞くと、戻ってきたって感じするよ」
「……お前らなぁ、そういうことは、家でやれよな」
「「――!!」」
いつの間にか私たちの横に、負け犬リーダーとテッドとドロシー、それにぽやちゃんの四人が立っていた。
ぬおおおおおおおお!?!?
「ななななな、なんでアンタらが医務室にいんのよ!? 送るわよ!!」
「なんでお前はすぐ、俺をあの世に送ろうとすんだよ。べ、別にお前らに用があったわけじゃねえよ。ちょっと怪我したから、治してもらいに来ただけだ」
「照れんなってレックス。ギルが大怪我したって聞いたから、様子を見に行こうって言ったのはお前じゃねえか」
「オ、オイ、テッド! 余計なこと言うんじゃねえ!」
……え?
「そもそもちょっと怪我したくらいなら、私の回復魔法で治してるはずでしょ? 照れ隠しなら、もう少しマシな噓つきなさいよね」
「う、うるせえうるせえ!!!」
「医務室ではお静かに」
「グッ!?」
負け犬リーダーが、常駐の僧侶に怒られた。
……ふぅん、負け犬リーダーがギルのお見舞いに、ねえ?
意外と殊勝なところもあるのね。
それとも前にギルにわからせられたから、ギルのことは一目置いてるのかしら?
「セレナさぁん、ゴメンなさぁい」
「……!?」
ぽやちゃんが大粒の涙をボロボロ零しながら、近寄って来た。
は???
「な、なんであなたが謝るのよ……」
「だってぇ、私がアンノウンの討伐依頼を勧めたから、ギルさんがああぁぁ」
ぽやちゃんは鼻水をスンスン啜っている。
ああ、何だ、そういうこと。
「別にあなたのせいじゃないわよ。あなたが勧めてなかったとしても、どの道私たちがあの依頼は受けてたでしょうし。ねえ、ギル?」
「ああ。そういうわけですから、どうか気にしないでください、エイダさん」
そういえば、ぽやちゃんの本名はエイダだったわね。
ずっとぽやちゃんとしか呼んでないから、忘れてたわ。
「そうですか! ならよかったです!」
「「っ!?」」
途端、一瞬で笑顔になったぽやちゃん。
あれ???
もしかして今の、噓泣き???
……やっぱこの子、苦手だわぁ。
「おー、ギル、目が覚めたにゃ。にゃふふ、愛の力だにゃぁ」
キャミィさんがニヤニヤしながら現れた。
また、この人は……!
「ギル、キャミィさんが最上級回復魔法で、あなたのことを治してくれたのよ」
「え!? そうだったんですか!? そ、それは助かりました! 何とお礼を言ったらいいか……」
「にゃふふ。ギルドとしても、超危険なアンノウンを討伐してもらったんだから、お互い様にゃ。ところであのアンノウンは、暫定的に『エンペラーオーク』と呼称することになったにゃ」
「へえ」
なるほど、キングオークを超えるオークだから、エンペラーオークですか。
「あと、ギルにお客さんを連れてきたにゃ」
「「?」」
ギルに、お客さん……?
「よお、邪魔するぜぇ」
「「――!」」
キャミィさんの後ろから、50歳くらいの、白髪交じりの頭をしたやたらガタイのいいオッサンが現れた。
右手には酒瓶を持っており、メッチャ酒臭い。
どうやら昼間から酒を飲んでいるらしい。
誰、このオッサン???
「あ、あなたは――!!」
途端、ギルが推しのアイドルを目にした乙女みたいに、目を輝かせた。
ギル???
「ギル、知ってる人なの、このオッサン?」
「知ってるも何も、このお方こそが、稀代の盾職人である、アーチボルドさんだよッ!」
「っ!?」
えーーー!?!?!?




